【慰安婦判決】韓国メディアの反応 「判決は正義」「文在寅政権の”スルー”で韓日関係はより悪化」
8日の午前中、日韓両国で大きく報じられた「慰安婦判決、日本政府に賠償命令」のニュース。
「日韓関係運命の分かれ道」と言われた昨年8月以降、両国関係に関わるニュースの多くが「日本のほうが話題にする」という傾向があったが、今回は違った。
8日には韓国国内でも「歴史的寒波」といった話題があるなか、この日の午前中、「聯合ニュース」の第一報がNAVERで「もっとも読まれているニュース」のトップになるなど衝撃度の大きさを感じさせた。
保守系大手紙は「判決の理由」をクローズアップ
一連の慰安婦問題に関して、冷静な立場を取ってきた保守系の「朝鮮日報」は第一報で「裁判所『日本政府は慰安婦被害者に1億ウォンずつ支払え』…‘主権免除’は認めない』」と見出しを打った。
日本政府側が出席しなかった裁判においてソウル地方裁判所のキム・ジョンゴン裁判官が下した判決内容のうちこの点を強調して報じた。
「国家免除(主権免除)が適用されえないと見るのが相当だと判断する」
「われわれ裁判所は被告が判決権を行使できると判断する」
この文脈を最重要とみなしたのだ。出席しなかった日本政府側の「国家免除」という主張は成立し得ない、という点が判決の大きなポイントとみたのだ。ではこの「国家免除」とは何なのか。同紙はこう説明している。
「主権国家は他国の法廷で裁判を受けられないという『主権免除(国家免除)』の原則を前面に打ち出している」
いっぽう「朝鮮日報」の第一報では、「次なる展開」が示されている点が目を引いた。
「今回の判決は、今回の事件が正式に裁判にかけられて約5年めにして下されたものだ。韓国の裁判所で進行中の日本政府相手の慰安婦訴訟のうち、初めて出た判決だ。『民主社会のための弁護士会』が担当する別の慰安婦訴訟は13日に1審判決が予定されている」
「朝鮮日報」はまた、続報として慰安婦のイ・ヨンスさんの判決に対するコメントを独占で報じた。「これ以上嬉しい新年の幸福はない」と話しているという。
国内最大の通信社が「切り込む」報道「韓日関係はより悪化…」
左派メディアの「ハンギョレ新聞」は淡々と判決の事実を報じた。ただし、この「慰安婦支援運動」全体が韓国国内では左派と結びついているために、他紙とは違う大きな特徴があった。慰安婦問題の支援団体「正義連(日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)」のコメント全文を掲載したのだ。
「今回の判決は大韓民国の憲法秩序に符合することにとどまらず、国際人権法の人権尊重原則にも先立つ先駆的な判決だ。これにより国内はもちろん、全世界各国の裁判所が見習うべき人権保護の新しい地平が切り開かれたのだ」
といった内容だ。
8日の韓国での関連報道全般を眺めるなかで、最も注目すべきは国内最大の通信社「聯合ニュース」によるものだった。
午前10時すぎの第一報では淡々と判決内容などを報じたものの、約1時間半後の「第七報」で意外なほどに踏み込んだ意見を掲載した。
左右で大きく論調の変わる国内紙とは違い、どちらかというと中立的立場から報じようとする通信社が「韓国にとってマイナスになりうる」と主張を論じたのだ。
「強制徴用問題で深い溝の韓日関係、慰安婦判決で悪化の一途」
今回の判決を「被害者と多数の国民の立場からすると正義の判定」としつつも、「すでに強制徴用などで葛藤の深い韓日関係には悪影響になるほかない」とした。
その理由を具体的にこう提示している。
「(これまでの)日本の強制徴用賠償判決は、日本企業が被告だったため迂回路を探そうとする両国政府の努力はあったが、慰安婦判決は被告が日本政府であるため論議の第一歩を踏み出すことすら難しいだろうという指摘もある」
つまりは、徴用工問題に加えてさらなる問題が生じたうえに、今回は日本政府が「当事者」となった点に注目すべきだとしている。これが問題を複雑にすると見ているのだ。
「問題は(韓国)政府が今回の判決により予想される韓日関係悪化を防ぐための方法が、適切ではないということだ」(同記事)。
韓国政府の今後のスタンスはこうなるだろうと予想している。
「韓国政府は経済徴用判決の時のように司法の判決を尊重するという立場を取ると思われるが、この原則を維持しながら日本が満足する解決法を見つけるのは難しいように思える」
“冷静”というよりは、むしろ“やや日本寄り”とも感じられる論調だ。
さらに同記事は「今回の判決は米国のジョー・バイデン新政権スタート以降の米韓関係にも影響を及ぼしうる」と危機感を煽った。
「韓米日の協力を重要視するバイデン政権の立場からすると、慰安婦問題で韓日間の葛藤が限界値を超えたと判断した場合、韓日関係改善への圧力がかかる可能性がある」
8日の報道(速報)を見る限りでは、全般的に”煽り系”は決して多くはなかった。果たして今後、どう報じられていくだろうか。明日の朝刊での各紙社説の内容もお伝えする。