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インバウンド活況のホテル“備品盗難”から“置き去り”へ!? スーツケースの処分に困惑する声

瀧澤信秋ホテル評論家
(筆者撮影)

訪日外国人旅行者の増加(回復)傾向が顕著で、コロナ禍前のインバウンド活況を彷彿とするような光景も散見されるようになりました。ホテルの客室稼働率も全体として高まる傾向にあるようです。

とはいえ、往事のインバウンド活況と照らし合わせてみると、訪日外国人動向をはじめホテルの予約流入、客室単価などの状況は異なる点も指摘されています。エリアによっては人気観光地として知られる都市なのに、8月のかき入れ時にもかかわらず、これまでのような単価の上昇が見られないといった宿泊事業者の声もあります。

この辺りのリサーチや分析は別に譲るとして、活況が戻りつつある中で以前とは異なるホテルスタッフの声として、ホテル備品盗難から荷物置き去りも目立つようになりました。

持ち去るから捨て去る?

ホテルの備品盗難と訪日外国人旅行者を安易に結びつけることは避けたいと思いますし、現に訪日外国人旅行者が皆無だったコロナ禍で、日本人による盗難被害も大きくクローズアップされました。

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一方で、往事のインバウンド活況下の外国人宿泊客による盗難被害については、テレビを持ち去るなどセンセーショナルなものから、リモコンの電池を抜いていくといったものまで多種多様なケースがホテルから報告されました。

そういえば、インバウンド活況時のひと頃から、客室のリモコン電池蓋がネジで閉じられているのをよく見かけるようになりましたが・・・いずれにせよ、“訪日外国人旅行者増加=特徴的な盗難被害”という図式は話題になりやすい側面があるということでしょう。

ところで、そんなホテルからの持ち去りですが、近頃では「置き去り」に悩むホテルの声が聞かれます。買い物した空き段ボールが置き去りにされて処分が大変、という声を以前上野のホテル支配人から聞いたことがありますが、「秋葉原などで大量に買い物して客室へ持ち込むんです」と言っていました。

まぁ段ボールは一見してゴミとわかりますが、京都のとあるビジネスホテルの担当者は「服から未使用の化粧品、時計まで置き去りにされます。日本人の場合は(忘れ物として)連絡が来て引き取りにあるいは配送依頼があるケースは多いですが、外国人の方からの連絡や取りに来ることはまずないですね」と話します。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

さらに以下については、訪日外国人旅行者とほぼイコールと推定される事象といえますが、置き去りの最たる物が“スーツケース”といいます。あるホテルでは月に10個ほどになることもあるといい、遺失物法の規定によりゴミと同視できるもの以外は原則3か月保管しなければならないところ、あまりに多くスーツケース専用の保管場を設けているといいます。

その取材先ホテルで実際に置き去りにされたスーツケースを見せていただきました。一部破損しているものもありますが、まだ使えそうなものもあります。円安で外国人旅行者に恩恵があることもインバウンド増加の主要因といわれますが、新しいスーツケース入手(する前提で来訪)で、これまでのものを捨て去るというのは先ずは想像に難くありません。スーツケースが壊れて買い替えたという前提も含め、不要なものはゴミとして捨てていくということなのでしょう。

他方、交通手段が多様化し格安に移動できる手段が増えたことから、新たな層の旅行者需要が生まれてきましたが、インタビューであった声として「格安航空の厳しい重量制限・荷物の個数をクリアするため少しでも荷物の数を少なくする」「そのためより大きなスーツケースにひとつにまとめることもある」という外国人旅行者もいました。

結局ホテルが身銭を切って処分することになるわけですが、1個1000円ほどかかるといいます。終局的にいえば、こうした処分費でホテルの運営コストも上がり、宿泊費へ転嫁されることになるのでしょうか。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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