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【NHL】チーム全員37人が亡くなった航空機事故から2845日! ヤロスラブリから8人がドラフト指名

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
エドモントン3巡目指名のコノバロフ(Courtesy:@hclokomotiv)

 「NHLドラフト」は一昨日(現地時間)各チームが1位指名選手の指名を行いました

 一夜明けた二日目は、31チームが2巡目から7巡目の選手を指名。

 ドラフト前から注目を集め、高い評価を受けていた有力選手が名を連ねる1巡目指名とは異なり、下位指名になればなるほど、スカウトの目利きが問われるだけに、むしろ熱心なファンは、2巡目以降の指名を熱心に見ているに違いありません。

 そんな熱心なNHLファンの注目が集まる中、2巡目以降に「6人」もの選手が指名されたチームがありました。

 そのチームとは、KHL(コンチネンタル ホッケーリーグ)に加盟している「ロコモーティブ ヤロスラブリ

▼7年前の航空機事故によりチーム全員37人が死亡

 名前を聞いて思い出したスポーツファンの方も多いでしょうが、KHLに加盟しているヤロスラブリは、2011年9月7日に起こった航空機事故によって、選手、コーチ、チームスタッフ37名全員(加えて航空機のクルー8名)が、亡くなる大惨事に見舞われてしまったチーム。

 亡くなった選手の中には、NHLでチームの中心選手として活躍していたパボル・デミトラや、長野オリンピックのベラルーシ代表メンバーとして来日したラスラン・サレイらをはじめ、トップレベルのリーグで活躍していたスター選手も・・・。

 アイスホッケーのみならず、世界中のスポーツファンたちが、悲しみに暮れました。

▼新生・ヤロスラブリ始動!

 しかし、地元だけに限らず、世界中のスポーツファンからの激励や、支援が届いたのをエネルギーに変えたヤロスラブリは、1季だけ下部リーグに在籍したあと、再びKHLへ再加盟。

 新生・ヤロスラブリが始動したのです!!

▼再びKHLへ参戦!

 再起へ向けて始動した際に貴重な戦力になったのが、ヤロスラブリのジュニアチームの選手たちでした。

 なかでも最も大きな期待が集まったのが、 イリヤ・コノバロフ(GK・20歳/タイトル写真)!

 ヤロスラブリで生まれ、ヤロスラブリのジュニアチームで腕を磨いてきたコノバロフにとって、ヤロスラブリのチームでプレーをしていた選手たちは、掛け値なしのヒーロー!

 小さい頃からヤロスラブリの試合を観戦し続けていたとあって、メインGKとしてKHLの試合に出場する際は、いつもこのような言葉を口にしていたそうです。

「地元の試合は全て勝ちたいと思っている。昔のボクみたいに、子供たちはいいプレーを見て、チームが勝つことを強く望んでいるはずだから」

▼KHLの守護神から、NHLの守護神へ!

 「地元の子供たちへの想い」を力にして、レベルアップに努めたコノバロフは、ジュニア代表の試合でロシアのゴールを守るなど、力をつけていきました。

 そんなコロバノフを高く評価したのが、エドモントン オイラーズ

 コノバロフの潜在能力を評価して、昨日のNHLドラフトで3巡目(全体85番目)に指名をしました。

▼ヨーロッパでトップ!ドラフト指名選手が8人!!

 コノバロフがエドモントンに指名されただけでなく、ヤロスラブリのジュニアチームで育った選手(ドラフト指名前に北米へ渡った選手も含め)が、今季のドラフトで8人も指名されました!

 チームの発表によると、この数字はヨーロッパのクラブチームを見渡しても、最も多いとのことです。

 チーム全員37人が亡くなった航空機事故から2845日!

 ヤロスラブリは再び地元のファンを熱くさせるホッケータウンとして、間違いなく再興を遂げたようです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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