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人種差別抗議活動の余波? レッズ元名物オーナーの名を冠した大学球場の名称変更を求める請願活動始まる

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
度重なる人種差別発言で球界から追い出されたマージ・ショット元オーナー(左)(写真:ロイター/アフロ)

【大学野球部OBが始めた請願活動】

 ミネソタ州で起こった白人警察官による黒人男性暴行死事件に端を発し、今も全米各地で人種差別に対する抗議活動が繰り広げられる中、大学野球界にも人種差別問題が拡大しているようだ。

 シンシナティ大学の野球部OBの1人が、レッズの元名物オーナーにちなんで名付けられた同チームの本拠地球場『マージ・ショット・スタジム』の名称変更を求める請願活動を開始し、注目を集めている。

 この活動には同じく野球部OBで、かつて楽天にも在籍していたケビン・ユーキリス氏も支援を表明しており、6月10日時点で7000を超える署名が集まっている。

【ショット元オーナーの黒歴史】

 ショット元オーナーは、MLBでもかなり曰く付きのオーナーとして知られている。

 女性オーナーということで注目されたほか、球場内でも常に愛犬のセントバーナードを連れ回すなど、愛嬌ある振る舞いが地元レッズ・ファンから親しまれてきた存在だった。

 だがその一方で、彼女は歯に衣記せぬ人種差別的な発言を繰り返し、度々問題を引き起こしてきた。アドルフ・ヒトラーを擁護する発言をしたかと思えば、ユダヤ人、黒人、日本人などを蔑視する発言をするなど、枚挙にいとまがなかった。

 これを深刻に受け止めたMLBは、1998年に彼女に業務停止命令を下すと、翌1999年には強制的にチーム売却を命じ、球界から彼女を追い出してしまった。

 チーム売却後も、ショット元オーナーは生まれ故郷のシンシナティで過ごし、2004年3月に75歳でこの世を去った。

 この際に彼女の遺産の200万ドル(約2億2000万円)がシンシナティ大のアスレティック部門に寄付されたことを受け、2006年にキャンパス内にある球場に彼女の名前が冠させることになった。

【過去にユーキリス氏に併記打診も拒絶】

 実はユーキリス氏は、同大学野球部出身者の中でも一際輝かしいキャリアを残したことから、大学からショット元オーナーと併記で、彼の名前を冠する打診を受けていた。

 しかし彼の家族はユダヤ系であることから、ユダヤ蔑視発言を繰り返してきたショット元オーナーと併記されることを嫌がり、打診を拒否していた過去がある。

 今回の請願運動には同大学の現役投手も加わり、参加を呼びかけているのだが、それをリツイートするかたちで、ユーキリス氏は併記打診を拒否した理由を説明するとともに、運動を支援する姿勢を鮮明にしている。

 大学側はこうした活動を認識しているとの声明を発表しているが、名称変更に動くかどうかは現時点で未定だ。

 ショット元オーナーの名前が冠されてから15年が経過しようとしているのに、今になってこうした請願運動が起こったのも、やはり現在の米国社会を映し出す現象の1つといえるのかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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