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なでしこジャパン、第3戦の相手は最強GK擁するチリ。決勝トーナメント進出には絶対に負けられない一戦

松原渓スポーツジャーナリスト
チリ女子代表(写真:ロイター/アフロ)

 東京五輪に出場しているなでしこジャパンは、7月27日にグループステージ第3戦でチリと対戦する。

 決勝トーナメント進出をかけた一戦だ。日本は初戦でカナダに1-1、第2戦でイギリスに0-1で敗れて勝ち点1。今大会に参加する12カ国のうち、8カ国が決勝トーナメントに進出できるため、グループステージ3位でも可能性があり、日本はこの試合に勝てば確実となる。一方、チリはイギリスに0-2、カナダに1-2で勝ち点は「0」だが、この試合で勝てばまだ先に進める可能性がある。

 ここまで日本は守備の時間が長く、攻撃面のコンビネーションは影を潜めた。得点が期待されるFW田中美南は、守勢に回ることが多かった2試合の経験を糧に、チリ戦への覚悟をこう口にする。

「前からボールを取りに行く姿勢を見せて、奪ったら相手の背後をとったり、1対1でどんどん仕掛けてシュートを増やして、最後まで点を取りにいきます。ここまで(2試合)の反省を生かして、試合を積み重ねる中での成長を見せたいです」

 日本は、交代も含めて22人中18人の選手がピッチに立った。中2日の連戦であり、準々決勝を見据えて主力を温存したいところだが、そのような余裕はないだろう。ここまで「切り札」としての途中出場が続いているFW籾木結花とFW遠藤純に加えて、登録はディフェンダーながらFWもこなせるDF宝田沙織など、日本にはまだ“隠し玉”がある。強いプレッシャーがかかる中、高倉麻子監督はどのような組み合わせでチリを攻略するのだろうか。

 ここまでは札幌での2連戦だったが、会場が宮城スタジアムに変わる。空調が効いた札幌ドームとは異なり、高温多湿との戦いも加わる。

 チリは、FIFAランキングでは37位となっており、イギリス(イングランドが6位)、カナダ(8位)、日本(10位)に次いでグループEでは一番下だが、ここまでの戦いぶりを見る限り、劣勢時の粘り強さがある手ごわい相手だ。

 南米の女子サッカーはブラジル(7位)の実力が頭一つ抜けているが、チリはアルゼンチン(35位)とライバル関係を築く。大陸予選で、そのアルゼンチンを破って2019年フランス女子W杯に初出場した。結果は世界ランク1位のアメリカに0-3、4位のスウェーデンに0-2で敗れ、タイに2-0で初勝利。グループステージ敗退となったが、初の国際大会で健闘が光った。今大会は、カメルーンとの大陸間プレーオフを制して切符を勝ち取り、W杯を経験した選手が21人中16人を占めている。

 今年6月に行われた国際親善試合では、前回のリオデジャネイロ五輪女王で、FIFAランク2位のドイツを相手に互角の戦いを展開。結果的にボール支配率は38対62とかなり下回ったものの、カウンターからチャンスを作り、ドイツと同じ10本のシュートを放った。そして今大会、初戦のイギリス戦は最終的に0-2と力負けしたものの、ゴール前では体を投げ出し、粘り強く耐えていた。第2戦のカナダ戦では、2点ビハインドから1点差に追い上げ、終盤にはシュートをクロスバーに当ててカナダをヒヤリとさせている。

 強豪相手の戦いには慣れているのだろう。狙いはカウンターだけではない。最終ラインから丁寧につなぎ、前線は流動的なポジショニングをとってドリブルでの仕掛けも交えてくる。15年から指揮を執って7年目になるホセ・レテリエル監督は、イギリス戦では4バック、カナダ戦では3バックを採用。2試合でメンバーをほとんど変えておらず、主力選手たちの負担は大きいが、それだけ連係への信頼の厚さが感じられる。 

 2試合ともかなりタフな試合だったため、疲労は相当蓄積しているはずだ。控え組の戦力値はわからないが、個人的には、絶対に落とせないこの試合では、これまでの2試合のメンバーをそのまま起用してくるのではないかと予想している。

 キープレーヤーとしては、最前線でターゲットになる169cmのFWマリア・ホセ・ウルティア(背番号9)のほか、2列目でMFヤナラ・アエド(10)やMFカレン・アラヤ(8)らがホットラインを築く。体格は日本と同じぐらいだが、機動力に優れており、南米らしい球際の激しさがある。うまくボールを動かして相手を食いつかせながら、良いコンビネーションで相手ゴールに迫りたい。

 そして、チリには“最後の砦”がいる。キャプテンのGKクリスティアン・エンドラーは、圧倒的な存在感を放つ。

クリスティアン・エンドラー
クリスティアン・エンドラー写真:Maurizio Borsari/アフロ

 182cmの長身はピッチ上で際立つが、動きがしなやかで、キックの飛距離も出る。19年と20年は世界最高GK3人にノミネートされており、大舞台に慣れたメンタリティと、華を感じさせるGKだ。カナダ戦では、1対1のピンチの場面で一度抜かれながら、もう一度コースを塞いで、長い手でシュートを防いだプレーには驚かされた。この夏オリンピック・リヨンに移籍が決まっているが、チェルシー(イングランド)やバレンシア(スペイン)でもプレー経験があり、5カ国を話すという。母国では少女たちのためのサッカースクールを立ち上げるなど社会貢献にも積極的だ。

 エンドラーはなでしこジャパンのキーパー陣にも、人気がある。GK池田咲紀子は、「シュートストップがダイナミックかつしなやかで、迫力あるプレーも綺麗に見えるところが好きです。タイプは違いますが、プレーを盗めないかな、と思って参考にしています」と話し、GK山下杏也加も、「女子で世界一うまいGKだと思います。いつかユニフォームを交換できたら」と、以前熱を込めて語っていたほど。決して容易ではないが、日本のアタッカー陣は最強GKからゴールを奪うことができるか。

 試合は、宮城スタジアムで20時キックオフ。もう1試合のカナダ対イギリスの試合は同時刻に別会場で行われる。イギリスがカナダに勝ち、日本がチリに勝てば、カナダと日本が勝ち点4で並ぶ。得失点差により2位通過の可能性も残っているため、複数得点を奪っての勝利が理想だ。日本にとって、初の有観客試合となるこの試合で、ホスト国の意地を見せたい。

熊谷紗希、南萌華
熊谷紗希、南萌華写真:森田直樹/アフロスポーツ

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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