平昌オリンピックまで1ヶ月 長野オリンピックのときは間に合った降雪
最初からある雪不足の懸念
韓国・平昌で開催される冬季オリンピック(平成30年(2018年)2月9日から2月25日まで開催予定)まで、あと1ヶ月となりました。
低緯度で冬季大会を開催する場合は、いつも雪不足の懸念がありますが、平昌はもともと雪の少ない地域です。ただ、気温が低いことで降った雪が融けず、積雪が長期間続くことから、ドラマ「冬のソナタ」で名所となったドラゴンバレーなど韓国でも有数のスキー場が集まっています。
平昌がオリンピック誘致のとき、国際オリンピック委員会の視察団が平昌を訪れた平成23年(2011年)2月16日は、直前に記録的な大雪が降っています(図1)。
長野オリンピックのときも同じ懸念がありましたが、同じ低緯度でも、日本海をわたる冬の季節風は、相対的に暖かい対馬暖流の上を通る時に海面から熱と水蒸気を補給し、日本海側に多量の雪を降らせます。
平昌は、大陸からの乾いた寒気が直接やってくるため、大雪になりにくく、大雪となると、国際オリンピック委員会の視察団が平昌を訪れる直前のように、寒気を伴った低気圧の通過です。
しかし、このようなことは希で、開催が決まってからの近年は、雪が少なすぎる年が続いています。そして、今シーズンの平昌は、平成29年(2017年)11月4日に初雪を観測し、11月26日に積雪16センチを観測しましたが、その後、大雪のニュースが入ってきませんので、関係者が安心する雪の量ではないと思います。
スノーマシンの大量動員で雪を作る計画があると報道されていますが、平昌オリンピックまでの1ヶ月間は降雪状況について、関係者の苦労がつきないと思います。
長野オリンピックのときは暖冬予想
低緯度の開催だった長野オリンピックでは、開催直前の年末年始は、暖気が入って雪が融けています。
今年とは逆に、エルニーニョ現象が発生しており、暖冬が予想されていました。
このため、雪ごいが行われるほどでした。
そして、少ない雪に備え、各種の対策が行われています。
標高が低く雪不足が心配される白馬村のクロスカントリー競技場「スノーハープ」は、11月中に、コース端の雪が緩むのを防ぐ目的で側溝に板をかぶせ、地熱を遮って雪を長持ちさせようと畳750枚、むしろ200枚を日当たりの良い場所や急斜面に敷いています。また、雪が少ない場合の「緊急搬雪」も想定し、自衛隊に協力を要請しています。これは、近くのスキー場の駐車場など村内4ヶ所から、ダンプ20台で運び込むという計画です。
フリースタイルスキー会場の長野市飯綱高原スキー場は、従来のスノーマシン1台に加え、新たにファン(送風機)タイプの強力なスノーマシンを2台購入しています。そして、スノーガン11台と併用し、12月10日から雪作りを始めました。
野沢温泉村のバイアスロン会場では、雪の量が少ない場合は、野沢温泉スキー場上部の毛無山などから雪を運び込めば対応できると考えていました。
これらの対策は杞憂に終わりました。大会の32日前の平成10年(1998年)1月6日に、まとまった雪が降ったからです(図2)。
日本海低気圧による雪でしたが、その後は、冬型の気圧配置が続き、関係者は雪不足の心配から解放されて本番を迎えました。
オリンピック本番では、雪不足はなく、むしろ、全体的には雪に悩まされ、アルペンスキーは競技日程が変更されています。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。