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韓国現代史の悲劇「済州4.3」73周年迎え、文大統領が改めて“深い謝罪”

徐台教ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長
3日、「済州4.3追念式」に参加し黙祷する文在寅大統領。青瓦台提供。

1948年から54年にかけて島民の約1割が犠牲になったとされる、韓国現代史の大悲劇「済州4.3事件」。73周年を迎え文在寅大統領が済州島で行われた追念式に出席し、政府のより積極的な対応を誓った。

●軍警のトップが初めて出席

完全な独立を夢見て分断に反対したという理由で、当時の国家権力は済州島民に「アカ」、「暴動」、「反乱」の名をかぶせ、無慈悲に弾圧し、死に追いやっていきました。「被害者」を「加害者」に変身させ、軍部独裁政権は弾圧と連座制を動員し、被害者が声を上げることさえできなくしました。(文大統領演説より)

筆者はこれまで「済州4.3」に関する記事をいくつか書いてきたが、常にどこまでこの悲劇について日本の読者に説明すればよいのか戸惑う。なぜなら、韓国でもその詳細な内容を知る人は多くないというのが筆者の体感としてあるからだ。

今日4月3日には韓国でもニュースになるが、今さら「4.3とは何だったのか」という特集はしないため、どこまで理解があるのかに疑問がある。済州出身の筆者の友人によると「済州島内でも学生にしっかり教えるべきという声があるほど、正確に知られていない」という。

そんな中、冒頭の文大統領の発言は「4.3」の性質を正確に表している。

米軍政下の当時、南北分断を決定づける韓国での単独選挙を反対したことがきっかけとなったが、米軍と同じ年の8月に発足した韓国政府がこれを弾圧したものだ。その後、朝鮮戦争が起きると「4.3」に関係するとリスト化されていた人々は、政府に拘束され殺された。

このように、南北分断と直接関わる出来事であり、政権に反対する者を「アカ」とする韓国現代史における流れを決定づけた出来事でもある(48年10月の『麗順事件』も大きな契機になった)。

文大統領が追念式に参加するのは、2018年、20年に続き三度目となる。さらに史上はじめて国防部長官と警察庁長という軍警のトップが参席した。これは当時、住民弾圧に当たった政府組織の長ということで、文大統領はこれを「軍と警察の誠意ある謝罪の気持ちを、犠牲者と遺家族、済州島の皆さんが包容と和合の気持ちで受け止めてくださるようお願いする」と表現した。

なお、「済州4.3」に関する詳しい記事は筆者の過去記事を参照いただきたい。

「済州4.3事件」70周年を迎えた韓国の今 −国家による暴力と分断を越えて(18年4月)

https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20180404-00083567/

'国家による暴力'...「済州4.3」から72年、鈍い解決への歩み(20年4月)

https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20200403-00171325/

演説する文大統領。椿の花は済州4.3の象徴だ。
演説する文大統領。椿の花は済州4.3の象徴だ。

●演説で明確な謝罪

文大統領の演説を見ていくと、そこには「国家が国家暴力の歴史を深く反省し、省察する」という明確な謝罪があった。

また、島民の努力に焦点が当てられていた。焦土化した中から立ち上がり、「アカ」のレッテルを貼られるも粘り強く生き、事件から50年以上経ってついに真実を明らかにした姿を称えた。

さらに演説では「改正法」について多く言及した。これは今年2月26日に成立した『済州4.3事件真相究明および犠牲者名誉回復に関する特別法改正案』のことだ。

2000年の同名の法案を大幅に改正した同法案の中には、▲受刑人の名誉回復、▲賠償・補償に関する「慰謝料などの特別支援」、▲追加の真相究明調査という内容が入り、真相究明に焦点が当てられてきたこれまでの対応から大きく前に進む内容だった。

この改正法が成立するまでの過程についても文大統領は賞賛を惜しまなかった。済州特別自治道(これが正式な行政区分である)のあらゆる機関、団体や市民が力を合わせる一方、普段は強く対立する与野党の合意もあったとし、「今国会最大の成果の一つ」と持ち上げた。

文大統領はまた、改正法に従って今後も政府が努力を続け、トラウマセンターの国立化などの支援を続けていくと明かした。

演説全訳は以下の記事から読める。

[全訳] 第73周年 4.3犠牲者追念式 追念辞(2021年4月3日)(ニュースタンス記事)

https://www.thenewstance.com/news/articleView.html?idxno=3052

また、改正法の詳細な内容は以下の記事で読める。

韓国で『済州4.3事件特別法改正案』が成立、被害補償・名誉回復などに大きな弾み

https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20210227-00224871/

●与野党共にメッセージ

この日、ソウル市長選・釜山市長選(7日投開票)に追われる与党・共に民主党と第一野党・国民の力もそれぞれメッセージを出した。

与党は「2月26日に済州4.3改正法を国会で通過させ、済州4.3の完全な解決のための意味ある前進を成し遂げた。これにとどまらず必ず身を結べるように政府と与党、そして国会が共に(努力)する」とした。

また第一野党は「去る2月、国民の力は4.3事件の完全な解決のための第一歩である、済州4.3特別法の改正に積極的に臨んだ。二度と起きてはならない韓国の歴史に大きな悲劇として残る済州4.3事件、胸が痛む過去事が繰り返されないよう、その意味を忘れない」と発表した。

73年前の出来事にもこのように責任をとり続ける韓国政府。日本では進歩派政権が持つこんな現代史への「こだわり」が理解できないかもしれない。だが、政府の過ちは必ず正すべきあり、今なお南北分断が進行形であることからも、「済州4.3」を考えることは、韓国社会を知る上で欠かせない。

そして、この問題に向き合わない限り、朝鮮半島の未来を描くことはできないのである。読者の方にもぜひ、今日を機に「済州4.3」を知っていただきたい。日本には『火山島』『鴉の死』(いずれも金石範)といった日本語で書かれた良書がたくさんある。

ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長

群馬県生まれの在日コリアン3世。1999年からソウルに住み人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年韓国に「永住帰国」すると同時に独立。16年10月から半年以上「ろうそくデモ」と朴槿恵大統領弾劾に伴う大統領選挙を密着取材。17年5月に韓国政治、南北関係など朝鮮半島情勢を扱う『コリアン・ポリティクス』を創刊。20年2月に朝鮮半島と日本の社会問題を解決するメディア『ニュースタンス』への転換を経て、23年9月から再び朝鮮半島情勢に焦点を当てる『コリア・フォーカス』にリニューアル。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。22年「第7回鶴峰賞言論部門優秀賞」受賞。

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