【鈴鹿8耐 合同テスト】ケーシー・ストーナー起用で3連覇は!?
7月26日(日)に決勝レースをむかえる「鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)」の第2回合同テストが鈴鹿サーキットで開催された。今回はテスト走行の模様をUstreamによる配信で伝える試みが行われ、アナウンスを行った。普段は淡々と行われることが多いテスト走行だが、実況アナウンスやライダー達へのインタビューを行うことによって、チームやライダーの仕上がり具合をより感じ取ることができた。今回は2日間のテスト走行をレポートしたい。
まずはホンダ勢。
注目のストーナーが登場
7月7日(火)8日(水)の2日間、鈴鹿8耐に向けた合同テストには77チームのマシンが集結。しかしながら、当日の鈴鹿サーキットは梅雨前線の影響で悪天候となってしまった。降雨があったばかりか、気温も路面温度もこの時期としては異例の寒さとなり、難しい環境の中でのテスト走行となった感は否めない。
そんな中、ファンやメディアの注目は元MotoGPワールドチャンピオンのケーシー・ストーナーの出走に集中した。今年の鈴鹿8耐に電撃参戦を発表したストーナーは、2年連続の鈴鹿8耐ウイナーである「#634 MuSaShi RT HARC-PRO」からの参戦。参戦発表の前にマレーシアでホンダCBR1000RRをテストしてはいるものの、チームに合流してのテストは初。しかも、彼にとっては12年ぶりの鈴鹿での走行(2003年125ccの日本GP出場以来)であり、コースレイアウトが変わった鈴鹿をどう攻めるかに興味が集まった。
ストーナーは断続的な降雨に見舞われた初日に、ライディングポジションなどを確認。耐久レースに出場すること自体が初めての彼にとって、他のライダーとマシンを共有するのは初めての経験。ストーナーのサポートのために同チームのピットに詰めたHRC(ホンダの2輪レース部門)のスタッフに細かなリクエストを送っていた。
ワールドチャンピオンの貫禄を見せた!
午前中だけ、路面が乾いた2日目。いよいよストーナーにとって初の本格的な走行が始まり、鈴鹿サーキットの映像スタッフも元ワールドチャンピオンの走りを監視カメラ映像のスイッチングで追いかけた。最初の走行で2分11秒台に入れたストーナーは、続く走行で2分9秒台をマーク。コースコンディションも決して良くない中ではあったが、(セオリーとして)初走行のライダーは2分10秒台がマークできれば御の字と言われる中、いきなり2分9秒台に入れてきたのはさすがワールドチャンピオンの貫禄といったところだ。
MotoGPから引退して3年近くの月日が流れているものの、彼の走りは決して石橋を叩いて渡るものではなかった。逆に言うとそういうタイプではワールドチャンピオンにはなれないということを彼は久しぶりの鈴鹿ライドで見せてくれたと感じる。
しかし、ストーナーには不安要素も多くある。ベストタイムだけを見れば石橋は叩いていないが、ペースの違うプライベーターのオーバーテイクに関してはかなり慎重なライディングを心がけていた。鈴鹿8耐ではトップチームからプライベートチームまで84台の様々なレベルのチームやライダーが出場するため、レース中は大量の周回遅れを抜いていかなくてはならない。昨年、完走したチームの決勝ベストタイムを並べてみると、優勝した「#634 MuSaShi RT HARC-PRO」と最も遅かったチームとの差はなんと14秒。速度差があまりに大きい周回遅れのマシンを次から次へとかわすのは世界王者ストーナーにとって初の経験である。ストーナーが差が大きいプライベートチームと共に走行するチャンスはレースウィークの数回しか残されていない。
「ワールドチャンピオンだからやれて当然」と周囲の期待度は高いが、いかに彼が未経験の部分を早く克服するかも勝利への鍵となる。ちなみに2日間のトップタイムはチームメイトの高橋巧がマークした2分7秒847だった。3連覇に向けて、まずは優勝チームが速さを示した。
(キーワード)
【#634 MuSaShi RT HARC-PRO】
本田重樹監督が率いる東京都武蔵村山市にあるチーム。2000年代前半から本格的に鈴鹿8耐に出場し始め、ホンダCBR1000RRのファクトリーマシンを貸与されるトップチームに成長。2010年、2013年、2014年と3度の優勝を達成している。
2015年のラインナップ
◯高橋巧
(10年、13年、14年優勝/全日本ロードレース選手権に参戦)
◯マイケル・ファン・デル・マーク
(13年、14年優勝/スーパーバイク世界選手権に出場)
◯ケーシー・ストーナー
(初出場/ホンダMotoGP開発ライダー)
【ケーシー・ストーナー】
オーストラリア出身、29歳の元グランプリライダー。最高峰MotoGPクラスで2度のワールドチャンピオンに輝きながら、27歳の若さで、ファンに惜しまれながら現役を引退。2013年にホンダMotoGP開発ライダーに就任し、ホンダから鈴鹿8耐出場の打診も受けていた。今年、2年半ぶりにレースに出場する。鈴鹿8耐への参戦は初。市販車ベースの耐久レース出場も彼のキャリアの中では初となる。