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【獣医師解説】アニメ『プリキュア』が赤裸々に教える犬のフクちゃんの「死」と「寿命」とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(提供:イメージマート)

12月8日の朝にテレビアニメ『プリキュア』の第21作目となる『わんだふるぷりきゅあ!』第44話「たくさんの幸せ」が放送されました。ペットの寿命という“死”を描き、Xでは関連ワード「ペットの死」「寿命問題」がトレンド入りするなど、大きな反響とORICON NEWSが報じています。

筆者はがんの子を多く診察していて「ペットの死」と隣り合わせで生きています。そんな臨床獣医師である筆者が、ペットの「死」と「寿命」について解説していきます(ネタバレあり)。

テレビアニメの『わんだふるぷりきゅあ!』で高齢犬を描く素晴らしさ

犬の平均寿命は約15歳といわれていますが、登場する犬・フクちゃんは18歳(人間の年齢に換算すると80歳以上、劇中では88歳)という高齢犬です。

フクちゃんは加齢による足腰の衰えが描かれており、飼い主のお鶴さんにカートに乗せられて動物病院に通っています。

犬は年を重ねたり病気になったりすると、ずっと自分の脚で歩くのが難しい子もいます。しかし、こうした現実を理解できず、「犬なら自分の脚で歩くべきだ」とカートに乗る犬を非難する人もいますが、このような事情がある子もいるのです。

さらにフクちゃんを見ると、オムツをしており、目が白っぽいことから白内障も描かれているのでしょう。人間と同じように、犬も年を取ると介護が必要になる場合があります。

このような女児向けアニメで重くならずに、きちんと「犬の老い」を描いている点が素晴らしいと思いました。幼い頃からこのようなアニメを通じて、「犬は命ある存在」であり、「ぬいぐるみではない」と示すことは、ペットを飼う責任を理解するうえで非常に重要です。

フクちゃんが死を迎える瞬間

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いろはちゃんがフクちゃんを助けようとニコ様にお願いし、ニコ様も「いろは、あなたもわかっているはずだよ」と、「死」を受け止めるよう理解を求めたシーンが印象的でした。アニメなので、魔法で永遠の命や寿命を少し延ばすこともできますが、それはしないで「死」を描いています。

お鶴さんは、フクちゃんがそう長くないことを悟り、動物病院に連れて行きます。そして獣医師のようこ先生が、「何もできないわけではなく、フクちゃんはお鶴さんと一緒に自宅で最期を迎えることができる」と伝えます。

獣医師をしていると、「この子はもう長くなく、何もできないのか」と感じることがあります。そのときは、できるだけ飼い主が見守る中で旅立ってほしいと思っています。

飼い主の中には、ひとりで見送るのがつらいため、最後まで治療を続ける人や、一緒に見守ってほしいと希望する人もいます。そのため、飼い主と話し合いながら治療方針を決めています。

犬や猫の最期によく見られる状態

  • 起き上がれなくなる
  • 水も食事も取れなくなる
  • 排泄も自分でできなくなる(オムツが必要になる)
  • 死亡する数時間から数分前に呼吸が大きくなる

このような状態を経て、虹の橋のたもとへと旅立ちます。

お鶴さんに抱かれたフクちゃんは「眠くなった」と言いながら息を引き取ります。こうしたシーンを幼い頃から知っていると、犬や猫を飼うときに、フクちゃんの最期の場面が心に蘇るのではないでしょうか。

まとめ

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お鶴さんは、フクちゃんがこの世からいなくなっても「毎日、楽しかった」「ありがとう」と思いを馳せています。

18歳まで飼い続けることは、決して簡単なことではありません。フクちゃんは譲渡会でなかなか里親が見つからず、人に心を開かなかった犬でしたが、お鶴さんはここまで信頼関係を築くほど愛情を注ぎました。

生き物である以上、必ず「老い」がやってきます。排泄の失敗を経て、オムツが必要になることもあります。そんな愛犬のオムツ姿や、起き上がれなくなった姿さえも愛しいと思える人にこそ、犬を家族として迎えてほしいと切に願います。

アニメがこうした現実に光を当てることで、子どもの頃からペットの健康と老後について真剣に考える機会を得られます。犬の一生を尊重し、最期まで責任を持って世話をすることが大切なのです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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