藤沢周平新ドラマシリーズ「橋ものがたり」がスタート、第一弾『小さな橋で』は時代劇版『北の国から』だ。
藤沢周平没後20年を記念したオリジナル時代劇プロジェクト・藤沢周平 新ドラマシリーズ
第二弾「橋ものがたり」がBSスカパー!と時代劇専門チャンネルでスタートする。
その第一弾として、本日(9月18日)の夜6時には、BSスカパー!(BS241/プレミアムサービス579)では、先行して杉田成道が監督を務めた「小さな橋で」が、放送される。
本作は杉田成道の代表作である『北の国から』(フジテレビ系)の時代劇版とでも言うようなドラマだ。
物語は十歳の少年・広次(田中泰生)の視点から描かれる。
博打で身を崩した父・民蔵(江口洋介)が姿を消した家で広次は、母・おまき(松雪泰子)と姉・おりょう(藤野涼子)と三人で暮らしていた。家族を支えるために飲み屋で働く母親の疲弊していく姿をただ見つめるしかなかった広次。
ある日、おりょうが妻子持ちの男と駆け落ちし、失意の母は、飲み屋の常連客を家に連れ込もうとする。
9月4日に試写会で拝見させていただいたのだが、見ていて面白かったのは広次という子どもの視点から見た時代劇という構造だ。
後に時代劇専門チャンネルで放送されることが決まっているので、おそらく史実考証もしっかりとした本格的な作品なのだろう。
ただ、それを判断する教養が自分にはないので、本作(時代劇)を見ることは、異世界ファンタジーの世界を体験することとほとんどイコールだった。
現在は民放地上波のドラマで時代劇が放送されること自体が減っている。
そのため、かつてなら共有されていた“江戸時代とはこういうもの”という教養が視聴者によってバラバラだ。
筆者自身、見る前は難しい話だったらどうしようと、少し構えていた。
そんな時代劇を見るにあたっての敷居の高さが、広次という子どもから見た江戸時代の町人文化を描写することで
見やすくなっている。
舞台こそ江戸時代だが、見ていて感じたのは子どもの頃のノスタルジックな思い出だ。
どんな時代にも、子どもはいる。
文化背景や生活習慣は違うとしても、子どもをめぐる状況というのは昔も今も本質的には変わらない。
子どもの視点を入口にすることで本作は現代劇を見るような感覚でドラマに入り込めた。
同時に、そうやって、一度物語の中に入った後で描かれる、子どもの目線を通して描写される大人たちのエロスの物語――父親も母親も姉も、しょせんは弱い男であり女であるという人間のどうしようもなさにじわじわと踏み込んでいく展開は、子どもの視点で描くからこそ見ていて、悶々とさせられる。
この辺りは是非、本編を見てほしいのだが
確かにこれは時代劇版『北の国から』だったなぁと、見終わって思った。
今後も「橋ものがたり」シリーズはスカパー!で放送予定だ。
10月21日には橋爪功が主演を務める『吹く風は秋』が、10月22日には北乃きい、永山絢斗が主演を務める「小ぬか雨」が10月22日に放送される。
市井の人々の視点から江戸時代を丁寧に覗き込むことで見えてくる「どんな時代でも変わらない人間の弱さと愛おしさ」が本作にはある。
「橋ものがたり」シリーズはBSだからこそできる時代劇だ。