ゼレンスキー大統領の「北朝鮮兵士が死傷」発言は今度こそ、本当!?
ウクライナのゼレンスキー大統領は12月1日、首都キーウで「共同通信」と単独会見し、ウクライナ軍が占拠したロシアのクルスク州のエリアに配置されている北朝鮮兵がウクライナ軍との戦闘で「死亡したり負傷したりしている」と発言していた。
「情報筋」や「消息筋」の話ではなく、最高司令官である大統領が言及したわけだから確かな情報なのだろう。但し、どうしても気になるのはいつ、どれだけの数の兵士が死亡、負傷したのかについての詳細を明らかにしなかったことだ。
ゼレンスキー大統領自身が北朝鮮の戦死者、負傷者について言及したのは今回で2度目だ。
先月7日にも訪問先のハンガリーの首都ブダペストでの記者会見で「北朝鮮兵がクルスク州でウクライナ軍との戦闘に参加し、死傷者を出した」と発言していた。この時も死傷者の人数は明らかにしなかった。
ゼレンスキー大統領の発言はおそくらく、前線のウクライナ軍の報告に基づくものだが、ではウクライナ軍はどのようにして北朝鮮兵士であることを確認したのだろうか、気になるところである。
一つ言えることは、ウクライナ軍が11月20日に英国製の巡航ミサイル「ストーム・シャドー」でクルスク州のマリノのロシア軍の司令部を攻撃した際に司令部にいた北朝鮮将校らが被害にあった可能性と11月23日と25日に米国の弾道ミサイル「ATACMS」を使用してクルスク州に対して攻撃を行った際に死傷者が出た可能性である。
ウクライナ国防省の情報総局は11月26日にクルスク州で傍受した北朝鮮兵士らの会話の音声を公開していたが、これが事実ならば、ウクライナ軍は北朝鮮兵士のいる場所を狙い撃ちにしていることになるのでそれだけ北朝鮮兵士の死傷の確率は高いことを意味する。
韓国のメディアは「共同通信」の「北朝鮮兵士死傷」報道を一斉に報じるなど高い関心を示しているが、韓国のメディアに登場している北朝鮮問題専門家の中には物証、すなわち北朝鮮兵士らしき死体が発見されていないことや負傷者が生け捕りにされていないことからウクライナ当局が生き証人(捕虜)を出さない限り、情報戦、心理戦の可能性も考えられるので額面通り受け止めることはできないと解説していた専門家もいた。
確か、ウクライナ国防情報総局が北朝鮮兵士に投降を呼びかけるため韓国語で1分14秒の動画を作成したのは10月23日で「外国の土地で無意味に死ぬな!家に帰れることのできなかったロシアの数十万の軍人の運命を繰り返すな!」「投降せよ!ウクライナは給食場所と食事を提供する」との放送や宣伝ビラを散布していた。この時から1か月以上が経過したが、ウクライナ軍が身柄を確保した捕虜、投降者は今のところゼロである。
「北朝鮮兵士はロシア軍服に偽装し、ロシア軍の統制下で何の作戦権限もなく言われるまま動いている。弾除けの傭兵にすぎない」と10月24日の国会国防委員会の国政監査で発言していた韓国の金龍顕(キム・ヨンヒョン)国防部長官は11月28日に開かれた国会国防委員会の場で北朝鮮兵士らはロシア軍の中隊に編入され、危険地域で「弾除けにされている」と発言していたが、金長官の予言通りならば、今後、北朝鮮の死傷者はさらに増え続けることになるであろう。
但し、金国防長官はウクライナの英字紙「キウイポスト」(電子版)が10月4日に情報筋の話として流した10月3日の「北朝鮮将校6人死亡と3人負傷」の誤報について「さまざまな状況を考えると、北朝鮮の将校や兵士がウクライナで死傷したという報道は事実の可能性が極めて大きい」と勇み足発言した経緯もあることから予言があたるかどうか何とも言えない。
ウクライナ国家安全保障・国防委員会傘下の虚偽情報対策センターの責任者であるアンドリー・コバレンコ氏が「北朝鮮軍がクルスク州で初めて攻撃を受けた」という短い文章をSNSのテレグラムに投稿したのは11月4日で、ゼレンスキー大統領が「ウクライナ軍と北朝鮮兵との間で初めて戦闘があった」と発言したのは11月5日で、北朝鮮兵士は10月はまだクススク州には配置されていなかった。