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短距離からICBM、巡航ミサイルまで北朝鮮のミサイル発射場は全国33か所に散在

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
列車車両から発射された北朝鮮の弾道ミサイル(ウェブサイトt「今日の朝鮮」から)

 北朝鮮が先週、今週と連続でミサイルを発射している。

 貨物車両から15日に発射された新型弾道ミサイルについては平安南道の陽徳(ヤンドク)から発射されたことが確認されているが、先週11日と12日の「2時間6分飛行し、1500km先の標的に命中した」と北朝鮮が発表した長距離巡航ミサイルについては未だに発射地点が特定されていない。発射場所が探知できなければ、その分迎撃の対応が遅れることになる。

 北朝鮮はこれまで短距離、長距離、潜水艦弾道ミサイル(SLBM)を含め様々なミサイルを発射しているが、ミサイル発射地点を北朝鮮の報道を基に可能な限り特定してみた。その結果、北朝鮮は少なくとも全国33か所からミサイルを発射していたことがわかった。以下は、その発射場所である。

 ▲咸鏡北道(1か所)

 日本海に面した咸鏡北道には舞水端(ムスダン)基地がある。1998年8月、2006年7月、2009年4月と「人工衛星」と称して長距離弾道ミサイル「テポドン」が発射されている。

 発射地点の地名が太浦洞(テポドン)だったことから北朝鮮が人工衛星と称した飛行物体を米国が「テポドン」と命名していた。3度目のテポドンの時は直前に地対空ミサイルが発射されていた。

 ▲咸鏡南道(6か所)

 直轄都市の咸興(ハムン)、無水端に近い宣徳(ソンドク)を含め端川(タンチョン)、新浦(シンポ)、連浦(ヨンポ)及び咸州などが確認されている。

 咸興からは2019年8月に米国産戦術地対地ミサイル「ATACMS」に類似した新型戦術誘導ミサイルが2発、宣徳からも同型のミサイルが昨年3月に3発発射されていた。

 咸州からは一昨日(15日)、貨物列車から発射され、800km飛行し、日本の排他的経済水域(EZZ)に落下した北朝鮮版「イスカンデル」と称される新型戦術誘導兵器が2発今年3月に発射されていた。この時の飛距離は約600km。

 新浦には潜水艦弾道ミサイル(SLBM)の発射基地があり、2015年3月にSLBMの発射実験が行われていた。

 ▲江原道(5か所)

 同じく日本海に面している江原道にはかつて新潟の姉妹都市であった元山(ウォンサン)、元山の上に位置する永福(ヨンポク)、旗対嶺(キッテリョン)、文川(ムンチョン)、それに韓国現代グループの創立者・鄭周永氏の出身地でもある通川(トンチョン)の5か所に発射場がある。

 金正恩政権になって元山からは2014年から2020年の間に計9回ミサイルが発射されている。「イスカンデル」の発射実験も2019年に2度(5月と7月)行われていた。飛行距離はいずれも約420kmだった。

 通川からは2019年8月に「ATACMS」が2発、また文川からも昨年4月に巡航ミサイル(空対地ロケット)が数発発射されていた。

 ▲慈江道(2か所)

 中国と国境を接している慈江道では龍林(ヨンリム)と舞坪里(ムピョンリ)の2か所から発射されている。

 舞坪里からは2017年7月にICBM級の弾道ミサイル「火星14号」が発射されていた。

 ▲平安北道(2か所)

 北西部に位置する平安北道には「テポドン」の発射基地(西海衛星発射場)として知られている東倉里(トンチャンリ)と亀城(キソン)に発射場がある。

 東倉里では2012年4月、2012年12月、2016年2月と3度の「テポドン」発射があった。また2017年3月にはスカッド改良型中距離ミサイル「ER」が4発発射され、そのうち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下していた。

 亀城は北朝鮮にとっては重要な発射場であって2017年2月には「北極星2型」、同年5月にはグアムを標的にした中長距離弾道ミサイル「火星12」、7月にはハワイを射程に置いている「火星14」をロフテッド軌道で発射していた。「イスカンデル」も2019年に5月から7月に掛けて、計3回発射テストを繰り返していた。飛距離はいずれも約420kmと短かった。

 ▲平安南道(11か所)

 首都・平壌(ピョンヤン)が位置している中心地・平安南道は最も多く、粛川(スッチョン)、安州(アンジュ)、北倉(プッチャン)、南浦(ナンポ)、妙香山(ミョヒャンサン)、平城(ピョンソンン)、順安(スンアン)、介川(ケチョン)、順川(スンチョン)、宣川(ソンチョン)、温泉(オンチョン)と発射場は11か所もある。

 粛川からは2016年3月に中距離弾道ミサイル「ノドン」が2発発射され、半島を横断して、日本の防空識別区域(JADIZ)内に落下していた。安州からは2017年5月に潜水艦弾道ミサイル「北極星1型」を地上発射型に改良された「北極星2型」の発射実験があった。

 順安からは2017年8月、9月には「火星12」が発射され、平城からは2017年11月に米本土を標的に定めた大陸間弾道ミサイル「火星15」(高度4475km、飛距離約950km)がロフテッド方式で発射されていた。

 南浦に近い温泉からは2017年6月に地対艦巡航ミサイルが発射されていたが、今年3月にも同型の地対艦巡航ミサイルが2発発射されている。

 ▲黄海北道(2か所)

 南西部に位置する黄海北道は平山(ピョンサン)と黄州(ファンジュ)の2カ所から発射されている。

 軍事境界線から約40kmの地点にある平山からは2014年7月にスカッドミサイルが2発発射されて以来一度もないが、その代わりに黄州で2016年3月に射程約500kmのスカッドミサイル2発、7月には「ノドン」が2発発射されていた。

 ▲黄海南道(4か所)

 最後に海の軍事境界線と称される北方限界線(NLL)に面している黄海南道には長山串(チャンサンゴッ)、殷栗(ウンリュル)、開城(ケソン)及びクァイル郡に発射基地がある。 

 殷栗からは2016年8月に「ノドン」が1発発射され、約1000km飛行し、日本の排他的経済水域(秋田県男鹿西側約250km内)に落下していた。

 また、クァイル郡からは2019年8月に「イスカンデル」が2発発射されていたが、この時の飛距離は約450kmと短かったが、それでも北朝鮮は「西部作戦飛行場から発射され、首都圏と中部内陸上空を飛行し、東海(日本海)上に設定された目標物を精密打撃した」と成功したと報道し、金正恩総書記もまた「米韓合同軍事演習に警告を送る機会となる」と成果を誇っていた。

(参考資料:どこからでも発射可能! 北朝鮮ミサイル発射場の全貌

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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