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激レア"ナムコ黄金期の名作の開発資料"ズラリ 「パックマンのゲーム博物館」のすごみ

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
スカイガーデンの会場内に設置された「パックマンDJブース」(※筆者撮影。以下同)

昨年12月17日から、横浜ランドマークタワー(横浜市西区)の69階展望フロア「スカイガーデン」で「PAC‐MAN×スカイガーデン パックマンのゲーム博物館」が開催されている。

本展は、往年の名作ゲーム「パックマン」の発売元であるバンダイナムコエンターテインメント(※発売当時はナムコ)をはじめ、バンダイナムコスタジオ、バンダイナムコ研究所、ナムコミュージアムオブアートプロジェクト、ナムコ開発資料アーカイブプロジェクト、ナツゲーミュージアムの各社およびプロジェクトの協力によって実現したものだ。

会場には、80年代に登場した懐かしのゲームの原画などを展示する「ビデオゲームアートギャラリー」のほか、みなとみらいの景色をバックにアーケード(ゲームセンター用)ゲームを遊んだり、夕方からはゲームミュージックを聴いたりできる「パックマンDJブース」、本展に合わせて用意された描き下ろしイラストを設置した「フォトスポット」コーナーも用意されている。

また、同じフロアにあるタワーショップでは「パックマン」などのナムコゲームグッズを取りそろえ、スカイカフェでも会場限定のコラボメニューを販売中だ。

「パックマンDJブース」コーナーでは、「パックマン」をはじめ「ギャラガ」「ドラゴンバスター」など懐かしのゲームを遊ぶことができる
「パックマンDJブース」コーナーでは、「パックマン」をはじめ「ギャラガ」「ドラゴンバスター」など懐かしのゲームを遊ぶことができる

「パックマン」「ゼビウス」「マッピー」……「ナムコ黄金時代」の貴重な原画がズラリ

すでに展示が始まって久しいが、筆者の知る限り本展の詳細な内容は、ゲーム専門のメディアでも現時点でほとんど報道されていない(※本稿執筆の1月17日時点)。そこで、遅ればせながら現地に足を運んでみることにした。

当初は観光やショッピング、デートスポットなどに利用される横浜ランドマークタワーでの開催ということもあり、単にゲームの原画をポップアートとして展示するだけなのかと思っていた。ところが実際に行ってみたところ、筆者の想像をはるかに凌駕する展示内容だった。

ビデオゲームアートギャラリーには、世界的に有名な「パックマン」だけでなく、旧ナムコが発売した「ギャラクシアン」「ゼビウス」「マッピー」など、ファンの間では「ナムコ黄金時代」とも称される、70~80年代に登場した往年の名作アーケードゲームの原画がズラリと並べられていたのだ。

しかも本展のスタッフによると、今回が初公開となる原画も展示されており、「主役となる『パックマン』は勿論のこと、1980年代に発売されたナムコの名作ゲームより複数チョイスし、『パックマン』以外の作品にも知っていただきたい思いで選定いたしました」とのことだった。

展示された「パックマン」の原画の一部
展示された「パックマン」の原画の一部

左から順に「ギャプラス」「マッピー」「スプラッターハウス」「バーニングフォース」「フェリオス」の原画
左から順に「ギャプラス」「マッピー」「スプラッターハウス」「バーニングフォース」「フェリオス」の原画

名作ゲームの開発資料を自由に閲覧可能。「ドラゴンバスター」の仮称は何と「ドラゴンクエスト」だった!

筆者がさらに驚かされたのは、レストスペースのテーブル上にファイリングされた、歴代ナムコ作品の開発資料を直接手に取って見られるようになっていたことだ。

展示されていた開発資料は「パックマン」をはじめ、「ギャラクシアン」「ラリーX」「ゼビウス」「フォゾン」「マッピー」「リブルラブル」「ドラゴンバスター」の全8タイトルの企画書および仕様書。いずれも「ナムコ黄金時代」を知るゲームファンであれば、まさに垂涎のラインナップだろう。

レストスペースに置かれた「リブルラブル」「フォゾン」「ラリーX」の開発資料
レストスペースに置かれた「リブルラブル」「フォゾン」「ラリーX」の開発資料

以前に拙稿「貴重なレトロゲームの資料を守れ!『ナムコ開発資料アーカイブプロジェクト』の取組み【ゲームアーカイブ】」などでも、同プロジェクトの成果および手掛けた展示イベントを紹介してきた。

これまでの展示は、そのほとんどがショーケース内に飾られたものを眺めるだけだった(これだけでも十分に貴重な機会なのだが……)。だが、今回は自分でページを自由にめくりながら、往年の名作ゲームが製品化されるまでの経緯を学べる展示が実現したのだから、これを見逃す手はないだろう。

「マッピー」の企画書より。手描きのキャラクターのドット絵を間近で見ることができる
「マッピー」の企画書より。手描きのキャラクターのドット絵を間近で見ることができる

筆者は、小・中学生時代が「ナムコ黄金時代」とちょうど重なっていることもあり、今回展示されたタイトルは何度も遊んだ経験がある。会場で初めて見た開発資料を見て「あのゲームは、実はこんな設定になっていたのか!」と改めて驚かされるとともに、当時の開発者たちが手描きで作り上げた紙面からは、プレイヤーにゲームを存分に楽しんでほしいという思いが強烈に伝わり、震えるほどに感動した。

また余談になるが、「ドラゴンバスター」の開発段階での名称は、何と「DRAGON QUEST(ドラゴンクエスト)」だったという衝撃の事実も、今回公開された開発資料で改めて確認することができた。

「ドラゴンバスター」の仕様書より、開発中の名称は「DRAGON QUEST」だった
「ドラゴンバスター」の仕様書より、開発中の名称は「DRAGON QUEST」だった

本展の展示物は、往年のゲームファンはもちろん、現役のゲーム開発者や業界志望の学生、各種デジタルコンテンツに興味のある人にも、大いに参考になるのではないかと思われる。

「初公開となる原画のアート展示、学術的な価値のあるファンは必見の当時の企画書を展示しており、より『パックマン』の歴史や世界を深く知ることができる空間になっています。眺望面にも大きなシート張りをしており、みなとみらいを駆ける『パックマン』を、景色の良いスカイガーデンの眺望と重ねてお楽しみいただけます。

 日中は原画を解説している動画、パックマンの開発者インタビュー動画、夜は現在の技術を駆使した『DJパックマン』が展望フロアで皆様をお出迎えします。『パックマン』の奏でるDJとコラボドリンクを片手に、夜景の輝くみなとみらいの街を見渡すことができます」(本展スタッフ)

本展の開催期間は来月の2月28日まで。新型コロナウイルスの感染対策には十分に留意しつつ、日本はもとより世界のゲーム史においても貴重な資料を、ぜひご覧になっていただきたいと思う。

「PAC‐MAN×スカイガーデン パックマンのゲーム博物館」

  • 開催期間:2021年12月17日(金)~2022年2月28日(月)
  • 開催場所:横浜ランドマークタワー 69階展望フロア「スカイガーデン」
  • 入場料金:大人(18~64歳)1,000円、65歳以上・高校生800円、小・中学生500円、幼児(4歳以上)200円(※税込)
スカイガーデンの展望コーナー
スカイガーデンの展望コーナー

(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

スカイガーデン運営:三菱地所プロパティマネジメント株式会社

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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