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【山口達也謹慎】あなたのお酒の量、大丈夫?

中山祐次郎外科医師・医学博士・作家
TOKIOの山口達也容疑者がお酒を飲み、強制わいせつ罪で書類送検されました(写真:アフロ)

TOKIOの山口達也(46)がお酒を飲み、強制わいせつ罪で書類送検されていたニュースが話題になっています。

これをきっかけに、あなたの飲んでいるお酒の量を確認してみませんか? いったいどれくらい飲んでいると危険なのでしょうか。なお、本記事では山口達也がアルコール依存症であるかどうかの検討はしていません。

自分のお酒の量をチェック

まずは、あなたの飲んでいるお酒の量をチェックして見ましょう。このsnappy testというサイトで、「はじめる」をクリックしてみて下さい

これは、岡山県精神科医療センターが開発した、アルコールへの依存度を調べられるプログラムです。やってみると、こんな風に結果が出てきます。私の結果をお示しします。

筆者の結果
筆者の結果

筆者はずいぶん飲み過ぎだったようです。衝撃を受けたので、ちょっと飲酒の量と回数を減らそうと思います。

どれくらいの量なら大丈夫?

では、どれくらいの量なら大丈夫なのでしょうか。アルコールに対しては個人差が大きいので、いくつかの数字を参考にしたいと思います。

まず厚生労働省が定義している「節度ある適度な飲酒」の定義(※1)では、「1日平均20g程度の飲酒」です。この60gとは酒に含まれる純アルコール量で、だいたい

・ビール→ 中ビン (または500ml) 1本

・日本酒→ 1合弱

・焼酎 (25度)→ 1合 100ml

・ウイスキーまたはブランデー→ ダブル1杯 (60ml)

に相当します。これは覚えておくといいでしょう。これ以上増えると、死亡率が上がるという結果がいくつかの研究結果で示されています(※2)。ただし、お酒を飲んでいなかった人がこの量を飲んだ方がいいという意味ではありませんし、アルコール依存症の人は完全断酒が勧められます。

どんなとき、アルコール依存症を疑う?

では、どれくらい飲んでいたらアルコール依存症を疑うのでしょうか。

その話の前に、「アル中」という言葉について解説しておきます。おそらくもっともよく聞く単語はアルコール依存症ではなく、「アル中」=「アルコール中毒」でしょう。しかし、この単語は1975 年に世界保健機関(WHO)が慢性アルコール中毒という表現を使用しない方針を決定したため、現在では医学用語としては「アルコール依存症」を使っています(※3)。

話を戻し、どれくらいの酒の量であればアルコール依存症を疑うのでしょうか。はっきり言うのは難しいのですが、一つの目安をお示しします。

アルコール依存症と酒好きの違いは、お酒を飲む量や時間をコントロールできるか、お酒を控えるべき状況で控えることができるかどうか

(「市民のためのお酒とアルコール依存症を理解するためのガイドライン」より引用)

です。

アルコール依存症に限らず、一般にどんな病気であっても日常生活に支障が出て、本人や周りの人が困る程度になった場合は何かしらの手助けが必要です。

もう一つ、参考までに医師が使う診断基準をお示しします。診断基準とは、この条件を満たせばアルコールなどの物質依存症と診断するというものです。

・過去1年間に以下の項目のうち3項目以上が同時に1ヶ月以上続いたか、または繰り返し出現した場合

1. 飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感

2. 飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難

3. 禁酒あるいは減酒したときの離脱症状

4. 耐性の証拠(酔うために飲む量が増えた、など)

5. 飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長

6. 明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒

(厚生労働省ホームページ みんなのメンタルヘルス アルコール依存症より引用、一部筆者加筆)

アルコール依存症を疑ったら?

もし自分や家族、友人などがアルコール依存症かもしれないと疑ったら、どうすればいいでしょうか。

自分で頑張ったり、家族と頑張ってお酒を減らすのも一つの策ですが、私は医者にかかることをおすすめします。専門の医師は多くのアルコール依存症患者さんをみてきており、治療のノウハウも持っています。そして、無理にお酒を辞めさせたり強引に入院させたりすることはありません。

その際には、この専門医療・相談機関リストでご自宅のある都道府県の病院を探し、電話で相談をしてみて下さい。

また、いきなり病院に連絡するのは抵抗があり、ご自分でこの記事以上に知りたいと言う方へ。

こちらの「市民のためのお酒とアルコール依存症を理解するためのガイドライン」を読むことをおすすめします。

これは、アルコール依存症の専門家が国のお金で作ったものです。専門用語が少なく、わかりやすい解説がまとまっています。

お酒は適量であれば、楽しいものですしコミュニケーションを潤滑にします。その一方で、飲みすぎると健康を害したり、周りの人に迷惑をかけるもの。ですから、お酒は適量で楽しむようにしましょう。

(参考・引用)

(※1) 厚生労働省ホームページ みんなのメンタルヘルス アルコール依存症

(※2)

Alcohol consumption and all-cause and cancer mortality among middle-aged Japanese men: seven-year follow-up of the JPHC study Cohort I. Japan Public Health Center. Am J Epidemiol. Tsugane S, Fahey MT, Sasaki S, Baba S. 1999 1;150(11):1201-7.

Meta-analysis of alcohol and all-cause mortality: a validation of NHMRC recommendations. Holman CD, English DR, Milne E, Winter MG. Med J Aust 1996 164: 141-145

(※3) 医師・専門家のみなさんへ 

アルコール依存症という用語について、世界保健機関(WHO)が作成しているICD-10では「アルコール使用<飲酒>による精神及び行動の障害(F10)」の中の「アルコール依存症(F102)」を用いています。一方、米国精神神経学会が作成した診断基準であるDSM5では、それまであった「アルコール依存症」がなくなり、「使用障害」という用語が使われています。本稿ではICD-10に沿ってアルコール依存症という用語を使用しています。

※追記 (2018年4月28日9:00)

現時点では、山口達也がアルコール依存性かどうかは確認された事実がありません。が、アルコールを大量摂取してから事件が起きたこと、また「お酒の関係で体を壊して1か月間入院していた」という記者会見での本人の話から、アルコール依存症に対する世間の注目が集まっています。そこで、本記事はアルコール依存症の啓発を目的として執筆致しました。

外科医師・医学博士・作家

外科医・作家。湘南医療大学保健医療学部臨床教授。公衆衛生学修士、医学博士。1980年生。聖光学院中・高卒後2浪を経て、鹿児島大学医学部卒。都立駒込病院で研修後、大腸外科医師として計10年勤務。2017年2月から福島県高野病院院長、総合南東北病院外科医長、2021年10月から神奈川県茅ヶ崎市の湘南東部総合病院で手術の日々を送る。資格は消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医など。モットーは「いつ死んでも後悔するように生きる」。著書は「医者の本音」、小説「泣くな研修医」シリーズなど。Yahoo!ニュース個人では計4回のMost Valuable Article賞を受賞。

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