Yahoo!ニュース

批判から賞賛へ! ドラフト期間中に108億円のコロナ支援金を集めたNFLの根底にあるものは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
2020年ドラフトで全体の1位指名を受けたジョー・バーロウ選手(提供:NFL/USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【NFLが3日間のドラフトを無事終了】

 NFLが現地時間の4月25日、3日間にわたり実施された2020年ドラフトを無事に終了した。

 今年は米国内で新型コロナウイルスが猛威を振るう中での開催となり、完全バーチャル形式で行われるという異例なものになったが、初日にドラフト史上最高の視聴者数を記録するなど(本欄でも報告済み)、久々のスポーツイベント開催に人々の関心を集めた。

 毎年6月にドラフトを実施しているNBAとMLBが早々に延期を検討する中、主要リーグで最初にドラフトを迎えるNFLが予定通りの実施を発表したことで、周囲から疑義を呈する声も上がっていたが、結果的に成功裡に終える結果になった。

【108億円のコロナ支援基金集めに成功】

 今年のドラフトが成功した理由は、過去最高の視聴者数を記録しただけに留まらない。

 連日ドラフト指名終了後に、新型コロナウイルス関連の支援基金のための募金活動を展開したところ、3日間で1億ドル(約108億円)の資金を集めることができたのだ。

 ドラフト終了後にロジャー・グッデル・コミッショナーはビデオ・メッセージをSNS上に投稿し、以下のように謝意を述べている。

 「我々は、今回のパンデミックの影響を受ける人々を支援し、前線で戦う人々を称えることが需要だと考えていた。

 皆さんの寛大な寄付のお陰と、我々NFLファミリーの協力もあり、新型コロナウイルスの支援基金として1億ドルを集めることができたことを、この場で発表できることを嬉しく思います。

 本当に素晴らしいことだと思います。心からから感謝します」

【ファンが求めているものを見抜く洞察力】

 繰り返しになるが、NFLはやや強行気味に実施したドラフトで、結果的に新型コロナウイルスで苦しむ人々に久々に明るい話題を提供するとともに、支援資金を集めることで彼らからリーグへの支持を得ることに成功している。

 これば米国の主要リーグに共通していることだが、彼らは常にファンを第一に考え、リーグを運営しようとしている。今ファンが何を求め、何を必要としていくのかをしっかり見極めようとしたからこそ、ドラフトを実施するだけに留まらず募金活動にも着手しようという発想が生まれてくるのだ。

 如何にファンと共生していくか──。

 それこそがプロリーグの絶対的な命題であり、使命でもあるのだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事