北朝鮮「軍人ファミリー」が溺れた“禁断のお楽しみ”
北朝鮮国内、中でも中国との国境に接する地域を中心にして、韓流コンテンツの視聴、流通、中国キャリアの携帯電話の使用、海外送金など、非社会主義・反社会主義とされる行為を取り締まっている82連合指揮部。
社会安全省(警察庁)や国家保衛省(秘密警察)などの人員からなり、縁故のない地方でしがらみにとらわれず強力な取り締まりを行っていたが、あくまでも対象は民間人だった。しかし、ついに聖域ともいえる朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の軍人に対する取り締まりも行うようになった。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、82連合指揮部は、道内の会寧に住む軍人とその家族の間で広がる反社会主義、非社会主義現象を根絶やしにする集中検閲(取り締まり)を行っている。
市内の城川洞(ソンチョンドン)に住むある軍人家族は、韓流ドラマや映画を頻繁に見ていた容疑で、連合指揮部の集中検閲を受けている。
この家族は、民間人向けの住宅地に住んでいるが、通常なら参加を強いられる人民班(町内会)の会議や動員に一切参加せず、韓流にハマっているとの噂が立っていたが、いっさい取り締まりを受けることはなかった。
これは、軍人を取り締まるのは軍の警務隊(憲兵隊)や検察所で、安全部や保衛部は、軍人の違法行為を咎めることはできても、捜査権がないという北朝鮮の法体系によるものだ。軍人の家族もその対象に含まれる。
そのため軍人は、人目を気にせずに韓流三昧、韓国のテレビを直接受信したりするなど、やりたい放題と言っても過言ではなかった。
ところが、中央党(朝鮮労働党中央委員会)が今月初め、咸鏡北道の82連合指揮部に「反社会主義、非社会主義との闘争に例外はない、徹底した検閲を行え」との指示を下したことから状況が一変した。82連合指揮部に、今まで手を出せなかった軍人とその家族を捜査する権限を与えられたのだ。
「今回の集中検閲は軍人家族の対象に行われている点で以前とは異なる。反社会主義、非社会主義グルパ(連合指揮部)が無限の権限を持ったとしても、軍の特殊性のせいで今まで検閲から除外されていた軍人家族を取り締まりのは極めて困難だったはずだ」(情報筋)
現行の法体系を変える指示だけあって、金正恩総書記の指示である可能性が考えられる。
今回の集中検閲は、軍人やその家族はもちろん、安全員(警察官)、保衛員(秘密警察)やその家族を対象に進められているだけあって、皆が緊張していると情報筋は伝えている。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
今のところ、検閲の対象になった軍人家族への処分内容は伝えられていないが、初の摘発事例の場合、見せしめで極刑に処されるのが一般的だ。
最後に残された聖域となったのは、朝鮮労働党の幹部だ。82連合指揮部がそこまで踏み込めるかは、中央の意思次第だ。