音制連が「二次使用料」の実態について特設ページを緊急開設。「不公平を是正し全ての権利者に公平分配を」
8月5日に『アーティスト、ミュージシャンの創作活動の源・二次使用料の分配をフェアに――音楽業界の不都合な真実とは』という記事を配信した。
これは音楽情報サイト『MUSICMAN』に掲載された、日本音楽制作者連盟(音制連)理事長・野村達矢氏の、現在の「商業用レコード二次使用料」の分配方法について強い疑念を抱き、問題提起しているインタビューを受けてのものだった。『あらゆるミュージシャンが「みなし分配」による不利益を被ることがないよう、透明性の高い分配の実現を目指す』と題したこのインタビュー記事は、権利者、業界関係者から大きな反響があったようで、「みなし分配」ルールの元になっている「P-LOG(日報)データ」を収集している「一般社団法人MPN」(以下MPN) 側もFAQを公開し、反論している。
しかしこのFAQに記載されている内容について音制連は「多くの反論は、音制連の主張を捻じ曲げたり曲解するものであり、不必要にメインアーティスト(FA)とサポートミュージシャン(NFA)の対立を煽るものであると考えています」と特設ページを設置し、MPN側の主張について反論、これまでの双方の発言内容の真偽を会議録等を基に事実関係を精査し、理路整然と記載している。
この特設ページの中で野村理事長は大きな反響があった「MUSICMAN」のインタビューについて、「私たち音制連はCPRA(日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター)を運営するひとつの団体として、この『みなし分配』について全てのメインアーティスト(FA)やサポートミュージシャン(NFA)に対する説明責任があると考えています。そして、これ以上の不透明な『みなし分配』を容認することはできないと考え、より多くの関係者、特に当事者であるサポートミュージシャン(NFA)の方々にこの問題を知っていただき、改善にむけたご理解とご協力が得られればと願い、今回インタビュー取材を受けることとしました」と説明している。
「商業用レコード二次使用料」とは?FA、NFAとは?
改めてこの問題の本質を説明すると、アーティストやミュージシャンのクリエイティブ活動の原資になっている「商業用レコード二次使用料」とは、放送局が音源を放送で使用する際に支払わなければならないとされている使用料で、その音源に実演が収録されたメインアーティスト(=フィーチャードアーティスト=FA)やサポートミュージシャン(ノンフィーチャードアーティスト=NFA)=権利者、に対して支払われる。
商業用レコード二次使用料の分配は、文化庁長官が指定する団体である「日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター(CPRA)」を通じて、FA、NFAに対して行われ、徴収額はここ数年は毎年約60億円程度となっている。その分配方法はFAとNFAで異なっている。楽曲や音源の制作に中心的な役割を果たすFAについては、その音源の放送使用実績(放送時間・放送回数・放送局格差等、実際に放送で使用された実績が考慮される)に基づき行われる一方で、音源の制作をサポートする立場として参加したNFAは一部において、20年以上にわたり「みなし分配」というルールにより行われている。
この「みなし分配」ルールが、デジタル化が進む現代社会の中で制度疲労を起こし、今問題となっている。このルールはMPNが収集している「P-LOG(日報)データ」を基にしたもので、「みなし分配」はその名前の通り、放送使用実績そのものに基づくものではなく、自己申告のレコーディング参加回数等を放送使用実績と「みなし」て分配されるというものだ。
「みなし分配」制度により、実情とは乖離した不透明なデータが採用され、二次使用料が一部の権利者により不当な受領が長年続いているという弊害が生じている
しかしこの「みなし分配」による弊害が、見過ごすことができない状況になっている。20年以上前に設定されたこの方法を、デジタル化が進み、正確なデータを収集できる時代になった今も踏襲し、その結果、分配受領額上位を特定ジャンルのサポートミュージシャンが独占し、ヒット曲に関わっているサポートミュージシャンに放送二次使用料が正当に分配されていないという事実がある。実情とは乖離した不透明なデータが採用され、一部の権利者による不当な受領が長年続いていることになる。自己申告という方法は、それを証明する第三者が存在しないため『「みなし分配」を行うためにMPNが収集したデータはどこの誰が提出したのか、またどのような内部処理を行って分配にいたるのかがほとんど明かされていません』(野村氏)という不都合な事実が存在する。
「メインアーティスト(FA)とサポートミュージシャン(NFA)の対立』の話では決してありません」(野村氏)
この“不透明”であり“不公平”な現状を改革し、本来の権利者の権利を守るべく行動を起こしたのが、野村理事長を中心とする音制連だ。
問題の全貌は野村氏の「MUSICMAN」インタビューと、音制連のサイト内の特設ページを読むとより詳細に語られているが、特設ページの中で野村氏はまず『この分配問題を語る際、私たち音制連の考えに反対する立場からは、『メインアーティスト(FA)がサポートミュージシャン(NFA)のパイを奪おうとしている』といった主張がなされることがあります。しかし、それは音制連の主張を不当に捻じ曲げる印象操作であると言うほかありません。この問題は『メインアーティスト(FA)とサポートミュージシャン(NFA)の対立』の話では決してありません』と、問題の本質を間違えて欲しくないと主張している。
双方の主張を冷静に読み、理解した上で判断し、前回の記事でも書いたが、本当はもっと二次使用料を受け取れるはずなのに、不透明な分配方法が原因で実際に実演が使われたかどうか定かではない人に多額のお金が支払われ、実際に実演が使われた権利者の金額が減っているという可能性があることを、全ての権利者は意識するべきだ。そしてもっとこの問題に関心を持つべきだ。