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【横浜市】思考じゃない、感じろ!横浜トリエンナーレで頭と心がやわらかく/アートと横浜②

krayskyライター/東京神奈川行ったり来たり(横浜市)

6月9日まで行われている「横浜トリエンナーレ」。3年ぶりにリニューアルオープンした「横浜美術館」をはじめ、「旧第一銀行横浜支店」「BankART KAIKO」などが会場となっている。

アートのシャワーを浴びると、普段見えていなかったことに気づいたり、いつもとは違う発想が湧いて来たり…。うん、いいぞ、「とりあえずアートを見に行ってみる」っていいもんだ。前回の記事に続き、横浜で開催中の美術展を紹介する。

横浜トリエンナーレ 公式サイトより
横浜トリエンナーレ 公式サイトより

第8回横浜トリエンナーレ 概要
開催期間:2024年3月15日(金)~6月9日(日)の10:00~18:00。6/6~9は20:00まで開場
休場日:木曜日(4/4, 5/2, 6/6を除く)
会場:横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路
入場料:一般2300円、横浜市民2100円、学生(19歳以上)1200円 ※ほか「黄金町バザール」とのセット券やフリーパスなどもある

横浜美術館でたくさんの現代アートと出会う

会場の一つになっている横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1)。2024年3月にリニューアルオープンした。

「トリエンナーレ」とは、3年に一度の現代アートの祭典のこと。横浜では2001年に始まり、今年で8回目の開催となる。

美術館に入ってすぐの「グランドギャラリー」の展示は、無料で観覧可能。ガラス張りの天井から自然光が入る大広間は、設計者・丹下健三の当初の発想を復活させたものだという。

横浜美術館の2階・3階展示室で、全面的に現代アートの展示が行われている。

今回の横浜トリエンナーレの柱の一つとなっているのが国際展「野草:いま、ここで生きてる」(アートディレクター:リウ・ディン、キャロル・インホワ・ルー)。30以上の国や地域から、93組のアーティストが参加している。

写真右側の鏡を使った作品は、イタリア出身のラファエラ・クリスピーノによる「We don’t want other worlds, we want mirrors(われわれは他の世界なんて必要としていない。われわれに必要なのは、鏡なんだ)」。

写真左側で骸骨が映し出されているのは、トルコ出身のオズギュル・カー「ヴァイオリンを弾く死人(『夜明け』より)」。壁沿いに展示されているのは、ポーランド出身のアネタ・グシェコフスカの作品だ。

要塞のようになっている展示室を見つけた。部屋の外側にはぐるりと、日本出身・丹羽良徳によるビデオ・インスタレーションが置かれている。

中の展示は、台南を活動拠点としている你哥影視社(スー・ユーシェン/蘇育賢、リァオ・シウフイ/廖修慧、ティエン・ゾンユエン/田倧源)の「宿舎」。

「台湾の工場で働くベトナム人女性たちが、待遇改善を求め、寮に立てこもってストを始めた」、そんなテーマで空間が作られている。鑑賞する側も、作品の一部である二段ベッドに座って映像を見る。外から眺めるだけでもよし、演劇空間に入り込んだような気持ちになるもよし、不思議な体験だ。

横浜美術館の外壁に現れた、巨大なグラフィティ。SIDE COREによる「big letters, small things」。会期中、グラフィティは新たに描かれたり、消されたりと変化する。

2024/4/6撮影
2024/4/6撮影

5月18日(土)の16:00~17:00には、作品前でSIDE COREによる詩の朗読会が行われる(参加無料、荒天時は横浜美術館休憩スペースで開催)。参加者も「街の中で、ちょっと面白いと思うこと」を作詩して持ち寄ることができる(イベント詳細は横浜トリエンナーレ公式サイト)。

様々なアートの表現方法、メッセージに触れると、見ているこちらの発想までゆさぶられるようだ。再開した美術館を楽しみつつ、圧倒的な作品数に触れることができた。

旧第一銀行横浜支店 歴史的建造物も楽しみつつ展示を見る

馬車道駅に向かって、横浜市役所の隣にあるのが「旧第一銀行横浜支店」(横浜市中区本町6-50-1)。なにやら、2階バルコニー部分に人影が。そう、もうアートは始まっている。

ここは昭和4(1929)年にできた、第一銀行横浜支店の四代目建物で、横浜市認定歴史的建造物となっている。

天井の高い室内で、アートの中に入り込んでいくような感覚。

山下陽光「山下陽光の思いつきshop」。なになに、文字もたくさん書かれているぞ。

曰く、作者はワサビを採りに行くのが好きだけど、行けなくなったそうで、それがこの表現になったらしい…?なんだこりゃ!なんて自由なんだ!!著書の『バイトやめる学校』(タバブックス、2017)でも、作者の発想に触れることができる。

3階展示室は、照明を落とした中で映像作品が流れている。クッションが置かれており、ゆっくりと鑑賞できる。

プック・フェルカーダ「根こそぎ」。人間の未来や生存について、ヒューマノイドを主人公にした映像作品。色彩と映像の世界に浸る。

会場を出るころには、自分の凝り固まった頭と心を妙に反省していた。アートは、定期的に摂取したいものだ!

BankART KAIKO 北仲ブリック&ホワイトで気軽に立ち寄れるアートスペース

こちらも馬車道駅(2番出口)からすぐ、北仲ブリック&ホワイトにあるBankART KAIKOも会場の一つだ(横浜市中区北仲通5-57-2 KITANAKA BRICK&WHITE 1F)。

北仲ブリック&ホワイトも横浜市認定歴史的建造物で、旧横浜生糸検査所附属生糸絹物専用倉庫(通称「旧帝蚕倉庫」)を復元して活用されている。

パピーズ・パピーズ(ジェイド・グアナロ・クリキ=オリヴォ)の「無題(サラヤ)」。日常で見かけるアレ、手指消毒器の「SARAYA」を使った作品だ。

丹羽良徳「自分の所有物を街で購入する」。展示スペースのなかで、三面にビデオが流れている。

BankART KAIKOはワンフロアでの展示のため、比較的短時間でも立ち寄りやすい。ショップがあり、雑貨やアーティスト作品が販売されている。

「第8回横浜トリエンナーレ」は、このほかクイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路でも開催されている。

アートは生活必需品か?と考えると、食べ物や酸素のようには必要ではないかもしれない。しかしアートに触れて、心が動いたり、動かなかったりという経験は、どこかで生きる助けになるように感じる。

※記事内のアーティスト名・作品名・作品解説は、展示解説および横浜トリエンナーレ公式サイトを参考にして記載しました。

<イベント情報>
第8回横浜トリエンナーレ
開催期間:2024年3月15日(金)~6月9日(日)の10:00~18:00。6/6~9は20:00まで開場
休場日:木曜日(4/4, 5/2, 6/6を除く)
会場:横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路
入場料:一般2300円、横浜市民2100円、学生(19歳以上)1200円 ※ほか「黄金町バザール」とのセット券やフリーパスなどもある
第8回横浜トリエンナーレ 公式サイト

ライター/東京神奈川行ったり来たり(横浜市)

東京生まれ、東京&神奈川&アメリカ大陸育ち。出版社やメーカー勤務を経て、好奇心とともに東奔西走。好きな言葉は「一石二鳥」「三つ子の魂百まで」。文化/日本語/フィクションとノンフィクション/経済的/すこやかな生活。

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