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『あのクズ』で奈緒にキツいトレーナー役の岡崎紗絵 「食事は成分表を見て取るようになりました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『あのクズを殴ってやりたいんだ』に出演中の岡崎紗絵 (C)TBS

ボクシングラブコメディを謳ったドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』に岡崎紗絵が出演している。クズ男を殴るためにボクシングを始めた佐藤ほこ美(奈緒)に付くトレーナーで、相手のクズ男の葛谷海里(玉森裕太)とも浅からぬ関わりがある羽根木ゆい役。当たりの強い男勝りなキャラクターだが、次回4話では秘められた過去と三角関係の急展開が描かれるという。

ジムに通って気持ちが切り替わりました

――夏クールの『マウンテンドクター』がクランクアップして、すぐ『あのクズを殴ってやりたいんだ』に入ったんですか?

岡崎 そうですね。1週間後くらいでした。

――切り替えはスムーズに行きました?

岡崎 ボクシングのジムに通ったことが助けになりました。『マウンテンドクター』の典子は山岳医療に乗り気でないところから始まって、今回のゆいは人生ボクシング一色でまっすぐ進んでいて。だいぶ違う役柄だったのが、ジムで練習することで「これからこの役をやっていくんだ」という気持ちに変われました。腕は痛くなりましたけど(笑)。

――ボクシングにもともと興味はあったんですか?

岡崎 身近なものではなかったです。以前は殴り合いというイメージがあって、間近で観たら迫力がすごいと思いますけど、見慣れてないといちいち「わっ!」とビックリしちゃいそうで(笑)。今は役でセコンドに付いたり、ジムで皆さんがサンドバックにパンチしているのをよく見るので、抵抗はなくなりました。

(C)TBS
(C)TBS

パッという動きで全部わかると言われて

――自分でパンチを打ってみると、どんな感触でした?

岡崎 いい音が出てキマった瞬間はスカッとします(笑)。発散になって、のめり込んだらハマりそうに思いました。

――トレーナーとして手本を見せて構えたり、揺らしたサンドバックをパンチで止めたシーンでは、カッコいいフォームでした。

岡崎 シンプルだからこそ難しくて、「パッという動きで全部わかってしまう」と言われたのがプレッシャーでした。重心を落とすのは基本で少し猫背気味とか、ボクサーの方の姿勢のクセがスッと出ると、長年ボクシングをやってきた感じになると聞いて、そういう調整もしました。

――ゆいはジムの会長の娘で、自分もボクサーを目指していた設定ですからね。

岡崎 あと、パンチは上半身の力で打つものと思いがちですけど、(現役世界チャンピオンの)晝田(瑞希)さんには「ボクシングは脚です」と教わりました。下半身でどれだけ踏ん張れるか、どうすれば踏ん張りやすいか、細かく指導していただきました。

ミット打ちのタイミングを練習しました

――ミット打ちのシーンも様になっていました。

岡崎 こちらはミットを持つ側で、練習ではスタッフさんが打ってくれて、それに慣れて奈緒さんとやると、全然違っていたんです。最初はタイミングも距離感もまったく合わなくて。カメラが回っていないところで練習させてもらって、どうやったらうまくいくか、お互いに計算しながらやっていました。

――パンチを打つ奈緒さんに目が行きますが、受けるほうもさり気なく大変なわけですね。

岡崎 トレーナーは指導する立場なので、まず技術面で見せられる形に持っていかないといけなくて。撮影の本番直前まで、指導してくださる方にフォームを教えていただいています。そこが一番高いハードルで、うまくやりたい意識が強かったです。

ドシッとした気持ちで説得力が出るように

――ボクシングジムに通う以外の準備もしたんですか?

岡崎 本職のトレーナーの方にお話を聞きました。もともと選手だった方で、ラウンド数とか初歩的なことから教わって、JBCのルールブックを貸していただいて。それを全部読んで、知っているだけでも気持ちが変わるところがありました。

――自然と身になっていると。

岡崎 トレーナーさんは気にすることがたくさんあって、本当に視野が広いようです。きっとメンタル面でも選手をサポートして、すべてを俯瞰していると思いますし、そこに説得力が出たらいいなと。ドシッとした気持ちを持ちつつ、演じることを心掛けています。

――ゆいは男勝りでもあって、今までになかった役かもしれませんね。

岡崎 しっかりしていてハキハキしたキャラクターは多くやらせていただきましたけど、父親のことを「オヤジ」と呼んだり(笑)、リングの外でずっと檄を飛ばして吠えていたりする役は、初めての挑戦です。

「オヤジ」をどういう感じで言おうかと

――ジムのシーン以外でも、ゆいにはキリッとしたたたずまいを感じます。

岡崎 基本的にはシャンとしていて、常に重心がドシッと下にあるような気持ちを持つことを大事にいています。声もいつもよりちょっと下のほうで出すようにもしていて。わかりやすく言うと“低く”ということかもしれませんけど、何となく下からの発声になっています。

――その声で「オヤジ」と(笑)。

岡崎 父親に面と向かって「オヤジ」という人はなかなかいないと思うんです(笑)。しかも、女性がどういう感じで言うのか。言い慣れてないので、家で「オヤジ」と言う練習は何度もやりました。成果はわかりませんけど(笑)、口慣らしをしておきたくて。

――岡崎さんはお父さんのことを何と呼んでいるんですか?

岡崎 普通に「お父さん」ですね。「オヤジ」とは全然言いません(笑)。

三角関係で想いが返ってこないのは辛いです

――そんなゆいですが、辛い立場でもありますよね。3話はバーで海里に抱きつくところで終わっていました。

岡崎 三角関係の中で辛さはありますね。海里を昔から知っていて、一緒にボクシングをやってきただけに、女として見られてないんだろうなと思います。絶対に返ってこないと知りつつの想いは、本当に切ないです。4話ではゆいがボクサーを諦めた過去も描かれていて、そこにも海里が絡んでいて。

――それだけに、ほこ美が海里に近づくのが面白くないようで。

岡崎 ほこ美に「あいつには近づかないほうがいい」と言ったのは、海里がクズになってしまったことを知っているからでありつつ、自分の想いも乗っていますよね。「クズを殴ってやりたい」なんて半端な気持ちでボクシングをやろうという人を、自分の大事な海里に近づけたくない想いはすごくあると思います。

――でも、ほこ美のバンテージの巻き方は、海里に教わったものだと気づいたり。

岡崎 見覚えがある巻き方だったので。自分の知らないところで、ほこ美が海里と関わっていたのは、ちょっといただけないです(笑)。

――ほこ美がジムに来たときも、バーから出てきてずんずん歩いていたときも、奈緒さんはだいぶおかしな様子で演じてましたけど(笑)。

岡崎 面白いですよね(笑)。動きも話し方も全部面白いし、かわいらしくて、イチ視聴者として見たら「頑張れ!」って応援したくなります。ゆいとしては「ふんっ!」て感じですけど(笑)。

動いてみるしかないと上京しました

――ゆいに「いつまでもこのままじゃ何も変わらない」という台詞があります。岡崎さんもそんなことを考えた経験はありますか?

岡崎 高校を卒業して上京するとき、そう思いました。私の場合、人生で立ち止まっていたわけではなくて、選択を迫られたんです。高2から「Seventeen」のモデルになって、このまま地元の名古屋にいるか、思い切って飛び出してみるか。チャンスはもらっていても、今のままなら想像できる私にしかなれない。それだとどうにもならないから、動いてみるしかない。そんな気持ちで上京しました。勇気を出して現状打破しようと考えたのは、そこでした。

――名古屋在住でのモデル活動も、できなくはないんでしょうけど。

岡崎 もっと広げてみたいと思いました。進路のことも同時に考えていて、大学と両方やっていくイメージは自分の中になくて。やるならお仕事1本に絞るというところで、だいぶ悩んだんです。その後、モデルからお芝居をすることになって、どうにもうまくできなかったときも、このままじゃどうしようもないと思いました。それで、映画やドラマをたくさん観るようになりました。

自信は今もなくて探っています

――『あのクズ』では、海里が7年前の試合でボクシングから離れたことが明かされました。7年という年月は、岡崎さんにはどんな体感ですか?

岡崎 長いようであっという間でもありますけど、このドラマでは7年間、海里もゆいも気持ちが動いてない、前に進めてないことがすごく大きいと思います。私で言うと、20歳をちょっと過ぎてからずっと……となりますから。

――岡崎さんの7年前は『嫌われる勇気』、『人は見た目が100パーセント』、『僕たちがやりました』とドラマに続けて出演していました。

岡崎 その頃でしたかね。まだ高校生役をやっていましたから、そう考えると、だいぶ昔に感じます。そこからずっと思い悩んで動けていなかったら、焦っていたでしょうね。

――当時はドラマに出演していてもメインキャストではなくて、岡崎さんは「私はまだヒロインの器でないので」と話していました。今はヒロインも自信を持って演じていますか?

岡崎 自信は今も持ってないです。逆に、昔は何も知らないから怖いと感じなかったことが、今は知っているが故に怖くなったりもしますから。簡単に「私できます」と言えるメンタルではなくて、探りながらやっています。

急いで自信をなくすより少しずつ進めれば

――この世界、岡崎さんくらいルックスが良ければ、何作かは出られるように思います。でも、それで終わりになる人もいる。岡崎さんは女優業では一歩ずつ階段を上って、ここまで来た自負はないですか?

岡崎 いろいろ経験させていただいて、わかったことも課題もたくさんありました。それは本当にありがたいです。

――飛び級して上がっていきたくないタイプですか?

岡崎 飛び級できる方もいらっしゃると思います。でも、階段を何段も飛ばす力を持ち合わせてないと、すごい転び方をしてしまう。急いだ反動で「あれ? 自分にはできないかも」となったら、それまでに付けた自信もなくなってしまいそうです。だから私はこうやって、少しずつ進んでいくのが合っているかなと思います。

――「Ray」モデルを今年で卒業するのも、女優活動により力を入れるためでもあって?

岡崎 20代のほとんどを「Ray」で過ごさせていただいて、学びもたくさんありました。30代も近づいているので、またひとつステップアップも考えました。モデルはこれからもやっていきたい気持ちはありますけど、やり方が変わってくると思います。お芝居にはより力を向け続けます。

昔と違って健康第一とすごく思います

――11月2日に29歳の誕生日を迎えます。20代ラストイヤーは意識しますか?

岡崎 ものすごく意識します。もうラストなんですね。誕生日は来ますけど「本当に29歳ですか?」くらいな気持ちです(笑)。

――まだ24か25歳くらいの感覚とか?

岡崎 そう言いたいくらいです。もっとしっかりしなきゃと思います。

――20代のうちにやっておきたいこともあります?

岡崎 何をすればいいんですかね? お姉さん方に聞きたい(笑)。昔と違って健康第一というのはすごく思います。30代に向けて体の基盤を作りたいので、トレーニングをしたいですね。昔はそういうことに気が向きませんでした。体力がそんなになくても、何とかやってこられたので。でも、たぶんこれからはやっていけなくなるんです(笑)。

――そんな予兆があるんですか?

岡崎 感じます。疲れ方が早くなって、回復が遅くなりました。そこを高めておくことは、20代のうちからやっておきたいです。

ジムに通うペースがだいぶ増えていて

――『あのクズ』のためにボクシングジムに通ったとのことですが、もともと運動はしていたんですか?

岡崎 今回の撮影期間より少し前に、またジムに通い始めていました。今は通うペースがだいぶ増えています。ジムのセットにもダンベルがあって、撮影の合間に奈緒ちゃんと上げ下げしてトレーニングしました。

――今年は1月からドラマがずっと続く中で、体調を崩さないためにしていることもありました?

岡崎 本当に体が資本だなと実感しました。食事の仕方には昔より全然気をつけています。焼肉とか重いものばかりだと体がダメなんです。昔は気にもしてなかった袋の成分表を見て、風邪をひかないようにビタミンを摂ったり、食べる時間にも注意しています。

東北の秘湯で雪見温泉をしたいです

――連ドラが続いて夏休みもなかったと思いますが、『あのクズ』がクランクアップして時間ができたら、年末にしたいことはありますか?

岡崎 毎年思っているんですけど、雪見温泉をしたいです。東北の雪が降る地域の秘湯にゆっくり旅行できたら、一番のご褒美になりますね。

――クリスマスも盛り上がりますか?

岡崎 プレゼントは欲しいです(笑)。イルミネーションは絶対混みますよね。クリスマスより前から見られるので、そこで雰囲気を味わって、当日は家から出ないと思います(笑)。

Profile

岡崎紗絵(おかざき・さえ)

1995年11月2日生まれ、愛知県出身。2012年に「ミスセブンティーン」でグランプリ。「Seventeen」モデル卒業後の2016年から「Ray」専属モデルに。女優として2015年に映画デビュー。主な出演作はドラマ『教場Ⅱ』、『ナイト・ドクター』、『花嫁未満エスケープ』、『GTOリバイバル』、『マウンテンドクター』、映画『mellow』、『シノノメ色の週末』、『緑のざわめき』など。ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)に出演中。

火曜ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』

TBS系・火曜22:00~

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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