百花繚乱のWEリーグ、優秀選手27名を発表。監督、選手が選んだ初代ベストイレブンも決定!
【シーズンを通して輝いた選手たち】
WEリーグ11クラブの監督および選手による投票結果をもとに、ベストイレブンおよび、WEリーグの優秀選手27名が決定した。
6月4日に発表された初代ベストイレブンは、以下の11名。
GK
山下 杏也加 (INAC神戸レオネッサ)
DF
三宅 史織(INAC神戸レオネッサ)
清水 梨紗 (日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
南 萌華 (三菱重工浦和レッズレディース)
高橋 はな (三菱重工浦和レッズレディース)
清家 貴子(三菱重工浦和レッズレディース)
MF
成宮 唯 (INAC神戸レオネッサ)
柴田 華絵(三菱重工浦和レッズレディース)
安藤 梢(三菱重工浦和レッズレディース)
FW
菅澤 優衣香 (三菱重工浦和レッズレディース)
田中 美南 (INAC神戸レオネッサ)
優勝した神戸から4名、2位の浦和から6名、3位のベレーザから1名という結果になった。首位の神戸からは各ポジションから一人ずつが選出されている。改めて、選ばれた11名の今季の活躍ぶりを振り返りたい。
GK山下杏也加は、ベレーザから加入して1年目のシーズンだったが、持ち味を存分に発揮。GKは数字で評価されにくいポジションだが、山下のスーパーセーブで1点差をモノにした試合は多く、一人で勝ち点10ぐらい稼いでいたような印象がある。ビルドアップやコーチングでも大きな存在感を発揮。その言葉は熱く、ストレートで、“結果オーライ”の甘えを許さない。今季の活躍について、「自分のコンディションが良かったからというよりは、チームが5バックでディフェンスの数が多かったからです」と謙虚に語ったが、それを差し引いてもリーグMVPの最有力候補だろう。
センターバックの三宅史織は、山下とともに神戸の守備を統率した。今季は3バックの中央や左を守り、「ディフェンスリーダーは間違いなく三宅、と言える存在になった」と、星川敬監督(今季限りで退任)も太鼓判を押す成長ぶりが印象的だった。代表ではサイドバックも務めるなどプレーエリアが広く、対人の強さも増した26歳は代表でもレギュラー奪取が期待される。
3人と数少ないMF枠に入った成宮唯は、山下と同じく、神戸に移籍1年目で大活躍したアタッカーだ。オフザボールの動きの質を磨いて持ち前のスタミナをさらに効率的に活かせるようになり、自身も6得点。うち3試合で勝利を決定づけるゴールを決めた。ボランチやトップ下などあらゆるポジションをこなせるマルチプレーヤーとしてブレイクしており、代表でも着実に存在感を高めている。
12ゴールで得点ランク2位に入ったのが、過去4度の国内得点王経験を持つ田中美南。リーグ前半戦は怪我や不調が重なりスランプも経験したが、後期は11試合で11ゴールと、得点力が炸裂。ペナルティエリア内でボールを受けてからフィニッシュまでのパターンが多彩で、枠のぎりぎりを狙って決めるシュートも多い。アジアカップでは悔しい思いをしたが、代表でもここから再び存在感を増しそうだ。
リーグ最少失点(9)で、一度も順位を落とすことなく最後まで首位を独走した神戸から4名しか選ばれなかったのは意外だった。一方、最多6名が選ばれたのが浦和。「個の力」にポイントを置くと、その強さは光っていた。それは、先発メンバーをほぼ固定して戦い、研究され尽くした中でリーグ最多の40ゴールを決めたことからも明らかだ。
ボランチのMF栗島朱里、センターバックのDF長船加奈という中央柱の長期離脱という痛すぎる穴を埋めたのが、39歳の安藤梢だった。高強度のプレーを長く続けることができ、球際の強さや大一番での勝負強さは、プロの鑑(かがみ)。百戦錬磨の経験や知識をクラブに還元しており、チームの若い選手たちの成長の背景に、安藤の大きな影響が窺える。
安藤とともに、不動のボランチとして浦和の中盤を支えた柴田華絵の受賞も満場一致だろう。こまめにスペースを埋め続ける縁の下の力持ち的なプレーが多く、派手さはないが、危機察知能力が抜群で、ボールを持つと奪われない。攻守の大きな歯車を回すために、替えが利かない存在だろう。信頼の厚いキャプテンであり、今季は皇后杯のカップを掲げた。
得点王の菅澤優衣香は、なでしこリーグ時代と合わせると4度目の国内得点王を獲得。楠瀬直木監督が、代表エースのFW岩渕真奈(アーセナル)と双璧の高い技術として挙げていたのが、「ボールをミートする上手さ」。速いボールや高いボールなど、落下地点に足や頭でぴたりと合わせる技術は、経験と鍛錬の賜物だろう。ただ、28試合で20ゴールを挙げたシーズンもあり、「来季は今年以上にチャンスをしっかり決め切りたい」と貪欲に語っていた。
南萌華は、浦和の生え抜きで、代表でもセンターバックのレギュラー候補。1対1の強さもさることながら、今季は精度の高いロングフィードや、セットプレーからの得点も光った。世代別代表ではキャプテンを務めるなどリーダーの豊かな資質がある。欧州移籍が決まっており、今後さらなる飛躍が期待されるタレントだ。
高橋はなは、南と同じく浦和の生え抜きで、世代別代表でキャプテンを務めた経歴も重なる。浦和の先発メンバーでは最年少の22歳。FWでもプレーでき、セットプレーでターゲットとしての存在感も大きかった。今季はヘディングで3ゴール。長野戦では劇的な決勝弾を決めている。コミュニケーション能力が高く、代表にも定着しつつある。
個の強い浦和でも、清家貴子は1対1で絶対的な強さを見せていた。最大の魅力は、スピード。右サイドのMF水谷有希との連係の良さも、その特長が存分に発揮された一因だ。
「ボールが来る直前の判断やポジショニング、ワンタッチで抜け出したり、触らずにスルーして前に流したり、早いタイミングで触ってワンツーで崩すなどのアイデアを大事にしています」と本人が語るように、視野の広さやプレーの決断に至るスピードも秀逸だった。
3位のベレーザからは清水梨紗が選出。ディフェンスラインでは唯一、5年連続の国内ベストイレブン受賞。周囲をうまく使いながら相手のスペースを消し、1対1でボールを奪う。今季、右サイドから崩されることは少なかった。攻撃参加は最大の魅力で、縦の関係を組むサイドハーフの顔ぶれが変わっても、コンビネーションの最適解を即座に見出す対応力も武器。世界に通用するサイドバックとして、さらなる飛躍が期待される。
そのほか、個人的には、神戸の中盤を活性化させたMF中島依美や、4ゴール11アシストで浦和の攻撃の軸となったMF猶本光、千葉の4位躍進を支えたMF岸川奈津希などもベストイレブン候補に挙げたい。
優秀選手には、以下の27名が選出されている。神戸から7名、浦和から8名、ベレーザから4名が選ばれたほか、千葉(4位)から2名、仙台(5位)から2名、広島(6位)から2名、長野(7位)から2名という内訳となった。
GK
山下杏也加(INAC神戸レオネッサ)
DF
高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)
清家貴子(三菱重工浦和レッズレディース)
南萌華(三菱重工浦和レッズレディース)
清水梨紗(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
五嶋京香(AC長野パルセイロ・レディース)
三宅史織(INAC神戸レオネッサ)
MF
宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)
長野風花(マイナビ仙台レディース)
安藤梢(三菱重工浦和レッズレディース)
塩越柚歩(三菱重工浦和レッズレディース)
柴田華絵(三菱重工浦和レッズレディース)
猶本光(三菱重工浦和レッズレディース)
岸川奈津希(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
三浦成美(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
瀧澤千聖(AC長野パルセイロ・レディース)
伊藤美紀(INAC神戸レオネッサ)
成宮唯(INAC神戸レオネッサ)
中島依美(INAC神戸レオネッサ)
中嶋淑乃(サンフレッチェ広島レジーナ)
FW
菅澤優衣香(三菱重工浦和レッズレディース)
千葉玲海菜(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
田中美南(INAC神戸レオネッサ)
髙瀬愛実(INAC神戸レオネッサ)
上野真実(サンフレッチェ広島レジーナ)
TwitterとInstagramで行われているWEリーグのベストゴール投票では、優秀選手に名前が挙がらなかった選手たちの活躍も見られる。
個人的には、広島のFW上野真実のゴール(2:23〜)が、フィニッシュに至るまでの流れの美しさも含めて最も印象に残った。また、浮き球を左足インサイドで綺麗にミートした相模原のFW松本茉奈加のビューティフルゴール(1:31〜)と、セットプレーでは長野のDF奥津礼菜のダイナミックな一撃(1:44〜)も、目を見張る華やかさがあった。
6月7日に開催される2021-22WEリーグアウォーズで、上記ベストイレブンの中から最優秀選手賞(MVP)が選ばれる。ピッチ上で百花繚乱の輝きを見せた選手たちが壇上を彩る式典の雰囲気も楽しみたい。式典は16時から、YouTubeでライブ配信される予定だ。