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ポーランド、ウズベキスタンのU-17代表が初来日。広島国際ユースサッカー大会に参加。

柴村直弥プロサッカー選手

U-17ポーランド代表、U-17ウズベキスタン代表、両チームが7日、広島へ到着した。

8月9日から広島市で行われるBalcom BMW平和記念広島国際ユースサッカー大会に参加するためである。

8日夜、広島市内のホテルで全チームが揃い、大会レセプションが行われた。
8日夜、広島市内のホテルで全チームが揃い、大会レセプションが行われた。

EURO予選で首位を走る欧州の強豪国ポーランド

ポーランド代表はFWレヴァンドフスキ(バイエルン)やGKシュチェスニー(アーセナル)などをはじめ、世界トップレベルの選手たちを擁し、現在行われているEURO予選では初戦でドイツを2-0で敗り、ドイツを抑えて現在グループDの首位を走っている。欧州の強豪国と呼ぶにふさわしい力があると言えるだろう。

サッカーが文化として根付いているポーランドでは育成年代にも優秀な選手たちが数多くいる。

U-17ポーランド代表には、レッドブル・ザルツブルク(オーストリア)所属でザルツブルクの傘下のリーフェリングで今季17歳ながら現在すでにオーストリア2部リーグでベンチ入りしているGKジネル。そして今年1月に推定移籍金4億円でレギア・ワルシャワ(ポーランド)からアーセナル(イングランド)へ完全移籍したMFビエリクなどもいる。

今回はクラブとの折り合いがつかずに両選手は来日できなかったが、卓越した技術と広い視野で攻撃の起点となるチェルシー(イングランド)所属のゲームメーカーのアダムチェク、ドルトムント(ドイツ)所属のMFオスタシャウスキらは7日からすでに広島に入っている。

育成年代の世界大会で結果を出しているアジアの強豪国ウズベキスタン

ウズベキスタン代表は、2014ブラジルW杯アジア最終予選では勝ち点で韓国と並んだが、得失点差でわずかに1足りずにプレーオフに回ることになり、最後はPK戦でヨルダンに敗退し、W杯出場を逃した。しかし、着実に力をつけてきているチームであり、若い世代の活躍も芳しい。

今年ニュージーランドで行われたU-20W杯では、ウズベキスタンは決勝トーナメント一回戦でオーストリアに2-0で勝利し、ベスト8。2013年のトルコで行われた前大会でもギリシアなどを敗り、同じくベスト8に進出している。

さらに、U-17W杯でも、2011年メキシコ大会でベスト8、2013年 大会でもベスト16と、近年世界大会で確実に結果を残して来ている。

各大会に出場した選手たち個人のその後の成長も著しい。

筆者が2012年にウズベキスタンのパフタコールに在籍していたときにセカンドチームにいた、MFジャミシッド・イスキャンダラフとFWイゴール・セルゲイも2011年U-17W杯メキシコ大会世代のU-17ウズベキスタン代表メンバーであった。

彼らは我々トップチームの練習にもしばしば参加していたが、日本と対戦した際の「タクミ ミナミノ」が印象に残っていると筆者に話してきていたのは記憶に新しい。そんな彼らは翌年の2013年からトップチームでも試合に出場するようになり、2013年9月には、前述した2014ブラジルW杯アジア最終予選のしかもプレーオフという大事な試合で、代表デビューを飾る。

そして今年1月のアジアカップではイスキャンダラフはウズベキスタン代表で10番を背負ってプレーし、セルゲイはゴールも決め、二人とも若干21歳ながら、現在ウズベキスタン代表の中心となりつつある。

フル代表含め各年代の日本代表は、近年ウズベキスタンに対して、親善試合では勝利もしているが、公式戦で勝利することはできていない。

2012.10.6 日本 1−1ウズベキスタン PK1−3 U-16アジア選手権決勝

2012.2.29 日本 0−1 ウズベキスタン 2014ブラジルW杯アジア3次予選

2011.9.6   日本 1−1 ウズベキスタン 2014ブラジルW杯アジア3次予選

U-16アジア選手権では決勝戦でPK戦の末に敗戦。

2014ブラジルW杯アジア3次予選では、アウェーで1-1の引き分け、ホームでは0-1で敗れている。

このホームで敗れた2014ブラジルW杯アジア3次予選最終戦では、ウズベキスタンは主力選手5人が出場停止であった。さらに、このとき筆者はウズベキスタンのパフタコールに在籍していて、チームメイトが6人この試合に招集されていた。しかし、パフタコールで主力選手であった、FWタジエフとGKジュラエフの2人は、我々がこの試合の1週間後にACLのグループリーグ初戦、サウジアラビアでアル・イテハドとの一戦を控えていたため、出場を辞退した。

このように、出場停止の選手たちに加え、辞退した選手たちも複数いたため、ベストメンバーで臨んだ日本に対して、ウズベキスタンは決して充実した戦力ではなかったのだが、日本は敗戦を喫してしまった。

最後に日本がウズベキスタンに勝利した試合は、6年前。2009年6月6日、南アフリカW杯アジア最終予選で1-0で勝利したときである。

それ以前は日本の勝率が高かったことからも、近年ウズベキスタンが各年代で力をつけてきていることがうかがえる。

懸念される熱中症への対策

先日、新潟で行われた国際ユース大会で、U-17セルビア代表の2選手が試合中に熱中症で倒れ、試合が中止になるという事件があった。幸い選手たちの状態は回復したようだが、この時期、炎天下で試合を行う選手たちの体調には十分な注意が必要である。

新潟の国際ユース大会は3日連続の試合で、45分ハーフ、さらに選手が倒れてしまった最終日は14:00キックオフというレギュレーションであった。

筆者自身も欧州等でプレーしながら、オフシーズンには日本に帰国してトレーニングを行っているが、暑さの違いは明らかに感じる。気温とともに湿度も高い日本では、発汗量も多く、熱中症のリスクは高まる。徐々に慣れてはくるが、大会のために来日する欧州の選手たちの体が慣れるほどの十分な時間がないため、日本の選手たち以上の対策が必要となってくるだろう。

日本の暑さに慣れていない来日する選手たちの体調が心配されるところだが、その点でもこの大会の大会本部側は以前より対策を講じている。

選手の体調を考慮して、試合のない中日を設けており、試合開始時間も、第1試合が16:00キックオフ、第2試合が18:00キックオフと、昼間の暑い時間帯は避けている上に、試合時間も40分ハーフである。

今大会は日程の都合上、最終日に13:30キックオフで行う試合が1試合あるが、その試合も事前に選手たちの体調を考慮した対策がなされている。試合時間を40分ハーフから35分ハーフに短縮し、給水タイムも当日の気温に応じて、1回もしくは2回とるようにすることを、気温などの状況次第で臨機応変に対応すると、大会側はすでに決定している。

さらに、最終日の13:30キックオフの試合は、広島県高校選抜 対 U-17ウズベキスタン代表という対戦である。

筆者自身も経験があるが、ウズベキスタンは7月8月は最高気温が50℃になることもある。湿度こそ日本ほどないが、少しでも暑さに慣れているウズベキスタンの代表チームをその時間帯の試合の対戦相手に設定している点も大会側の配慮が見てとれ、選手の体調を優先した様々な対応を見せている。

各国のスタイルの違い

今大会の試合の見所は、欧州内でも特に1対1の局面が重視され、個の強さが際立っているポーランドと、欧州とアジアの境目に位置し、アジアの中では球際の強さが突出していて、組織力にも定評のあるウズベキスタン。スタイルが異なり、力のある両国と日本代表、及び広島県高校選抜が対戦し、どのような試合展開になるか、というところである。

両国のリーグでプレーしている筆者の感覚では1対1や球際の強さという部分では日本でのそれとは明らかに違うと感じる。日本代表、広島県高校選抜の選手たちがそれを試合の中で感じて、どう対応していくかが勝敗の分かれ目となるだろう。

広島県高校選抜も幾度にも渡る選考会を重ねて、メンバーが絞られていき、最終的に選ばれた選手たちである。先月行われた最終選考も筆者は見学したが、選手たちの熱気が伝わってきた。さらには8月6日に集合して他チームよりも2日早くトレーニングを開始し、試合に向けての準備に余念がない。

各チームの意地とプライドをかけた戦いが明日、9日から始まる。

Balcom BMW 平和記念 広島国際ユースサッカー大会 2015  試合日程

8月9日

16:00 日本 対 広島

18:00 ポーランド 対 ウズベキスタン

8月11日

16:00 日本 対 ウズベキスタン

18:00 広島 対 ポーランド

8月12日

13:30 広島 対 ウズベキスタン

15:30 日本 対 ポーランド

※会場はすべて広島広域公園第一球技場

プロサッカー選手

1982年広島市生まれ。中央大学卒業。アルビレックス新潟シンガポールを経てアビスパ福岡でプレーした後、徳島ヴォルティスでは主将を務め、2011年ラトビアのFKヴェンツピルスへ移籍。同年のUEFAELでは2回戦、3回戦の全4試合にフル出場した。日本人初となるラトビアリーグ及びラトビアカップ優勝を成し遂げ、2冠を達成。翌年のUEFACL出場権を獲得した。リーグ最多優勝並びにアジアで唯一ACL全大会に出場していたウズベキスタンの名門パフタコールへ移籍し、ACLにも出場。FKブハラでも主力として2シーズンに渡り公式戦全試合に出場。ポーランドのストミールを経て当時J1のヴァンフォーレ甲府へ移籍した

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