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ゴルフ界の王者T・ウッズが沈黙を破り、PGAツアー選手を率いるディレクターに初就任。救世主になる!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 無言を貫いていたゴルフ界の王者タイガー・ウッズが、沈黙を破り、ついにアクションを起こした。

 PGAツアーのジェイ・モナハン会長が、激しく対立してきたリブゴルフを支援しているサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」との統合に合意したことを、電撃的に発表したのは、今年6月6日のことだった。

 その発表は誰にとっても「寝耳に水」で、誰もが耳を疑った。リブゴルフからミリオンダラーの移籍料をオファーされても、その誘惑を断ち切り、PGAツアーに忠誠を誓い続けてきた選手たちからは、驚きを超えて怒りの声が噴出。ゴルフ界は天地をひっくり返したような大騒ぎになった。

 選手のみならず、ゴルフ界のさまざまな関係者からも疑問や質問が次々に寄せられ、米上院が大慌てで公聴会を開くなど、騒動の余波はゴルフ界の枠を超えて米国中へ広がっている。

 そんな中、ウッズだけは、ただの一言も言葉を発せず、完全なる無言を貫いてきた。

 しかし、PGAツアーは8月1日(米国時間)に声明を出し、ウッズがPGAツアー理事会のプレーヤー・ディレクターに就任することを発表。1996年からPGAツアーで戦い始め、メジャー15勝、通算82勝を挙げてきたウッズが、選手会のリーダーに就くのは今回が初めてとなる。

 ウッズが加わるPGAツアー理事会は、6名のプレーヤー・ディレクターと5名の社外ディレクター、それにPGAオブ・アメリカを代表するディレクター1名の合計12名体制になる。

 プレーヤー・ディレクターには、すでにローリー・マキロイやパトリック・カントレーなど5名が就任しており、ウッズは6人目のプレーヤー・ディレクターとして、PGAツアーの選手会を率いていくことになる。

 声明の中でウッズは「選手を代表する立場に立つことを誇りに思う。PGAツアーにとって、今はきわめて重要な時期である」と綴り、選手はもちろんのこと、ファンやスポンサー、すべての人々にとってベストなツアーにしていく意思を示した。

 モナハン会長は「タイガーの声は必ずやPGAツアーの成功につながっていく」と記し、ウッズのプレーヤー・ディレクター就任を大いに喜んでいる様子である。

 だが、興味深いのは、その先に記されていた、こんな言葉だ。

「(PIFとの統合合意を)サプライズで発表した結果、失われてしまった信頼と自信を回復するために、必要なステップを踏んでいきたい」

 モナハン会長は、今後は重要な交渉を水面下で秘密裡に進めないこと、重要事項は必ず選手会や理事会に諮った上で決定することなども声明に記している。

 PIFとの統合合意を「独断で決めた」などと激しく批判されたモナハン会長が、「サプライズは、もうしない」という姿勢を公に打ち出した背景に、ウッズの助言があったことは容易に想像される。

 そして、この四半世紀以上の間、ただの一度もプレーヤー・ディレクターにならなかったウッズが、このタイミングで初就任することを決めたところに、PGAツアーがいかに危機的状況であるかが伺える。

 頼みの綱は、やっぱりタイガー・ウッズだ。文字通りの「救世主」になってくれることを期待したい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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