コロナ禍での結婚式はどうなってる?専門家に現場の状況を聞いた【#コロナとどう暮らす】
新型コロナウイルスによって、私たちの暮らしは変わりました。
もっとも変化したのが、人との距離かもしれません。
「ソーシャルディスタンス」「三密」などの言葉が生まれ、複数で集まることが極端に減ったいま、多くの人とともに「ハレ」の日を祝う結婚式も変化を余儀なくされています。
Yahoo!ニュースにも、こういった状況下で結婚の顔合わせや式をどう進めればよいのか迷う、との声が寄せられています。
コロナ禍での結婚について、ウエディング・ブライダル・結婚準備の専門家で、結婚相談サービス「ブライダルナビ」代表の中西由美さんに話を聞きました。
式と旅行は延期やキャンセル。一方で「コロナ結婚」も
まずは、3月から6月までの結婚周辺行事の動向を振り返っていただきました。
-結婚式をする人は
中西さん「自粛期間に結婚式場がほぼクローズとなったので、したくてもできない状況でした。4月、5月のお式をキャンセルや延期する連絡が相次いでありましたね。だいたい、キャンセル2割、延期8割、といった割合です」
-新婚旅行もキャンセル?
中西さん「旅行はすべてキャンセルになりましたね」
緊急事態宣言による自粛もあり、結婚を目前に控えたカップルへの影響は大きかったようです。
ただ、そんな状況でも「結婚をやめる」という選択肢はほぼなかったそうです。
-両家顔合わせもキャンセルに?
中西さん「いえ、お顔合わせはどのホテルも影響がほぼなかったと聞いています。今は“結納”ではなく“婚約式”といってプロポーズから1カ月以内に行うのが多いんですけれど、そこで両家が顔合わせするんですね。身内だけでの少人数の集まりなので、自粛が開けた後に日程をずらして行っているそうです」
-結婚(入籍)は
中西さん「入籍をやめるという方も、いらっしゃらなかったですね。プロポーズ用の指輪(ダイヤのみ購入して一般的な台座に仮止めしたもの。プロポーズ成功後に台座のデザインを選んで指輪として完成させる)の売り上げが前年より22%伸びました。自粛でなかなか会えないから、入籍して一緒に住もう、というカップルが多かったようです。逆に絆が深まった、とおっしゃる方もいらっしゃいました。“コロナ結婚”ですね」
お酌は一切なし。自粛明けに見えた「新しい結婚式」のカタチ
結婚式や結婚に関連した行事などをやらないのはもったいない、と中西さんは言います。
「コロナだからと立ち止まったり、お祝い事をあきらめるのは、もったいないと思います。今はホテルなどでも、オンラインで相談会が行われていたりします。せっかくのお祝い事ですから、あきらめる前に、ぜひ相談してほしいです」
「自粛が明けてからの結婚式を見ると、以前と同じに見えても少し違うんです」と中西さんは言います。
例えば結婚式でのマスク。新郎新婦はマスクを着用しないけれど、招待者は全員がマスクをして参列します。
披露宴では、席と席の間を離すのはもちろんのこと、お酌は一切しないそうです。
ケーキ入刀の時、これまでのような「最初の共同作業です、写真を…」という司会からの呼びかけはなく、写真撮影も誰もしません。カメラを持つ人同士の距離が近づくからです。
会場のスタッフが、参加者のカメラやスマホを預かることもしないそうです。前は「写真撮ってください」と頼んでいましたが、感染防止のための措置だそうです。
でも考えてみたら、お酌も写真も、他の選択肢がありそうです。お酌をしなくても、ご挨拶だけでも気持ちは伝えられますし、写真はプロを含めて誰かが撮影したものをもらうことができるでしょう。
一時期は派手にお金をかけて例えばゴンドラに乗って新郎新婦が登場するなど、新郎新婦を祭り上げる場になっていた時期もあったと思いますが、いまではそういった演出はかなり減りました。
コロナ以前にも、結婚式は少しずつカタチを変えてきました。そう考えると、いまの変化も前向きに捉えられるかもしれません。
「フォトウエディング」を選択し、ドレスにお金をかける人も
新型コロナウイルス流行前後で、ほかにも結婚周辺の選択に変化が見られたそうです。
婚約指輪、結婚指輪をオンラインで購入するようになった
中西さんが代表を務める「ブライダルナビ」では指輪の販売を行っていましたが、それまでメインだった対面からオンラインで購入する人も増えたとか。
売上比率を見ると、オンラインが5月は3月の3倍、6月も同程度だったそうです。
少人数で結婚式を行うカップルが増えた
ゼクシィ結婚トレンド調査2019調べ(リクルート ブライダル総研)によると、披露宴・披露パーティの招待客人数の平均は66.3人。
しかし、コロナ後は少人数で行うカップルが増えているようです。
ブライダルナビの調べでは、30人以下の結婚式を行うカップルは2019年48%、2020年74%(7月時点予定含む)と、昨年の1.5倍となっています。親戚など身近な人のみを招待する結婚式が多いそうです。
一般的な結婚式の代わりにフォトウエディングを検討するカップルが増えた
フォトウエディングとは、一般的な結婚式を挙げずに写真撮影だけを行う、新しい結婚式のスタイルです。
少人数で撮影するので、「密」を避けられることから、需要が増えたようです。
ブライダルナビではフォトウエディングを選ぶ方が2019年は全体の3%だったのが、2020年は全体の12%(7月時点予定含む)まで増えているとか。
ドレスにお金をかけるようになった
ゼクシィ結婚トレンド調査2019調べ(リクルート ブライダル総研)によると、挙式、披露宴・披露パーティ総額の平均は354.9万円でした。
フォトウエディングは10~20万円程度といわれていて、一般的な結婚式と比べると、ほとんど費用がかかりません。何百万円も安く済むわけです。
「そのぶん、ドレスのグレードを上げる方が増えています」と中西さん。ブライダルナビでは、貸衣装の価格が2019年の平均27万3500円から2020年には平均29万8000円(7月時点予定含む)となったそうです。2万5000円ほど、レンタル価格が上がっていますね。
新婚旅行先に海外を選ぶ人が減った
「来年を見据えて6月から新婚旅行の問い合わせが増えています。昨年まで多かった海外リゾートではなく、国内リゾートを検討される方が増えています」と中西さん。ブライダルナビを通して予約されたカップルのなかで、海外新婚旅行へ行った方は2019年が全体の71.5%だったのに対し、2020年は17%(7月時点予定含む)。
国内リゾートでも、人が少ない場所を探す人が多いそうです。
規模や形式ではない、大事なのは「感謝」や「祝福」
結婚式というのは、家と家とのお祝い事でもありますし、個人がお世話になった人へ感謝を込めてお披露目する場でもあります。
そして、お披露目された立場の人は、結婚するふたりを心から祝福する場所です。
コロナによって集まることすらできなくなったことで、結婚式は、できる範囲で、できることを、気持ちを込めてやるしかなくなりました。
逆に考えると、規模や形式にこだわりすぎず、結婚式に込める「感謝」や「祝福」と向き合うべきときが来た、ともいえるのではないでしょうか。まさに原点回帰です。
いつか、コロナを心配しなくていい時代が来るかもしれません。来ないかもしれません。
そんな中で、結婚や結婚式をしたいと考えている人は、その時々に応じてできることをすればいいんです。
ぜひ明るい気持ちでいていただきたいと思います。人は柔軟に変化していけるものだから。
(写真はすべてブライダルナビ提供)
※Yahoo!ニュースでは「私たちはコロナとどう暮らす」をテーマに、皆さんの声をヒントに記事を作成した特集ページを公開しています。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです。】