アビー・ロード・スタジオが中国に建つ? 中国の音楽ビジネスの未来を目指すTencent Music
2017年に入り、中国の音楽市場を次の新興市場と見る動きが盛り上がっています。彼らの急成長を支える音楽ストリーミングでいかに中国を開拓すべきかの主権争いは、相次ぐメジャーレコード会社の参入によって新たな局面を迎えようとしています。
中国で人気の音楽ストリーミングサービス「QQ Music」「KuGou」「Kuwo」を運営する「Tencent Music」と、ユニバーサルミュージック・グループは、複数年のライセンス契約で合意したことを発表しました。Tencent Musicは中国大手IT企業テンセントのグループ会社で、中国最大のチャットサービス「QQ」やメッセンジャーアプリ「WeChat」、SNS「Qzone」を運営するプラットフォームの強みを活かした音楽ストリーミングサービスを展開しています。
ライセンス契約によればTencent Musicはユニバーサルミュージックがリリースする楽曲をQQ Music、KuGou、Kuwoでストリーミング配信する権利を獲得し、それだけでなくTencent Musicはユニバーサルミュージックのコンテンツを中国内の第三者音楽サービスへサブライセンスできる独占ライセンスパートナーの契約でも合意しました。
また、2社は新人アーティストの発掘や育成でも手を結び、ユニバーサルミュージックのアーティストをテンセントが運営するプラットフォームやメディアでプロモートしていくマーケティング戦略に注力する予定です。
中国内の音楽アプリの利用動向を見ると、Tencent Music系列アプリ(KuGou、QQ Music、Kuwo) の他に、市場にはアリババ(Alibaba)傘下のAlibaba PlanetとXiami Music、バイドゥ(Baid)傘下のBaidu Musicなどが激しい競争を繰り広げています。
2017年Q1(1-3月)の月間アクティブユーザー数では、Tencent Music系列アプリがトップ3を占めたという調査結果も発表されており、なぜTencent Musicとのライセンス契約にメジャーレーベルが積極的なのかが見えてきます。
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中国版アビー・ロード・スタジオの建設計画
それだけではありません。ローカル市場向けに中国人アーティストの育成を加速させる目的で、2社はロンドンの有名スタジオ「アビー・ロード・スタジオ」をベースにした、世界最高峰のレコーディング・スタジオ「アビー・ロード・スタジオ・チャイナ」の設計に着手していくと発表しています。
ザ・ビートルズやピンク・フロイドなどによる数多くの名作を生み出したことで知られるこの伝統的なスタジオは、2012年のレコード会社EMI買収の際にユニバーサルミュージックが運営権を獲得し、その後の経営戦略転換を経て、今は最新鋭の音楽スタジオと、再考の音楽テクノロジーを融合する先進的なイノベーションハブとして生まれ変わり、音楽業界だけでなく、テクノロジー業界やイノベーションの領域でもその名を知られています。
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ロンドンのアビー・ロード・スタジオが行っている、アーティストとエンジニア、音楽スタートアップを引き合わせる役割は、中国のアーティストや起業家たちにも人気を集めそうに感じます。そこで生まれたスタートアップや人材をユニバーサルミュージックやTencent Musicは直接支援することができるわけですし。人材育成としては大きな投資となりそうです。
IFPI(国際レコード産業連盟)の2016年度グローバルレポートによれば、アジア圏では、日本の音楽市場が1.1%成長する一方で、中国は20.3%と大きく飛躍しました。大きな理由は30.6%の伸びを示した音楽ストリーミングの成長にあり、現在中国は世界第12位の音楽市場となり、トップ10に入るのは時間の問題という見方があります。
Tencent Musicは有料会員総数1500万人以上を抱えている大手サービスで、かつて違法コピーの巣窟と見られていた中国の音楽市場をストリーミングビジネスへ変換させる一翼をになっています。現在、1700万曲以上を月間アクティブユーザー6億人以上に提供しているので、今後はフリーユーザーのコンバージョンがビジネスでの可能性であり課題でもあります。
すでにソニーミュージックとワーナーミュージックは、Tencent Musicと音楽ストリーミングのライセンス契約で合意しており、Tencentのプラットフォームでそれぞれのアーティストの楽曲を配信してきました。
ソース
Tencent-backed music streaming services top most popular music apps (TechNode)
この記事は、デジタル音楽メディア「All Digital Music」で2017年5月20日に掲載された記事の転載です。