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立ち食いそば好きのテイストがたまらない:9月18日高田馬場駅前に「立ち喰いそばうどん松石」が開店

坂崎仁紀大衆そば研究家・出版執筆編集人・コラムニスト
「かき揚げ玉子そば」(筆者撮影)

店舗は東西線改札からすぐ

 2024年9月18日、高田馬場駅前の名店ビル地下1階に「立ち喰いそばうどん松石」が新規開店した。場所は高田馬場駅前広場を渡った正面の名店ビルの地下1階。東京メトロ東西線高田馬場駅改札を出て5番出口からすぐの場所。名店ビル地上の5番入口から降りてもすぐの好立地。名店街に入ればすぐ左が「キャンドゥ高田馬場駅前店」そしてすぐ右が「松石」である。営業時間は7時から21時まで、土日祝は休業となる。

高田馬場駅前広場を渡る(筆者撮影)
高田馬場駅前広場を渡る(筆者撮影)

5番出入口からすぐ(筆者撮影)
5番出入口からすぐ(筆者撮影)

東西線改札からもすぐ(筆者撮影)
東西線改札からもすぐ(筆者撮影)

名店街入口からすぐ(筆者撮影)
名店街入口からすぐ(筆者撮影)

 さっそく開業初日の午前10時頃、「立ち喰いそばうどん松石」にうかがった。入口には株式会社むらめんからの開業祝いの胡蝶蘭が置かれていた。店に入るとすぐに券売機がある。店内は白を基調とした明るい比較的広いスペースで完全立ち食いスタイルの店である。

株式会社むらめんから祝い花(筆者撮影)
株式会社むらめんから祝い花(筆者撮影)

料理のプロと立ち食いそばの達人2人でオープン

 今日が待ち遠しくてよく眠れなかったという店主の成田洋一さん(52歳)と友人でサポート役の石田さん(51歳)にオープンの経緯などをきいた。

店主の成田洋一さん(52歳)(石田さん撮影)
店主の成田洋一さん(52歳)(石田さん撮影)

 成田店主、石田さんは居酒屋などで長年調理担当をしてきた。料理の腕前は申し分ない。石田さんは週に8回は立ち食いそばを食べるという熱狂的な立ち食いそばファン。立ち食いそばについては相当のウンチクを持っているとか。大久保の「長寿庵」、飯田橋などにある「豊島」などがお気に入りの店だという。高田馬場の駅前にあって2022年7月末に閉店した「吉田屋そば店」にもよく通っていて大好きな味だったという。高田馬場界隈も立ち食いそば屋がずいぶんと少なくなっていたのだが、今回いい物件があったので一念発起して「松石」を開店したというわけである。

綺麗な店内(筆者撮影)
綺麗な店内(筆者撮影)

立ち食いそば好きならすぐに分かるテイストに

 開店するにあたり、味の方向性を2人で何度も検討した。その結果、立ち食いそば好きの自分たちが食べたいテイストにしようということになったとか。

 すなわち、そば・うどんは「株式会社むらめん」の茹で麺を調達し、そばは茹で麺の黒(粗挽き)にした。

そばうどんは「むらめん」製(筆者撮影)
そばうどんは「むらめん」製(筆者撮影)

 天ぷらは立ち食いそば屋多数に卸している「天ぷらいわた」(神奈川県横浜市戸塚区小雀町)から仕入れることにした。桜木町の「川村屋」、品川駅の「常盤軒」などにも卸している人気の味である。当初は「かき揚げ」「紅生姜天」「いか天」「ちくわ天」などを仕入れたが、落ち着いてきたら天種は増やしていくとのこと。

 つゆは鰹節、鯖節、昆布、椎茸などで出汁をとり、鹿児島産の醤油を使い、返しの濃い甘めのしっかりした味を完成させたという。

天ぷらは人気の「天ぷらいわた」製(石田さん撮影)
天ぷらは人気の「天ぷらいわた」製(石田さん撮影)

「かき揚げそば」は甘めで濃いめのつゆが合う

 注文した「かき揚げそばに生玉子入り」をさっそく食べてみた。どんぶりにかき揚げ、生玉子、ほうれん草、わかめ、そして斜め細切りしたねぎがのる。まずつゆをひとくち。つゆはアツアツで甘みのある返しの濃いしっかりした味である。そばもアツアツでつゆとの相性がよい。天ぷらはつゆの中でほぐれていき、つゆを十分吸った状態で口に運ぶと天ぷらの旨味が花開く。

 そばは粗挽きでコシもあり、この甘めのつゆとの相性がいい。途中で玉子の黄身をくずしてそばに絡めて食べる。高田馬場でこの昭和テイストのそばが誕生したことに感謝したい気持ちでいっぱいだ。

濃いめの甘めのつゆに天ぷらとそばが合う(筆者撮影)
濃いめの甘めのつゆに天ぷらとそばが合う(筆者撮影)

「天ぷらいわた」製のたぬきを使った「たぬきうどん」もうまい

 このつゆならうどんにも合うだろうということで、「たぬきうどん」を追加注文してみた。

 すぐに登場した「たぬきうどん」にのるたぬきも「天ぷらいわた」から仕入れている。たぬきは大きめで、つゆをかけてもすぐには溶けない主張するタイプ。この食感がなかなかよい。うどんは甘めのつゆにすごくよく合っている。

「たぬきうどん」もうまい(筆者撮影)
「たぬきうどん」もうまい(筆者撮影)

「肉めし」や「辛味肉そば」もおすすめ

 今回は注文しなかったが、サイドメニューの「肉めし」の肉は豚こま甘辛煮でこの醤油で作ればうまいこと間違いない。次回は是非とも注文しようと思う。他にも「辛味肉そば」「納豆そば」「月見そば」「紅生姜天そば」「いか天そば」「ちくわ天そば」などがそろう。また朝7時から9時までなら「かけそば」+「ご飯」+「納豆or玉子」の「朝得セット」500円も販売している。

メニューには朝セットも(筆者撮影)
メニューには朝セットも(筆者撮影)

サイドメニューの「肉めし」(石田さん撮影)
サイドメニューの「肉めし」(石田さん撮影)

「辛味肉そば」もうまいとか(石田さん撮影)
「辛味肉そば」もうまいとか(石田さん撮影)

 「開店してからはお客様とともに味に磨きをかけて、より愛される店に育てていきたい」と成田さんと石田さん。「松石」という名前はとても運気がいいそうだ。高田馬場に立ち食いそば屋ができたのは久しぶりのことである。是非この地で立ち食いそばの味を広げていってほしいものである。

立ち喰いそばうどん松石
住所 東京都新宿区高田馬場1-26-7 名店ビル地下1階
営業時間 月~金 7:00~21:00
定休日  土日祝

大衆そば研究家・出版執筆編集人・コラムニスト

1959年生。東京理科大学薬学部卒。中学の頃から立ち食いそばに目覚める。広告代理店時代や独立後も各地の大衆そばを実食。その誕生の歴史に興味を持ち調べるようになる。すると蕎麦製法の伝来や産業としての麺文化の発達、明治以降の対国家戦略の中で翻弄される蕎麦粉や小麦粉の動向など、大衆に寄り添う麺文化を知ることになる。現在は立ち食いそばを含む広義の大衆そばの記憶や文化を追う。また派生した麺文化についても鋭意研究中。著作「ちょっとそばでも」(廣済堂出版、2013)、「うまい!大衆そばの本」(スタンダーズ出版、2018)。「文春オンライン」連載中。心に残る大衆そばの味を記していきたい。

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