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キャンプイン直前、KIA監督に逮捕状 球団は捜査結果を待たず解任を決定。いったい何が?

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
球場内に壁面に掲示されたキム・ジョングク監督の写真(写真:ストライク・ゾーン)

2月1日から始まるオーストラリアでの春季キャンプ出発直前に、監督が解任となる異例の事態となった。韓国KBOリーグのKIAタイガースは29日、前日に職務停止処分としたキム・ジョングク監督(50)の契約解除を発表した。

キム監督は球団とスポンサー契約を結ぶコーヒーのフランチャイズチェーン運営企業から複数回にわたって合計1億ウォン(約1,100万円)を超える金品を受け取った背任収賄の疑いが持たれている。ソウル中央地検は29日に逮捕状を請求し、これを受けて球団は今後の捜査結果に関わらず品位を損ねたとしてキム監督の解任を決めた。

発覚のきっかけは前GMの「裏金」問題

今回の件は一昨年の球団団長による問題行動がきっかけとなって発覚した。団長とは日本のゼネラルマネージャー(GM)に相当する職だ。

当時のチャン・ジョンソク団長は2022年のシーズン中、FA権取得を控えたパク・トンウォン捕手(現LGツインズ)に対し、FA宣言残留時に大型契約を結ぶ見返りとして金銭を要求。パク・トンウォン捕手は「裏金」を求められた事実を選手会に告発し、KIA球団は23年3月に同団長を解任した。

リーグを運営する韓国野球委員会(KBO)はチャン前団長について、検察に捜査を依頼。昨年11月に検察がチャン前団長の自宅を家宅捜索したところ、前団長とキム監督がコーヒーチェーンから金品を受け取っている疑いが持ちあがった。

金品授受は認めるも疑惑については否認

そのコーヒーチェーンはチャン前団長在任中の22年8月にKIAとスポンサー契約を締結。ユニフォームへのロゴ掲出や外野席のホームランゾーン、デイリーMVPの賞金授与など大きく展開し、球団オフィシャルスポンサー5つのうちの1つに名を連ねている。

試合前のベンチ裏には同社のアイスコーヒーが常に数多く準備され、選手や関係者がストローのささったプラカップを手にする姿が見られた。

キム監督は球団の聞き取り調査で金銭の受け取りは認めるも、「自身にスポンサー選定の権限はない」として「罪には問われない」と主張しているという。

明るい性格の元代表選手

キム監督はKIA(入団時はヘテ)の地元クァンジュ(光州)出身で、チーム生え抜きの元内野手。02年には50盗塁を記録しタイトルを獲得するなど活躍し、06年に行われた第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)をはじめとした国際大会で韓国代表入りした。

引退後もKIA一筋に指導者生活を送り、代表チームでもコーチを務めた。22年にKIAの監督に就任。今季は契約最終年となる3年目を迎えていた。明るい性格で選手の先輩的な存在としてチームを率い、現役時代の経験と作戦コーチとして培った勝負勘を発揮してきた。

キム監督の解任に伴い、チン・ガプヨンヘッドコーチが当面の指揮を執る。チンヘッドはキム監督のコリョ(高麗)大学の1年後輩にあたる。球団は早急に新監督を決めるとしている。

現職監督に逮捕状が請求されるのは1982年のKBOリーグ発足以来初めてだ。

⇒ 2024年日韓22球団 春季キャンプ日程表
⇒ KIAタイガース紹介

◇KIAのコーチングスタッフには中村武志バッテリーコーチ(元中日コーチ)が在籍。チーム6年ぶりの復帰となった。また打撃コーチは元ソフトバンクのイ・ボムホが務めている。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FM那覇)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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