日銀が今回のタイミングで何か動きをみせる可能性
10月30、31日に日銀の金融政策決定会合では、現状維持もしくは指値オペの水準を1.25%か1.50%に引き上げることが予想される。
仮に現状維持とした場合、長期金利が1%以内で収まっている間は良いが、米国の長期金利や原油価格の動向など次第では1%を付けてくる可能性がある。その際には1.0%の指値オペで再び10年国債を発行額相当分、日銀が買い入れるような事態が再発することも予想される。
物価高にあって、日銀がさらなる量的緩和強化のような格好ともなりかねず、これは日米の金融政策の方向性の違いを際立たせ、さらなる円安要因となろう。それによって物価が高止まりする要因ともなる。
これを未然に防ぐには、時間稼ぎとして指値オペの上限を引き上げることも必要となろう。しかし、このような工夫ばかりしても、物価や円安に対しての根本的な解決策とはならない。
31日に発表される展望レポートでは2023年度の物価見通しを再び上方修正することが予想されている。これは日銀の物価予測精度が低いというよりも、展望レポートではなく願望レポートも呼ばれるように、日銀がそうなってほしいという数値が盛り込まれているためといえる。
以前であればなるべく高くみせたかったが、いまはなるべく低い数値を見せたい。そうでなければ、緩和方向しか向いていない金融政策の修正を迫られる。
現政権からも「当面は金融政策の転換と受け止められる動きは避けるように」と釘を刺されており、日銀執行部はそれを忠実に守ろうとして、やや無理を重ねているのが現状と言える。
その無理がさすがに限界に近づきつつあるのではなかろうか。
前回の金融政策決定会合の主な意見をみても、物価の想定以上の上振れや債券市場の副作用のリスクを意識する声が出ており、出口を意識した意見も出ていた。
少なくとも3名程度は現状の緩和策の修正を意識しているといえる。これまでの講演やインタビューの内容から、田村審議委員は含まれていよう。それでは残り2名程度は誰なのか。
9月のインタビュー記事などから、このなかには植田総裁も含まれている可能性がある。むろんこれは10年後の議事録をみるまでは確認はできないが。
政府の経済対策、その後の解散総選挙の可能性などを考慮すると、官邸は日銀には当面動いてはほしくないであろうし、日銀はその意向を反映しようとするだろう。
しかし、リフレ的な考え方に大きなリスクが存在することもたしかであり、国民もそれに気が付きつつある。今回のタイミングで日銀が何か動きをみせる可能性は低いものの、ゼロではないことも確かではなかろうか。