立憲民主党が野党第一党である限り安倍政権は安泰
フーテン老人世直し録(480)
極月某日
12月9日に閉幕した第二百臨時国会は実にひどい国会だった。10月4日に召集された時の安倍総理の所信表明演説も何を言いたいのか疑問だらけだったが(10月6日ブログ『任期2年を切った安倍総理の所信表明演説は「?」の連続だった』)、最後の終わり方も国民の多くが抱く疑問からひたすら逃げまくって閉会した。
「長期政権の秘訣は逃げ足の速さか?」と書いた新聞もあるが、フーテンは「逃げ足」だけではないだろうと思う。「逃げ足」を許す野党の存在も問題である。野党の攻め方を見ていると本当に政権を奪い取ろうとしているのか疑問が湧く。
本当に政権を取ろうと思うならそれなりの戦略を持たなければならないが、フーテンが見る限りでは、安倍政権のおかしなところをただ攻め立て、国民に「ほらこんなにひどいでしょう」とアピールしているだけに見える。
言われた国民は「確かにひどい」とは思うが、ただそれだけでは攻め立てる側に権力を与えようとは思わない。世間の荒波を知らない純粋無垢の若者が「世間はこんなにひどい」と怒りをぶつけるのに似て、「それはその通りだ」と思っても、一方で「まだ世間を知らないんだねえ」とむしろ未熟さを感じてしまう部分がある。
フーテンは安倍政権のやっていることは本当にひどいと思っている。昔の自民党ならやらなかったことを平然とやる。安倍総理が尊敬する祖父岸信介元総理の政治とも違う。最近亡くなった中曽根康弘元総理の政治とも違う。歯の浮くようなセリフを並べ立て妙に軽々しく底が浅い。
そして「モリカケ」や「桜を見る会」に代表されるように公私の別がまるでない。それだけでなくそれを指摘されると隠蔽・捏造を平然とやる。そして隠蔽・捏造を強制された官僚が自死しても平然としている。かつての自民党政治にそれはなかったと思う。
しかしそれだけやっても安倍政権は揺るがない。安倍総理は憲政史上最長の在任期間を実現し、さらに加えて4期目を狙っている。口では「党の規則は3期目まで」と言うが、この臨時国会前に断行した閣僚人事に「総仕上げ」の片鱗はなく、また臨時国会閉幕後の記者会見で「憲法改正は自分の手で」と言った。さらに長期を狙っていることは確実だ。
なぜそれが可能かと言えば、野党に政権が渡ると思っていないからだ。野党がバラバラだと言うことではない。バラバラだって選挙協力さえうまくやれば与党を過半数割れに追い込むことは出来る。それより問題なのは立憲民主党が野党第一党であることだ。
衆議院選挙は総理を選ぶ選挙である。野党が選挙に勝てば野党第一党の党首が総理になる。つまり枝野幸男氏が総理になる。枝野幸男氏は旧民主党の幹部だった。特に国民の記憶に焼き付けられているのは東日本大震災が起きた時の官房長官だったことだ。
他の幹部と違い最もテレビに映ったのが枝野幸男氏である。連日昼夜を分かたず一人で記者会見を行った。従って枝野氏の顔を見ればあの原発事故当時の暗く混乱した日本の記憶が蘇る。
おそらく安倍総理はそうした目で枝野氏を見ている。だから時々「民主党の枝野さん」とわざと間違えたふりをして国民に枝野氏が民主党幹部だったことを思い出させる。それは同時に旧民主党が党内分裂から政権を明け渡したことを自民党議員にアピールしている。
自民党議員はつらかった野党時代に二度と戻りたくない。どんなに安倍総理に不満があっても決して楯突こうとしないのはそのためだ。民主党政権の躓きを自分たちが犯すことは死につながると考え、だから自民党内では石破氏に支持が集まらない。
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