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STAP細胞論文不正ねつ造疑惑5つの可能性:小保方晴子氏は何をしたのか

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

小保方晴子氏反論記者会見。小保方さんの発言は、一般向けにはほぼ完璧なコメント。科学者たちにはほぼ無意味なコメント(もしくは疑惑を深めるコメント)だったかと思います。

小保方晴子さんはいったい何をしたのでしょうか。今回の騒動の結末はどうなるのか。論文は真実か。STAP細胞は、本当にあるのでしょうか。その5つの可能性を探ります。

■1ケアレスミス

小保方晴子さん自身が述べているように、未熟な研究者の不注意のために、うっかり間違った画像を使ってしまった可能性があります。理化学研究所の調査委員会によれば、これほど大事なデータを間違える訳がない、だから故意にデータを差し替えたと結論しています。

さて、小保方晴子さんのように頭の良い人が、こんな大事なデータを間違えることなどあり得ないでしょうか。しかし、人は間違えるものです。とても優秀なはずの外科医が、患者の体内にメスを置き忘れたりします。

飛行機の機長のような優秀な人によるケアレスミスで、多くの人命が失われることがあります。人は間違いを犯すものなのです。それをヒューマンエラーと言います。ヒューマンエラーの考え方は、人は間違いを犯すという前提に立っています。人は、考えられないようなミスを犯してしまうものなのです。

すいません、私も白状します。若いころ、学会の口頭発表で、提出する図形を間違えたことがあります。いくつかの発表会などで、いくつかの実験の図表を作成し発表する中で、間違いが起きてしまいました。

ただし、この間違いは私に有利に働くような間違いではありません。そして誰が見てもすぐに分かる間違いでしたから、私もその場で、訂正と謝罪をして、それで終わりです。

もしもこれが、投稿論文なら私もさらに確認していたでしょうし、そのまま間違えて投稿していたら査読者(論文の審査をする研究者)が指摘していたでしょう。また共著者がいれば、指摘され投稿前に修正できたでしょう。

もしも今回のSTAP細胞論文問題が、ケアレスミスであるなら、研究の本質的な内容に問題はないことになりますが、どうだったのでしょうか。

世界的な研究者が共著者にいて、「ネイチャー」に投稿した小保方晴子さんの場合は、どうだったのでしょうか。

■2データ改ざん

これは、小保方晴子さん自身が認めています。画像の切り貼りをしたと認めています。つまり、故意にデータを変化させてしまった訳です。ただし、小保方さんは悪意はなかった、ただこのような形でデータを変形させることが悪いことだとは知らなかった、そして研究の本質部分に関わるものではないと述べています。

科学論文の場合、知らなくて悪意がなければ許される訳ではありません。データを勝手に、読者である研究者達や論文審査をする査読者らに秘密でいじってしまうことは、とても大きなルール違反で許されません。

たしかに研究者も誘惑される部分ではあります。このデータが、もう少しこうだったら良いのにと思うことは、どの研究者もあることでしょう。もちろん、研究者はデータ改ざんの誘惑に打ち勝たなくてはなりません。

メンデルの法則で有名なメンデルのデータは、きれいすぎると言われています。ある科学史家は、メンデルの弟子が先生への信頼と尊敬のあまりきれいに整えてしまったのではないかと述べています。

現代における、悪質なデータ改ざん、論文不正もたびたび起きています。製薬会社が絡んだデータ改ざん事件もありました。

ネット上では、こんな記事もありました

じつは今、教授から不正を強要されているんです……」。

それは、若手研究者が集まるある会合でのこと。博士研究員のひとりが打ち明けた話の内容は驚くべきものだった。

彼が加わっていた研究プロジェクトは暗礁に乗り上げようとしていた。予想を裏切り、思ったような実験結果が出てこないのだ。そこで上司である教授はこう指示したという。『君、データを少しいじってくれないか』。

出典:“高学歴ワーキングプア”が急増中! 「官製資格ビジネス」に乗せられた博士たちの悲痛:ダイヤモンドオンライン2010.1.15

データ改ざんは許されないことですが、もしも小保方さんが主張している通り、データはいじっているとしても本質的な部分の改ざんではないとすれば、論文としては大問題でも、STAP細胞は存在することになります。

■3小保方さん本人の誤解

本当はSTAP現象は起きていないのに、別の現象を見て、小保方さんが誤解した、他の共同研究者らも誤解した可能性もあるでしょう。光より速い物質ニュートリノが発見されたとか、常温での核融合が成功したというニュースは、世界的に大きく報道されました。

ニュートリノが光より速いという実験結果は、2011年に発表されましたが、翌年測定の誤りだと判明し、この研究は撤回されました。

常温核融合は、1989年に発表されました。これが実用化されたら世界のエネルギー問題が解決する大発見です。しかし、他の研究者らによる追試(再現実験)は失敗します。

とうとうアメリカエネルギー省が、その年に「常温核融合現象がおきたという根拠はない」と発表します。「証拠がない」というのはまどろこっしい言い方ですが、普通の言葉で言えばその現象は「ない」ということなのですが、科学はそう簡単に断言しないということです。

その後も様々な議論が行われ、2004年にはアメリカエネルギー省による常温核融合の再評価が行われました。ただその結論も以前と同じ「現象がおきたという根拠はない」でした。

理化学研究所はこれから1年かけて、STAP現象があるのかどうか検証します。結論はどうなるのでしょうか。1年で結論が出るのか、さらに年月がかかるのでしょうか。

■4小保方晴子さんは陰謀の犠牲者

何者かの大きな力が働いて、小保方さんがわなにはめられた可能性、ということを言う人もいますね。

■5論文捏造

今回のSTAP論文の本質的な部分が、捏造(ねつぞう)されたもので、実際には最初からSTAP現象は起きていなかった可能性もあります。

論文捏造問題は、これまでも起きてきました。優秀で善良な人が大規模な捏造を行ってしまったこともあります。いずれはばれるような捏造をした動機がいまだに分からないものもあります。

論文捏造:超伝導論文捏造とSTAP細胞論文疑惑から考える科学と私たちが抱える根本的問題(世界で最も有名な論文ねつ造事件と小保方晴子氏STAP論文細胞疑惑との比較)

小保方晴子氏への社会的評価、共著者と理化学研究所への社会的評価、そしてSTAP細胞への科学的評価は、どうなっていくのでしょうか。

私たちは不正を正し、そして科学への信頼を取り戻していかなくてはなりません。

(この記事は、「小保方晴子氏反論記者会見:論文捏造の真偽は?天才かペテン師か?」の中で記述した5つの可能性の部分を加筆修正しました)

補足(2014.4.17)→

STAP論文共著者・副センター長笹井芳樹氏会見「STAP現象は合理的で有力な仮説」

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科学とは何か、科学者とは何か:小保方氏STAP細胞問題を理解するために。現代人の教養としても。:Yahoo!ニュース個人「心理学であなたをアシスト

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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