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【アイスホッケー】アジアリーグ創設15周年! 初代MVPの教え子は来年のNHLドラフトで指名確実!!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
初代MVPに輝き日韓両国でプレーしたライアン・クワバラ(Photo:相島の猫)

 日本、韓国、ロシアに加え、かつては中国のチームも加盟していたアイスホッケーのアジアリーグ」は、今日で創設15周年。

▼日韓リーグからスタート

 トップチームの解散や活動停止が相次いだ日本と韓国がタッグを組んで、2003年11月15日に始まったアジアリーグは、5チーム(日本4+韓国1)で第一歩を踏み出しました。

 その後、ロシアや中国(現在は撤退)からもチームが加わるなどの変遷をたどりながら、今季は元NHLプレーヤーも新たに加入。

 9月1日から8チーム(日本4、韓国3、ロシア1)が、レギュラーシーズン(各チーム34試合)の戦いに臨んでいます。

▼初代MVPはNHLドラフトで2巡目指名

 アジアリーグの歴史を振り返ると、栄えある初代MVPに輝いたのは、ライアン・クワバラ(46才・タイトル写真/日本名=桑原ライアン春男)でした。

 NHLで最多優勝回数を誇る名門のモントリオール カナディアンズから、ドラフト2巡目(1990年全体39位)指名を受けたものの、契約に至らなかったクワバラは、「長野オリンピック」への強化を目的に、日本アイスホッケー連盟が講じた日系人プレーヤーの帰化策によって日本国籍を取得。

 GKのダスティ・イモオ・48才/日本名=芋生ダスティ現ロサンゼルス キングスGKデベロップメントコーチ)や、晩年はオーストラリアでプレーをしたクリス・ユール・43才/日本名=ユール クリスらとともに、レークプラシッド大会以来、18年ぶりの冬季オリンピックに出場。

 その後も、世界選手権の日本代表で主力を担い続けました。

 さらに加えてクワバラは、アジアリーグでも、コクドを皮切りに日本製紙クレインズやHigh1(ハイワン・韓国)で、14季にわたってプレー。MVPに輝くなど、アジアのアイスホッケーにその名を残した選手です。

▼引退後はジュニアリーグのコーチに転身

 9季前に現役を退いてからは、ジュニアリーグのGMや指導者へ転じ、昨夏からは毎年数多くのNHL選手を輩出しているOHL(オンタリオ ホッケーリーグ=北米メジャージュニアリーグの一つ)のサギノー スピリットアシスタントコーチに就任。

 その経験を買われ、今月3日(現地時間)からノバスコシア州(カナダ)で行われたU17(17歳以下)の国際大会でも、チームスタッフ(ビデオコーディネーター)を担いました。

U17の国際大会でビデオコーディネーターを担ったクワバラコーチ(中央・Courtesy:@SpiritHockey)
U17の国際大会でビデオコーディネーターを担ったクワバラコーチ(中央・Courtesy:@SpiritHockey)

▼教え子をNHLへ送り出せるか!?

 現役時代より、少し(?)太目になった印象を受けるクワバラコーチが、きっと気になっているに違いないのが、来年6月にバンクーバーで開催される予定の「NHLドラフト」!

 サギノーには、現地のメディアから「ドラフト指名候補」にリストアップされた選手が複数在籍。

 なかでもFWのニコラス・ポルコ(17才/下の写真中央)は、指名が有力視される選手の一人。

2017年のOHLドラフトで全体4位指名されたポルコは来年のNHLドラフトでの指名確実(Courtesy:@SpiritHockey)
2017年のOHLドラフトで全体4位指名されたポルコは来年のNHLドラフトでの指名確実(Courtesy:@SpiritHockey)

 OHLでプレーする際にも、ドラフト1巡目(全体4位)指名という高い評価を受けたポルコは、「スピードに長けている」との評価が多く聞かれ、NHLチームのスカウトたちも関心を持っている模様。

 先月1日に発表された来季のNHLドラフト指名候補選手公式ランキングの中にも名前が見られ、上位ではなくても、NHLドラフト(31チームが7巡目まで指名)での指名が確実視される選手です。

▼ジュニアのマイナーリーグから始まるサクセスストーリー

 NHLのドラフト指名選手を生み出すのは、コーチにとって大きな評価につながります。

 なぜなら、好選手を輩出したことによって指導力も評価され、アシスタントコーチから、他チームも含めたヘッドコーチ(HC)に抜擢されたり、ジュニアのマイナーリーグから、OHLのようなトッププレーヤーが揃うメジャージュニアリーグへ。

 さらには、NHLを筆頭にする北米プロリーグのコーチへと、ステップアップしていく事例も多く、今後のクワバラに期待が集まります!

▼かつてのラインメートはNHLのスカウトに

 一方、クワバラとともに長野オリンピックや世界選手権の日本代表に選ばれ、所属していたチーム(コクド)も含め、多くの試合で同じライン(=アイスホッケーの試合ではFWが3人集まるラインを構成する)でプレーをしていた八幡真(やはた しん/スウェーデン名=シン・ラーション・ヤハタ)は、30歳の若さで現役引退。

 しかし、スウェーデンで生まれ育った縁もあり、北欧の投資家グループが設立し、北京をホームタウンとしたアジアリーグの新チームのGMに就任。

 チームは資金難により1季限りで解散しましたが、その後、八幡はサンノゼ シャークスのヨーロッパ担当スカウトに就任(現在はスーパーバイザー)。

 中心選手として活躍しているトーマス・ハトル(FW・25才)を、ドラフト1巡目(2012年全体17番目)で指名するなどして、チームを支えています。(下の動画で指名されたハトルの左側が八幡)

 日本代表やコクドで息の合ったプレーを見せていたクワバラと八幡。

 

 引退後に歩んだ道は異なるものの、アジアリーグの創設15周年に際し、これからもサクセスストーリーを描き続けられるよう、願わずにはいられません。

(本文中の選手名はプレー期間の長かった日本リーグでの登録名で紹介しています)

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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