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だから20代夫婦はこんなにも避妊する…根深い“闇”を抱えた日本社会で、少子化加速を少しだけ止めるには

村上れ以子成婚率東日本トップの仲人士(結婚相談所運営) 元新聞記者
(提供:イメージマート)

子どもは“贅沢品”になったのか?

と問いかけるようなタイトルの記事を目にしました。

最近増えているのは“子どもは贅沢品”という声だ。背景には、子どもを一人育てるために3000万円~4000万円必要という現実、賃金が上がらず物価だけ上昇している現状などがある。

Twitterでは「今の生活で子ども作るとか無理ゲー」「もはや産んだら子どもが不びんなレベル」「政府は本腰入れて少子化対策やれよ!」との声が見られる。

子どもは“贅沢品”になったのか?「産めば意外とどうにかなる」は今や昔「慎重になって当然」の声も(ABEMA TIMES)

この記事を深掘りしようと思い、国立社会保障・人口問題研究所第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)を調べたところ、根深い問題があることに気づきました。

これまで筆者は、結婚する人が増えることによって少子化問題が少しは改善されるだろうと考えていて、それはその通りなのでしょうが、実際には結婚したとしても1カ月以上性交をしなかったり、避妊するカップルが思いのほか多かったのです。

もっとも性交するのは妻が20代の夫婦、もっとも避妊するのも妻が20代の夫婦

■過去1か月間で夫婦の約6割が夫婦間での性交なし

まずは、妻の年齢別にみた過去1か月以内の夫婦間の性交の有無について見ていただきましょう。

妻の年齢別にみた、過去1か月以内の夫婦間の性交の有無:第16回調査(2021年):国立社会保障・人口問題研究所HPの第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)より
妻の年齢別にみた、過去1か月以内の夫婦間の性交の有無:第16回調査(2021年):国立社会保障・人口問題研究所HPの第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)より

妻の年齢50歳未満の夫婦(総数)のうち、過去1か月間に夫婦間で性交があった割合は37.9%。

30代前半から5割を下回ります。

妻の年齢が20代の夫婦では6割を超えることを考えると、少子化対策に有効なのは、20代女性が結婚することではないか…と思えます。

■過去1か月間に夫婦間で性交があっでも、妻が20代女性である夫婦の6割以上が避妊していた

ところが、過去1か月間に夫婦間で性交があった夫婦の避妊の有無などを調査した結果を見ると、20代女性の6割以上が避妊をしていたのです。

妻の年齢別にみた、過去1か月以内の夫婦間の性交における避妊の実行状況:第16回調査(2021年):国立社会保障・人口問題研究所HPの第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)より
妻の年齢別にみた、過去1か月以内の夫婦間の性交における避妊の実行状況:第16回調査(2021年):国立社会保障・人口問題研究所HPの第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)より

避妊した夫婦は全体(総数)で58.3%。妻の年齢別だと30歳未満がもっとも高く、63.9%でした。

もっとも性交の割合が高い妻が20代の夫婦ですが、避妊率がもっとも多いのも妻が30歳未満(20代)の夫婦。彼らは子どもを授かろうとしていないのです。非常に根深い“闇”のように思えます。

ここに、少子化が加速する1つ目の原因があるのは明らかでしょう。では若いカップルはどうして避妊をするのでしょうか?

女性20代を含む若い夫婦が理想の数の子どもを持たない理由の約8割が、やっぱりお金の問題!

第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)では、夫婦が理想の数の子どもを実際には持たない理由も調査しています。

・妻の年齢別にみた、理想の数の子どもを持たない理由(予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦):国立社会保障・人口問題研究所HPの第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)より
・妻の年齢別にみた、理想の数の子どもを持たない理由(予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦):国立社会保障・人口問題研究所HPの第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)より

いくつかの選択肢の中で、もっとも選ばれたのが「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という経済的理由でした。

特に、妻の年齢35歳未満の夫婦は77.8%。約8割の理由が「お金」だったのです。

じゃあ、女性が35歳を過ぎてから出産すればいいと思うかもしれませんね。

ところが、35歳以上の出産は、女性にとってリスクが高まるというのです。

35歳以上の初産は「高齢出産」と言われ、それ以前の年齢での出産よりも妊娠中・出産時のリスクが高くなることが知られています。

(中略)

高齢出産の妊婦が注意したい妊娠中の合併症の筆頭は、妊娠高血圧症候群です。

(中略)

ほかにも妊娠糖尿病、貧血などがあげられます。なかでも妊娠糖尿病は、高齢出産のほうがなりやすいと言われているので、注意が必要。発症すると、妊娠高血圧症候群などのほかの合併症も引き起こしやすくなります。

(中略)

妊娠中はホルモンの影響などもあり、トラブルが起きやすい状態。さらに高齢であることが、そうした症状を起こすリスクを高めます。

産婦人科医が教える、35歳以上の出産における「最大のリスク」とは(PRESIDENT WOMAN)

リスクがより少ない状況で出産できる年齢の女性が、お金のために理想の数の子どもを持たない選択をしているという悪循環。

わたしが運営する結婚相談所に婚活の相談にいらっしゃる女性も、最近は「子どもはお相手と相談して決めたい」とおっしゃるかたが多いです。本心では子どもを望んでいても、お相手がどのようなかたかわからない状況で「欲しい」と言えないような風潮があるように感じます。

残念なことに、これが日本社会の現状です。

若年層の収入がいかに少ないか、平均所得を確認しておきましょう。

国税庁によると1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は467万円でした。

年齢階層別の平均給与は男子では年齢が高くなるに従い(50~54歳まで)平均給与も高くなっているといいます。

年齢階層別の平均給与:国税庁HPより
年齢階層別の平均給与:国税庁HPより

一方、若年層はというと、20~24歳で282万円、25~29歳が373万円、30~34歳は450万円。

夫婦共働きで世帯年収として相当額を稼いだとしても、出産育児にお金がかかることや、出産育児のための休職などで所得が減ることを考えると、不安になるのは当然です。

若年層の所得が低すぎることで、女性が34歳以下(高齢出産前)の多くの夫婦が希望の数の子どもを持たないことを選択しているのでしょう。

35歳以降、家庭が金銭的に安定しだす頃に子どもを望むと、女性は高齢出産となり、出産リスクが高まります。

女性が高齢出産となる前に、安心して出産できるだけの経済の安定が家庭内で確保されていないことこそ大問題です。少子化が加速する最大の原因ではないでしょうか。

せめて子どもを望む夫婦が金銭的事情で避妊しなくて済めば…

少子化対策として、多くの施策がなされていますが、おおむね既に出生している子どもに対するものが多いと感じます。

ただこれからは、年齢や子どもの有無にかかわらず、誰もが願いが実現できる…例えば結婚したい人は結婚しやすく、子どもが欲しい人が希望の数の子どもを持てる社会になればいいと思います。特に経済的に。

少なくとも、子どもを望む夫婦の家計が安定し、金銭的事情で避妊しなくて良くなれば、少子化の加速を少しは止められると思うのですが…。

成婚率東日本トップの仲人士(結婚相談所運営) 元新聞記者

キャリア5年で成婚数、成婚率とも東日本1位仲人士に。17年間のスポーツ担当記者時代に取材した国内外トップスポーツ選手・コーチの必勝ノウハウを婚活にいかし、難しいといわれる30代・40代・50代の中高年と親の婚活で、通常の8倍の割合で会員を成婚に導く。慶應義塾大法学部政治学科卒業。既婚、二児の母で、趣味は子どものスポーツ応援。

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