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ハワイビーチ閉鎖の理由

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(写真:アフロ)

日本人のNo.1観光スポット、ハワイのビーチが閉鎖されています。

日曜から月曜日にかけて降った大量の雨により、下水があふれ海に流れ込んだことで、遊泳禁止措置が取られているのです。この先数日間は閉鎖のままのようで、観光客やサーファーにとって、辛抱の時となりそうです。

乾季に突然の豪雨

常夏のハワイには、青空が似合いますが、雨季も存在します。通常は11月から4月までが雨の多い時期です。つまり、今夏の大雨は、寝耳に水、季節外れの雨だったのです。

月曜日にホノルルに降った雨量は約90mm。これは8月の月間降水量の、なんと6倍に相当します。7月までは干ばつが続いていましたが、8月からは打って変わって雨が多く、平年を上回る雨量となっています。

ハワイ州全土に注意報。(Hawaii Department of Health)
ハワイ州全土に注意報。(Hawaii Department of Health)

ブラウンウォーター注意報

この大雨を受けてハワイ当局は、ある注意報を発令しました。「Brown Water Advisory(直訳・茶色い水の注意報)」です。これは大雨が降ることによって、海が茶色くなる現象のことで、ハワイでしばしば発令されます。ハワイの綺麗な青い海が茶色くなるだけで残念なことですが、この茶色の水の正体は、大雨によって処理能力を超えたために溢れ出た汚水。糞尿、動物の死骸、病原菌や農薬などが流れ出る懸念から、遊泳が禁止されています。

日本も例外ではない

海水に下水が流入することがあるというのは、非常に衝撃的な事実のように聞こえますが、実はこれ、日本でも度々起きているようです。

コストなどの理由から、日本では多くのところで「合流式下水道」という仕組みが用いられています。これは、下水と雨水が同じ管を流れているというものです。通常降った雨は、下水とともに処理施設へと運ばれますが、そのキャパシティを超えると、瞬間的に海や川などに溢れ出てしまうのです。

東京23区では8割でこの合流式がとられており、大雨が降ると、大体の河川や東京湾などに下水が流出することがあります。東京都下水道局の話によると、広範囲で雨が降った場合、数mmの弱い雨でも、下水は溢れ出ているそうです。

日本ではブラウンウォーター注意報こそありませんが、ハワイと同じような状況がしばしば起きており、その際は海水浴場が遊泳禁止になります。

もし心配ならば、大雨の降った後2日くらいは、なるべく海には近づかないのが良さそうです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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