金正恩「処刑部隊」に年末ノルマ…息を殺す北朝鮮国民
北朝鮮の安全部と保衛部は、ゆすりたかりを繰り返すチンピラ同然の集団であり、庶民にとっては実に忌々しい存在だ。安全部は日本の警察に相当し、保衛部は公開処刑などを担当する秘密警察だが、いずれも拷問などの乱暴な手法を多用する。
彼らは社会のいたるところで監視の目を光らせており、北朝鮮の人々は、うまく折り合いをつけながら共存するしかない。
だが、毎年この時期になると多くの人々が息を殺し、安全員や保衛員をできるだけ避けるようになる。その理由について、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
北朝鮮のすべての機関は年末に総和(総括、決算)の時期を迎える。安全部や保衛部の場合、年間の摘発実績が問われるわけだが、それに向けて無理やり実績を上げようと、ちょっとしたことでもいちゃもんをつけて摘発しようとするのだ。その実績が、安定したポストの確保、昇進に影響するからに他ならない。
中国との国境に接する両江道だけあって、麻薬の売買、中国キャリアの携帯電話の所有、使用、密輸、脱北などネタには困らない。それ以外にも工場、企業所、人民班(町内会)を回り、暴行や窃盗など普段なら積極的に捜査しないようなことでも、「社会の不安を煽る」などの名目で積極的に取り締まっている。
普段は見逃されている違法行為でも、この時期なら摘発されてしまう可能性が高い。それで一般市民は安全員や保衛員とできるだけ顔を合わさないようにしているのだ。
彼らを避ける理由はもう一つある。
「違法行為を行った住民は彼ら(安全員、保衛員)が要求するワイロを渡さなければ、捕まってひどい暴行を加えられ、実際に行った違法行為より重い処罰を受ける可能性があるためだ」
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
安全員や保衛員にとっての実績は摘発だけではない。幹部に上納するワイロの額も厳しく問われるのだ。要求された額に満たない場合、人事評価で悪い点数を付けられるばかりか、思想闘争の舞台に上げられる可能性もある。
つまり、吊し上げにあうということだ。ちなみに、ノルマ達成のタイムリミットは12月上旬だという。