ウクライナ副首相「1機数万円のウクライナ製FPVドローン"モズ"1500機を最前線に」
ドローンを鳥に例えるウクライナ軍
ウクライナ副首相のミハイロ・フェドロフは「1500機以上のウクライナ製のFPVドローン"Shrike(モズ)"をドネツクの最前線に送ります。これらのFPVドローンはロシア軍の攻撃に役立つでしょう。ウクライナ軍のドローンは1機数百ドル(数万円)程度ですが、攻撃力はかなり強いです」と語っていた。
Shrikeは英語で鳥の「モズ」だが、ウクライナ軍はドローンをよく鳥(Bird)に例えており「ウクライナ軍のドローン」を"Our Birds(我々の鳥たち)"と称することが多い。
FPVはドローンに搭載されたカメラからの風景が操縦者に見える。標的に突っ込んでいき爆発するシーンをFPVで撮影することも多い。2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。ウクライナ軍では監視・偵察目的で調達した民生品ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍の上空から落下させたり、ドローンごと突っ込んでいき爆発させたりしている。
今回調達してきた1500機のFPVドローンに最前線の現場で弾薬を搭載して攻撃用の「FPV神風ドローン」に作り変える。副首相が言っているようにこのようなFPVドローンは1機数百ドル(数万円)程度だが、ロシア軍の高額な戦車や軍事設備を破壊するのに役立っておりコストパフォーマンスはとても高い。
何機あっても足りないドローン
ウクライナ軍では上空からFPV神風ドローンで戦車や大砲、塹壕などに突っ込んでいき爆発させている。そのような攻撃シーンの多くはFPVで撮影して公開している。ウクライナ軍はFPV神風ドローンでロシア軍の戦車、塹壕など軍事設備を大量に破壊しておりウクライナ軍にとって重要な兵器である。
ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍もイラン製軍事ドローン「シャハド」でウクライナ軍に突っ込んでいったり、ウクライナ軍と同じように民生品ドローンに爆弾を搭載してウクライナ軍に爆弾を投下して攻撃を行ったりしている。両軍によって上空のドローンの迎撃と破壊も頻繁に行われている。ウクライナ軍はロシア軍のドローンを毎月数百機ほど破壊している。ウクライナ軍のドローンもロシア軍によってかなり破壊されている。
今回、ウクライナ軍は1500機のFPV神風ドローンを最前線に送る。副首相は頻繁に「ドローン何機を戦場に送っている」とSNSでアピールしているが、ドローンは監視・偵察用も攻撃用も何機あっても戦場では足りない。攻撃に成功する前にロシア軍に破壊されてしまうことも多いし、神風ドローンは敵軍に突っ込んでいくと爆発してしまうので、再利用ができない。戦場でのドローンは数の勝負である。
クラウゼヴィッツは『戦争論』の中で「数の優位は戦術においても戦略においても勝利の最も一般的な原理である」(クラウゼヴィッツ著・清水多吉訳「戦争論(上)」中公文庫、2001年、P276)と語っていた。ドローンの生産スピードと備蓄量がどれだけあるか、現場にどれだけ早く納品できるかが今後のウクライナ紛争での1つのカギになってくる。
▼1500機のFPVドローン「Shrike」を最前線に送ることを伝える副首相
▼FPV神風ドローンでロシア軍を攻撃することを伝えるウクライナ軍の公式SNS