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新型コロナワクチンを接種している人は、新型コロナ感染後の後遺症が大幅に軽減

倉原優呼吸器内科医
(提供:イメージマート)

新型コロナに感染した後、ウイルスの感染性は消失したにもかかわらず、症状が長引く場合があります。新型コロナワクチンを接種していると、こうした後遺症が大きく減ることが示されています。

新型コロナ後遺症の頻度

新型コロナ後遺症のことを「罹患後症状」ともいいます。

新型コロナで入院歴のある患者さん約1,000例の追跡調査によると、代表的な後遺症の経時的変化は以下のようになっています(図1)(1)。

図1. 新型コロナ後遺症の頻度(参考資料1より引用)
図1. 新型コロナ後遺症の頻度(参考資料1より引用)

接種回数が多いと後遺症が減りやすい

事前に新型コロナワクチンを接種していると、新型コロナ感染後の後遺症が大きく減ることが複数の研究から示されています。

アメリカの研究では、2回接種によって後遺症リスクが28%減ることが示されています(2)。なお、この研究では、1回接種だけでは効果が示されていません。

イスラエルからの研究でも、2回接種済みの感染者は、未接種の感染者と比べて、後遺症の各種症状が有意に減少したことが示されています(図2)(3)。

図2. コロナ後遺症の頻度(イスラエルの研究)(参考資料3より引用)
図2. コロナ後遺症の頻度(イスラエルの研究)(参考資料3より引用)

また、ワクチン接種回数が増えるごとに後遺症のリスクが減っていくというデータも示されています(1回接種で14%減、2回接種で75%減、3回接種で84%減)(ただし1回接種は統計学的有意差なし)(4)(図3)。つまり、現在推奨されている回数までは、接種しておいたほうがよいということが言えます。

図3. 接種回数ごとの後遺症リスク(参考資料4をもとに筆者作成)
図3. 接種回数ごとの後遺症リスク(参考資料4をもとに筆者作成)

子どもの重篤な合併症も接種でリスク減

基礎疾患がなくても、子どもでは、新型コロナ感染後に多系統炎症性症候群(MIS-C)という病気を起こすことがあります。

心臓など多臓器に影響がおよぶ重篤な病態で、新型コロナ罹患後、数週間以上を経て発症します。

12~18歳のデータですが、ワクチン未接種の子どもと比べて、ワクチン接種済の子どもはMIS-Cのリスクが91%減ることが示されています(5)。

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)も、子どもに対するワクチン接種を積極的に呼びかけています(6)(図4)。

図4.12~18歳における新型コロナワクチンとMIS-Cについて(参考資料6より引用)
図4.12~18歳における新型コロナワクチンとMIS-Cについて(参考資料6より引用)

現在、6か月以上の子どもにワクチン接種が推奨されています(7,8)。まだ判断能力が十分ではない場合、保護者がワクチン接種の意義について検討し、納得した上で接種することが大切です。

後遺症発症後もワクチン接種によって症状が改善?

新型コロナ後遺症に悩んでいる人に対して、新型コロナワクチンを接種することで、悩まされている症状が一部改善するのではないかという報告もあります(9)。

これは、体内にウイルスの断片が残存しているからではないかと考えられています。

まとめ

新たな感染や重症化を予防するためだけでなく、新型コロナの後遺症や合併症で苦しむリスクを減らすために、新型コロナワクチンを接種しておくという考え方も重要です。

「ワクチン後遺症があるから接種すべきでない」という言説がSNSなどで流れていますが、ワクチンを接種したほうが総合的なメリットが大きいことが示されています。データをもとに、丁寧な議論を積み重ねていくことが大事です。

(参考)

(1) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000952747.pdf

(2) Perlis RH, et al. JAMA Netw Open. 2022; 5(10): e2238804.

(3) Kuodi P, et al. npj Vaccines. 2022; 7: 101.

(4) Azzolini E, et al. JAMA. 2022; 328(7): 676-678.

(5) Levy M, et al. JAMA. 2022; 327(3): 281-283.

(6) Effectiveness of BNT162b2 (Pfizer-BioNTech) mRNA Vaccination Against Multisystem Inflammatory Syndrome in Children Among Persons Aged 12–18 Years — United States, July–December 2021(URL:https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7102e1.htm

(7) 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会. 生後6か月以上5歳未満の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(URL:http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=466

(8) 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会. 5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(URL:http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=451

(9) 新型コロナ後遺症の人にワクチンを接種すると、後遺症の回復が早まる? 最新の研究(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20220522-00297045

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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