相次ぐ「ご子息、ご令嬢のご乱行」金正恩もヘナヘナに
今年、北朝鮮国内から聞こえてきたニュースの中で、最も衝撃的だったもののひとつが「高校生3人処刑」だ。
2020年の北朝鮮を振り返る(下)
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は3日、北朝鮮の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市で韓流ドラマや映画などを視聴し、拡散させたとして摘発された高校生ら3人が、10月に公開処刑されていたと報じた。
(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為)
処刑された3人のうち、2人は韓流コンテンツやアダルトビデオを流布したとして摘発された。もうひとりは継母を殺害したとして逮捕されていたという。
RFAが北朝鮮国内の複数の消息筋からの情報として伝えたところによると、韓流コンテンツのまん延など反社会主義・非社会主義行為を取り締まる82連合指揮部は飛行場の滑走路に群衆を集めて公開裁判を実施。死刑判決が下され、銃殺刑が即刻執行されたという。
このニュースは、RFA以外に独自に確認したメディアがなく、真偽は不明だ。ただ、北朝鮮当局のこれまでの行状を考えれば、大いにあり得る話だろう。
一方、北朝鮮国内における韓流視聴を巡っては、こんな情報もある。
北朝鮮北東部の羅先(ラソン)市で10月、若者のグループがK-POPをかけて、歌い踊り大騒ぎを繰り返していたところ、反社会主義・非社会主義連合指揮部(82連合指揮部)に踏み込まれ逮捕された。
グループは羅先でも有名なトンジュ(新興富裕層)らの息子と娘たちで、コロナ前から10日に1回集まって、後輩たちを呼び集めて、飲めや歌えやの大騒ぎを続けてきたのだ。
冒頭で述べた高校生の例を踏まえれば、このグループにも厳罰が下されるのが普通だろう。だが、そうなってはいないもようだ。市の治安、行政、司法など様々な機関と太いコネを持っている親たちが、カネの力でもみ消した可能性がある。
同種の情報はほかにもある。
北朝鮮の朝鮮労働党法務部は今年4月4日、「反動思想文化排撃法違反少年に対する意見対策案」という提議書を中央に提出。金正恩総書記による1号批准を受けた上で、8日から全国の司法機関、安全機関に対し、韓流コンテンツなどを隠れて視聴していた少年らに対する処罰を緩和するよう指示を下した。
平壌のデイリーNK内部情報筋によれば、この指示に従い、集団で南朝鮮(韓国)のミュージックビデオを回し見して船橋(ソンギョ)、楽浪(ランラン)区域安全部(警察署)に逮捕された13歳の少女をはじめとする中学生10人が、予審科による勾留を解かれて釈放されたという。
これだけを聞けば、韓流の視聴などで摘発されたあらゆる若者に対し、処罰が緩和されたものと思えるだろう。だが、そうではなかった。
デイリーNKジャパン編集部が韓国情報機関の元高位関係者から得た情報によれば、平壌の船橋・楽浪区域安全部に逮捕された少年少女はいずれも、金正恩の「最側近クラス」である朝鮮労働党と朝鮮人民軍幹部の孫たちだったという。
さすがの金正恩氏も複数の側近たちからの助命嘆願にへなへなとなり、釈放を命じずにいられなかったのだろう。
いずれにせよ、当局の非人道的な取り締まりにもかかわらず、今年も韓流は北朝鮮国内で猛威を振るった。来年もこの傾向は変わらないだろう。ただ、当局の手法がいっそう残忍になりそうなことが気がかりだ。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)