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2016 ドラフト候補の群像/その4 大城卓三[NTT西日本]

楊順行スポーツライター
雑誌『ホームラン』毎年恒例のドラフト号が発売になりました

大城卓三。NTT西日本のチームメイトに聞くと、「ずば抜けているのは、だれもが認めている」という打力が売り物だ。

たとえば初めて出場した今年の都市対抗では、今季ドラフトの目玉・山岡泰輔(東京ガス)から、左中間にあわやホームランというフェンス直撃の二塁打を放っている。

アマ球界ではよく知られた大城3兄弟。二つ上の兄・昌士は西部ガスの中軸、双子の兄・建二のいるトヨタ自動車は今季、都市対抗初Vを経験した。沖縄県那覇市の出身で、いずれも東海大相模高、東海大というキャリア。3兄弟とも社会人でプレー、というのはなかなかめずらしい。とりわけ、卓三のポテンシャルは抜きん出ている。

そうそう、思い出した。建二と卓三のツインズは高校時代の10年夏、甲子園準優勝を経験している。当時四番の卓三は準々決勝で4打点、準決勝でも3安打5打点と大活躍し、興南高に敗れた決勝でも、見知った顔の島袋洋奨(現ソフトバンク)から1安打したっけ。14年の大学選手権では、東海大の四番として打率・533の首位打者で優勝に貢献するMVP、4年の春秋には4割超の打率でやはり首位打者を獲得している。社会人1年目の昨年は、戸柱恭孝(現DeNA)のかげで出場機会こそ少なかったが、公式戦では26打数11安打という結果を残した。

打撃に関しては、苦労はしなかった

大城の言葉がいい。

「1年目には確かに、レベルの高さは感じましたが、バッティングに関しては正直、そこまで苦労はしませんでした」

ポスト戸柱と期待された今季は、捕手としても成長。浜崎浩大が「戸柱とはまた違い、"ここでこの球種?"というリードをしてくれる」という配球で、都市対抗2次予選では勝った3試合をすべて無失点に封じた。8月には社会人日本代表に選ばれ、カナダでのワールド・ベースボール・チャレンジで優勝。10月に行われた伊勢・松阪大会でも、主戦捕手として優勝……と、重ねた経験の分だけ栄養を吸収している。

「昨年も、都市対抗でベンチに入り、日本選手権ではマスクをかぶるなど、いろいろな経験をさせてもらった。ただ、ガンガン声をかけていくタイプではなく、練習中のノックの声も、あるいは投手への声がけなどもまだまだ。戸柱さんのスケールを思い返し、見習っていきたい」

捕手難が叫ばれる日本のプロ野球。二塁送球がコンスタントに2秒を切り、打力のある大型捕手として、大城の存在感は際立っている。

●おおしろ・たくみ/捕手/1993年2月11日生まれ/187cm86kg/右投左打/東海大相模高〜東海大

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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