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【大田区】多摩川探訪/大師橋 渡しの時代が終わり、昭和の開通・平成の架け替え 高速は今春リニューアル

krayskyライター/東京神奈川行ったり来たり(横浜市)

冒頭の写真は、井戸? いえいえ、羽田神社と川崎大師をつなぐ「大師橋」です。東京と神奈川をつなぐ橋であり、多摩川スカイブリッジと六郷橋の間にあります。

Googleマップより
Googleマップより

橋のたもとには、旧大師橋の親柱が残っています。昭和14(1939)年に開通した当時の名残です。現在の橋は、平成9(1997)年に作られました。川崎側から眺めるとこのような風景。松葉型が目印です。

かつてここには「大師の渡し」と呼ばれ、現在の羽田と川崎をつなぐ渡し舟がありました。河口近くの「羽田の渡し」、上流側の「六郷の渡し」が、いずれも江戸時代からあるのに対し、「大師の渡し」は明治以降に始まったもの。

昭和14(1939)年に大師橋が架かったことで、これらの渡しの需要は縮小します。そのような中でも、大師の渡しは戦後まで一部が残りました。川崎大師参詣の客を、穴守八幡近くまで運ぶ早船は、人気があったといいます。

東京都や川崎市による大師橋への思い入れは、橋の途中に掲げられた説明版からも感じられます。多摩川スカイブリッジができたことで、大師橋よりもさらに河口側を徒歩で渡れるようになりました。

晴れた日にここを渡ると、青空と広大な多摩川から、開放感を味わえます。

大師橋の右奥に見えるのが、昭和43(1968)年に開通した高速大師橋。2023年5月に大規模通行止めを行ってリニューアルされる、首都高1号線の橋梁です。

高速大師橋の造り替えは、新しい橋をほぼ完成させたうえで、現在の橋を撤去・スライドして設置する工法でも注目されています。約300メートルに及ぶ道路を新しくし、工事完成は2025年度が予定されています。

首都高速道路株式会社 ウェブサイトより
首都高速道路株式会社 ウェブサイトより

同じく首都高のリニューアルとしては、日本橋の上空を走る高速道路の地下化も注目されますが、こちらも昭和38(1963)年に開通した道路を、60年近くの時を経て地下ルートに変更するもの。いずれも高度経済成長から半世紀を経た、大規模な造り替えとなります。

渡し舟で賑わった川崎大師の参詣、やがて大師橋が架かり交通量の増加を経て、高速道路へ。古今の往来に思いを馳せながら歩ける、東京と神奈川をつなぐ橋です。

<参考文献・ホームページ>
・『川崎市史 別編 民俗』川崎市、1991年3月
首都高速道路株式会社Webサイト 高速大師橋リニューアル

ライター/東京神奈川行ったり来たり(横浜市)

東京生まれ、東京&神奈川&アメリカ大陸育ち。出版社やメーカー勤務を経て、好奇心とともに東奔西走。好きな言葉は「一石二鳥」「三つ子の魂百まで」。文化/日本語/フィクションとノンフィクション/経済的/すこやかな生活。

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