amazonオートリップ(AutoRip)は、CDを介した新古市場ビジネスモデルに進化する!
米アマゾンは、2013年01月10日、CD販売にMP3の音楽をフリーでつけるAutoRipサービスをリリースした。
実際に米アマゾンのAutoRipのサイトを見て見よう。
AutoRipとは、CDを購入すると、無償でMP3の音楽データがもらえる。そして、その音楽データは自分のアマゾンアカウントを経由で自分の端末であればどこでも再生することができる。もちろんMP3データなので、ファイルを読みこめばアップルのiTunesでも再生できるので、基本的には、ハードウェアの制約を受けにくい。
脅威の一物多価時代への加速!アマゾンプラットフォームならではのビジネス
今回のニュースは、対岸の火事のような状況だと思うが(日本の音楽業界はそう安々とは新規サービスに便乗できない構造だ)、実は革命的なアマゾンならではのプラットフォームビジネスが潜んでいる。
まず、アーティストのページで、一物多価の仕組みを見てみよう…。
この価格、まず様々な価格が並ぶ…。
この価格は、
【1】アマゾンのCDの価格 AutoRip (CD+MP3)
【2】新品を販売するセラーの価格
【3】中古を販売するセラーの価格
【4】MP3のデータ販売の価格
と大きく4種類に大別することができる。
アマゾンの特徴だが、キャンペーンを適用すると、【1】のAutoRipが【2】〜【4】よりも安い場合がある。
これはユーザーにとって、【1】以外の選択肢はなくなると考えてよいだろう。物流が伴うので、【2】や【3】はさらに送料が求められ、2日以内に集荷である。しかし、【1】や【4】はクリックひとつでそのままダウンロードすることができる。しかもクラウドにも残っている。
これはCDの購入方法が、今までと大きく変化することを意味している。
かつてのレコード時代のようにジャケットにアートとしての意味があった時代ならまだしも、CDジャケットのプラスティック越しの印刷ビラにはアートの意味はない。しかし、所有する喜びは満たせる。
しかし、所有していたとしても、ほとんどがコンピュータやポータブルデバイスで音楽を視聴しはじめた時、CD盤は所有の証しでしかなく、物理的には、リッピングさえしてしまえば、無用の長物であったりもする。少なくともボクの場合は。
日本の法律では、リッピングした音楽は、ブックオフなどで、販売譲渡した場合は、コンピュータ上からも消去しなければならないが、そんなことをする正直者はどこにもいないだろう。
さらに、日本は「レンタルレコード」という世界でも特殊なビジネス業態が現存しており、ダウンロードミュージックを購入するよりも、CDをリッピングしたほうが価格が安いので、ダウンロードミュージックのありがたみが今ひとつしっくりきていない。
明確に音楽データだけで楽しめる人と、無理やりなマーケティングで、別バージョンを購入したり、ライブや選挙に参加できるチケット付きのCDみたいを購入するパッケージ層と大きく飯櫃に別れているのが現状だ。
リッピングに対するマインドシェアゼロを実現してしまったアマゾンモデル
このアマゾンのAutoRipは、明確にそのどちらのニーズも満たすことができるアマゾンの新ビジネスモデルだ。
Amazonならば開封していない【2】新品【3】中古品をリセールする仕組みもある(アマゾン フルフィルメント)。
いままでは、CDを購入する→リッピングする→オークション(eBayなど)で売るという展開から、
アマゾンでCDを購入する→送らないで、そのままセラー登録して開封前新古品としてamazonで販売する→CDの価格の半額くらいで売れる→クラウドデータだけが残る。
…というまったく新しい流通モデルも予期することができる。
CDからわざわざ、リッピングすることは不要となってしまったのだ。
つまり、CDをキャンペーン等で、MP3よりも安く購入し、そのCDを発送せずに、Amazonのフルフィルメントサービスで新品で販売してもらうこともいずれできるだろう。アマゾンは送る手数料を取らずに、さらに、それが売れた場合にはセラーから手数料がもらえるのだ。
一枚のCDを二度販売し、二重取りすることができるのだ。
セラーとなったCD購入者は、CDを一切見ることなく、MP3データのみをAutoRipで安く購入でき、CDが売れた分だけ価格が還元されるという新体験を経験することだろう。
これは「発送代金」とか「手数料」とかの問題ではなく、CDのパッケージそのものの価値を再定義化していることに注目したい。
まるで、CDパッケージはどこにいくこともなく、「値引きクーポン化」していくことを予期させている。
※現段階では、アマゾンのAutoRipにCDを発送せずに、セラーとして販売するという仕組みはない。
しかし、当然、近い将来、そのような発送を経由させないサービスは追記されることは、目に見えて明らかだ。
アマゾンMP3ミュージックも、もしかすると、このAutoRipのための前哨戦だったのかもしれない。
一番の問題は、米国ではじまったこのサービスに、また日本の音楽業界は難航をしめすことだろう。
ソニー・ミュージックは、iTunesに登場するまでに10年もの間、ビジネスチャンスを逃してきた。1980年代のレンタルレコードでは、自分たちの楽曲の権利よりも、ハードが売れるので寛容だったはずなのに…。
CDレコード店は、レガシーメディアにこだわる人のためのものとなり、ショウルームとしての機能はamazonやiTunse Storeでこなせるようになった。音楽産業全体が大きく揺り動かせる時期の一番の対策は、どのプラットフォームからでも購入ができるということが、最大の攻めであり、守りでもある。
すでに、シングルやアルバムという概念もなくなった。これはCDでA面もB面も無くなったのと同じ意味である。
一曲づつ購入するよりも、アルバムの方が安上がりという市場で構成されている。
かつて、米国のナイン・インチ・ネイルズは、アップルのガレージバンドのフォーマットで楽曲を配信したことがあるが、そのうち、そのようなミックス専門の販売フォーマットなどもデジタル版では可能となることだろう。
すでに音楽産業は21世紀型の新たなプラットフォームへと、過去のCDパッケージのレガシーを引きずりながらだが、進化しはじめている。
同様に、アマゾンで書籍を購入すると、kindle版がついてくるというのも同様のビジネスモデルで十分可能性があることだろう。
書籍も音楽も新たなユーザー体験が、新たなサービスをさらに新たなマーケットを形成する。
ジェフ・ベゾスの紙ナプキンに描いたビジネスモデルをさらに実現し続けている。