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ずらり12個並んだ茶碗蒸し?菜の花畑の名物、ナガメの卵。モアイ像とジグソーパズルの成虫も見逃さずに。

天野和利時事通信社・昆虫記者
まるで茶碗蒸しの容器のようなナガメの卵。

 菜の花の季節、お花畑の中を歩いていると、赤と黒の変な模様のカメムシを良く見かける。カメムシがいる付近を注意深く探していくと、葉や実の上に、12個きちんと並んだ極小の樽のような物を見つけることがある。

 昆虫記者の大好物が茶碗蒸しであることもあって、その目にはこの物体が、茶碗蒸し用の「蓋付き蒸し茶碗」のように見える。

 このカメムシは、菜の花に付くカメムシなので「ナガメ」と呼ばれる。そして、蒸し茶碗の正体は、ナガメ(ヒメナガメの可能性も)の卵だ。

 驚くことに、この蒸し茶碗の蓋はある時、きれいに「パカッ」と開き、茶碗の中からナガメの幼虫が出てくる。

茶碗蒸しの蓋を開けて出てきたナガメの幼虫。卵の数は12個が基本。
茶碗蒸しの蓋を開けて出てきたナガメの幼虫。卵の数は12個が基本。

ナガメの幼虫が蓋を押し開けて出てきた瞬間。
ナガメの幼虫が蓋を押し開けて出てきた瞬間。

 実は、カメムシの仲間の卵は大抵こういう造りになっていて、孵化した幼虫は自力で蓋を押し開けて外界に出てくる。その中でも、ナガメの卵の造形は特に見事だ。

 ナガメの成虫の赤と黒の模様もよく見ると面白い。お尻の方を上にして眺めると、モアイ像の顔のように見えて笑える。

 菜の花畑には、ナガメによく似ていて、ちょっと小ぶりのヒメナガメというカメムシもいる。このヒメナガメの背中の模様は、ナガメよりかなり複雑で、ジグソーパズルのようだ。

交尾中のナガメ成虫。背中の模様はモアイ像の顔のように見える。
交尾中のナガメ成虫。背中の模様はモアイ像の顔のように見える。

菜の花の上にいたヒメナガメ。背中の模様はジグソーパズルのようだ。
菜の花の上にいたヒメナガメ。背中の模様はジグソーパズルのようだ。

 菜の花畑でのモアイ像、ジグソーパズル、そして12個ずらりと並んだ茶碗蒸し探しは、カメムシ好き、茶碗蒸し好きの昆虫記者にとっては、お気に入りの春の恒例行事なのである。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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