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「アーティストに支払いを」Apple Musicが、インディー音楽支援に5000万ドルの基金設立

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
Lauv in concert, London, UK(写真:REX/アフロ)

Apple Musicは、新型コロナウイルス感染拡大で収入減少の被害を受けたインディー音楽シーンを救済するため、5000万ドル(約54億円)の支援金をインディーレーベルとディストリビューターに用意したことが明らかになりました。

音楽メディアのMusic Business WorldwideとRolling Stoneが入手した情報では、Apple Musicはインディーレーベルとディストリビューターに対して、5000万ドルの基金から、将来のロイヤリティ分配料を一括で前払いします。

支援を受けるには、インディーレーベルまたはディストリビューターは4半期に最低1万ドル (約100万円)の収入をApple Musicから得ていること、Apple Musicと直接的なディストリビューション契約があることが条件です。Apple Musicの基金は日本のレーベルも対象に含まれます。

Apple Musicは「インディーレーベルがアーティストに支払いを行い、運営を続けていくため」基金を用意したとレーベルには伝えています。

Appleは、音楽部門の支援活動にとどまらず、企業をあげて、新型コロナウイルス被害の防止と医療関係者の支援にコミットし、すでに多くの活動を始めてきました。

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医療従事者に向けては、デザイナーやエンジニア、流通チームが連携して、毎週100万個のフェイスシールドを製造し、世界各地の医療機関に届けることをティム・クックCEOが発表。また2000万個の医療用N95マスクを政府機関や医療機関に提供したことも明らかになりました。

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さらにアップルは、レディーガガとWHO、Global Citizenが、4月18日にライブ配信するバーチャルチャリティライブ「One World:Together At Home」の基金に1000万ドル(約11億円)を寄付しました。

すでに3月の時点で、新型コロナ対策の支援基金1500万ドル以上(約16億円)を世界規模で寄付しており、中国では700万ドル以上(約7.6億円)を公共衛生機関や病院などの支援に投じました。

Apple Musicは、コロナ被害で不安やストレスが続く毎日を、音楽の力で乗り越えることを目指したプレイリスト「COME TOGETHER 〜音楽と共に〜」を世界各地で始め、日本も「家族みんなで楽しむポップ」「イージー ヒッツ」「アコースティック・チル」「自宅学習用BGM」など、音楽でリラックスしたり、気分を高めるためのプレイリストが展開されています。

インディーレーベルに対する経済補償を発表する国や自治体は実質行われていません。

ヨーロッパでは、インディーレーベルが多数所属する業界団体IMPALAは、EUに対して支援を行うよう、独自のタスクフォースを立ち上げ、ヨーロッパ全体の音楽コミュニティの支援に乗り出しています。

現実問題として、インディーレーベルは、様々な形で収益源を早期に失います。

収入源は、サブスクリプションの音楽ストリーミングからのロイヤリティ分配だけではありません。アナログレコードやCDなどフィジカルの収入や、ライブイベントを手掛ける際の収入、アーティストのグッズ販売の収入、映画やドラマにライセンスする予定だった楽曲のシンクロ権からの収入、作曲著作権からの収入、イベントや公共の場で演奏される際の著作隣接権からの収入、アーティストの360度契約から得る収入と、今まで得ていた複数の収入源が途絶える可能性が高まっているのです。

特に、音楽業界は今後、景気の冷え込みが進めば、「サブスクリプション」利用者の減少や、娯楽への消費の落ち込みを直接的に影響を受けます。アナログレコードを買う機会や、イベントチケットや物販を買う人が増えたり、サブスクを解約する人が増える可能性も無視できません。

日本ではコロナ対策の外出自粛や、イベント開催自粛の影響を受けて、アーティストやライブハウス、クラブの運営者など、ライブ周辺の関係者から政府に対して補償を要求する声があがっています。

同時に、SNSを中心にクラウドファンディングなどのプラットフォームから、一般の音楽ファンからライブハウスやクラブを支援する活動が、グラスルーツ的に広がっています。

より広く、支援が必要な音楽領域を考えた場合、インディーレーベル・ビジネスも支援の対象にあることは間違いありません。

インディーズ音楽は今、世界的な音楽業界でも成長領域です。アーティストの数も、売上も着実に拡大してきました。特にストリーミングからの売上が拡大したことが、インディーズが成長した最大の要因です。

世界的に見ると、CD BabyやDistrokid、Ditto MusicなどのDIYディストリビューターを使ったり、AmuseやAWALなどレーベル機能のあるディストリビューターを利用するインディペンデントアーティストの出現は、引き続き増加傾向にあります。

かと言って、インディーレーベルが無くなるわけではありません。

インディーレーベルが存在しなければ、世界はメジャーレコード会社が音楽市場の多くのビジネス機会を持っていくのです。独立して活動するアーティストが、作品やライブの機会を世界的に増やすためのパートナーとして、クリエイティブとビジネスの可能性を高め、自由な活動を保証する、世界各地のインディーレーベルの存在は、必要不可欠です。

source:

Apple Music launches $50m advance fund for independent labels hit by COVID-19 impact (Music Business Worldwide)

Apple Music Starts $50 million Royalty Advance Fund For Indie Labels (Rolling Stone)

IMPALA Announces 10 Point COVID Crisis Plan

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

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