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一眼レフはフルサイズがいい?(その2)

塙真一フリーフォトグラファー

さて、前回のお話しで、フルサイズセンサーはAPS-Cサイズのセンサーに比べて、画質面で有利であると言うことと、以前からフィルムの一眼レフカメラを使ってきた人にはレンズの焦点距離に対する画角(距離感)が同じで使いやすいというお話しをしました。

ここから本題。

50mmレンズが50mmの距離感であることはそんなに重要なのか

フルサイズセンサー機の場合、標準レンズと呼ばれる50mmレンズはそのままフィルムカメラと同じように50mmの標準レンズとして使えます。

これをAPS-Cサイズのカメラで撮ろうとすると、だいたい35mmレンズを使うことになります。

35mmといえば、本来は準広角レンズです。このレンズをAPS-Cサイズのカメラに装着すると、フルサイズ機の50mmレンズを付けたときと同じような画角(距離感)で撮ることができるのです。

「じゃあ、レンズの焦点距離の表示が違うことを除けば、結局同じように撮れるわけでしょ」ということになります。

もっともな見解ですね。

ですが、レンズを交換すると言うことは画角だけではなく、ボケ具合も変わってくるのです。

レンズには50mmF1.4とか35mmF2とかというF**という数値が付けられています。(F値と呼びます)

このF値の数値が小さいほど、レンズは大口径で明るいレンズと言うことになります。

レンズが明るいとそれだけボケを大きくすることができるのです。(ピントを合わせた部分の前後のボケの話です)

そしてレンズの焦点距離が長いほど、同じF値でもボケ量が大きくなると言う特性があります。

仮にフルサイズ機に50mmF1.4を付けて、一番ボケが引き立つF1.4という絞り値で撮影をしたとします。

これをAPS-C機でやろうとすると、35mmF1.4を装着してF1.4で撮ることになります。

ところが、50mmのF1.4と35mmのF1.4ではボケ量が違うんですね。50mmのほうがより大きくボケます。

ですから、フルサイズとAPS-Cでは、画角を同じすることはできても、大きくぼかすという表現においてはなかなか同じようにはいかないんですね。

ボケというのは写真表現に関わる大きな要素のひとつです。

この部分の自由度がAPS-C機よりも大きいのがフルサイズセンサー機ということになります。

(誤解されがちですが、センサーが大きいからボケが大きいのではありません。センサーが大きくなるにつれ使用するレンズの焦点距離が長くなるから結果的にボケを得やすくなるのです)

しかも、50mmF1.4のレンズというのは各社ともまあまあ手が出せる価格設定になっています。でも、35mmF1.4は非常に高価で、50mmF1.4の3〜4倍くらいの価格になってしまいます。センサーの大きさが違うだけで、ずいぶんとレンズ選びに差が出てしまうのですね。

手頃なズーム使うならボケの差は出にくい

ここまでは50mmF1.4とか35mmF1.4といったいわゆる単焦点レンズでのお話しでしたが、今度はズームレンズのお話し。ズームレンズは明るく高価なものでF2.8というのがありますが、キットレンズなどに採用される一般的な標準ズームレンズはF3.5-5.6といったF値だったりします。これくらいのF値だとフルサイズに装着しても単焦点レンズほどは大きくボケてくれません。ですので、APS-Cサイズのカメラとの差は出にくいということになります。

ですから、フルサイズセンサー機の特徴を活かすなら、最低でもF2.8のズーム。できればF1.4などの単焦点レンズを使うことをオススメします。そうしないと、APS-Cサイズのカメラからフルサイズセンサー機に買い換えても、あまり写真の仕上がりに違いが見いだせないことになってしまうかもしれません。

それどころか、フルサイズ機にズーム、APS-C機に明るい単焦点レンズという組み合わせなら、APS-C機のボケのほうが大きくなってしまうことだってあります。

だから、フルサイズ機を使うならなおのことレンズが重要になるのです。

そこまでひっくるめて、フルサイズセンサーのカメラがいいと思うなら、使ってみることをオススメします。

APS-Cサイズのカメラとはやっぱり印象の違う写真が撮れます。

表現の自由度も広がります。

ただ、レンズは何でもいいから、とにかくフルサイズと考えているなら、ちょっと冷静になったほうがいいかもしれません。

別に背景のボケなんて気にしない、というならフルサイズにこだわる必要はないかもしれません。

フルサイズとAPS-C以外にもフォーマットはいろいろある

ここまで、一般的なデジタル一眼レフカメラという話題でフルサイズセンサーとAPS-Cサイズの話をしてきました。

ですが、もう少し範囲を広げて、レンズ交換式のデジタルカメラという話になると、センサーサイズはもっと多様化します。

最近人気のミラーレスカメラでは、APS-Cやフォーサーズ、1インチのセンサーなど、フルサイズよりもずっと小型センサーが多く使われています。

逆に、いわゆる中判カメラに位置するカメラとしてペンタックスやライカ、ハッセルブラッドといったメーカーからもっと大きなセンサーを採用するカメラも発売されています。

これらのカメラにはそれぞれデジタル一眼レフカメラとは違った特徴と魅力があります。

ミラーレスカメラはセンサーが小さい分、交換レンズを含めたシステムも小型化され、デジタル一眼レフカメラにはない軽快感と機動性を持っています。センサーが小さいと言っても、単焦点レンズを付ければそこそこのボケは得られますし、画質だって十分に合格ラインに達しています。

中判カメラはセンサーがとても大きいため、画素数が多くても画素サイズが大きく、飛び抜けた高画質、高解像力を有しているものが多くあります。フルサイズ機よりもさらにセンサーが大きいため、標準レンズも80mmとかになって、ボケも大きくなります。ただし、価格もデジタル一眼レフカメラのフルサイズ機以上に高いものが多く、一般の方にはちょっと手の出しにくい製品であることも否めません。

画質にとことんこだわるなら中判デジタルに進むという選択肢がありますし、軽くて小さなミラーレスカメラを思う存分持ち歩いて撮影を楽しむという方向もあると思います。

50mmレンズが標準レンズという考え方も35mmフィルムカメラに慣れた人だけのもので、別に50mmだから標準というものではありません。

あくまでも慣れの問題です。

ただ、世の中で一番使われてきたフォーマットサイズだけに、35mmフィルム(=フルサイズ)で使用するレンズの焦点距離が基準として使われているということはありますけど。

というわけで、フルサイズセンサーを搭載するデジタル一眼レフカメラが一番いいということではないというのが私の結論です。

35mmフィルムカメラを使ってきた人にはなじみ深いセンサーサイズではありますが、それが一番いいのだということではないのだと思います。

今は小さなセンサーから大きなセンサーまでさまざまなデジタルカメラが発売されていますから、それらの中で、自分の用途、目的、必要とする画質と照らし合わせて、システム全体としてセンサーフォーマットも選ぶのがよいでしょう。

フルサイズが一番という偏った意見も、フルサイズは過去のフォーマットだという極論もどちらも間違っているような気がします。

選べる自由があるのだから、選んで使えばいい。

それが私の結論です。

さて、みなさんはどうされますか?

フルサイズに行きますか?APS-Cで行きますか?

それとももっと大きなセンサーにしますか?

より小型化されたシステムを選びますか?

楽しみながらじっくりと考えてみてください。

画像

ボケも考えながらシャッターを切る。

それもまた写真の楽しみという気がします。

フリーフォトグラファー

東京都出身。人物をメインの被写体とするフリーランスのフォトグラファー。カメラ誌に写真や記事を寄稿するほか、役者、タレント、政治家などの撮影も行う。また、海外での肖像写真撮影、街風景のスナップ、夜の街を撮る「夜スナ!」をライフワークとする。写真展の開催も多数。

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