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【豊田圭一×倉重公太朗】「日本人はラテンマインドを持つべきだ!」第1回~グローバルマインドセット~

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

倉重:倉重公太朗の「労働法の正義を考えよう」の対談企画、今日は豊田圭一さんにお越しいただいています。

豊田さんはグローバルな環境で成果を出すためのマインドセットを鍛える研修を企業に提供されているのですが、何で「働く」を考える本対談で豊田さんなのだというところも含めて、だんだんと解きほぐしていきたいので、まずは自己紹介をお願いしたいと思います。

豊田:多分それぞれの業界のロックスターだからでしょう(笑)

倉重:もう自然と引き寄せてしまいました(笑)

豊田:豊田圭一です。今スパイスアップ・ジャパンという会社をやっていいます。メインのビジネスは人材育成で、特にグローバル人材育成と呼ばれている分野で、アジア新興国での海外研修を提供しています。また、スパイスアップグループは今8カ国に10社ありまして、人材育成以外にも、各国で様々な事業を提供しています。

倉重:これから海外に出ていく人たちに対する研修とかですよね。

豊田:日本の企業の中には伸びゆくマーケットを求めて海外へどんどん出ていかなければいけないというニーズがあるのですが、社員の中から「海外に行きたい!」「新しい環境でチャレンジしてみたい!」という手がなかなか挙がらないという課題があります。

また、海外に行ったはいいけれども、向こうでメンタルをやられてしまう方もいらっしゃいますし、あるいは、現地の人たちを巻き込んで仕事を進めていけないとか、現地の人の中に溶け込むことができないという課題感もあるんです。もちろん、すでに海外で成果を出している人たちもたくさんいるとは思いますが、いずれは彼らも日本に戻らなければいけないので、その交代する人たち、プール人材と呼びますが、その彼らをあらかじめ鍛えておきたいというニーズがあるのです。

倉重:そういった海外研修を手がける会社をやられていますね。あとは著作もありますよね。

豊田:12年前から出すことができたのですけど、累計で15冊出していまして、その中で一番メインは「すぐやる」がキーワードになっています。「すぐやる」というテーマでは5冊ほど出しているのですが、最初、「実行力のポイント」というテーマで書いてくれといわれて書き始めたものが売れまして、その後、いろいろと声をかけていただくことができました。

 

注:【豊田氏の著作】

「とにかくすぐやる人の考え方・仕事のやり方」(クロスメディア・パブリッシング)

倉重:海外でも出ていましたよね。

豊田:海外では翻訳されたのが韓国と台湾だけです。

倉重:すごいです。

豊田:ありがとうございます。皆さん、「何かやりたいなー」という気持ちは持っていると思うんです。でも、実行するとなったら何か怖いというか、言い訳をしてしまうというか。その立場にない、お金がない、時期が早い、スキルがない、など、ないないないとなるのですけれども、やってしまえばいいじゃないというところを、それを全部どうやってハードルを下げるかということを書いています。

倉重:今でこそPDCAで考えて回せとか、じっくり計画を立てて…とかは時代遅れだとか言われるようになってきましたけれども、もう随分前から「まずやってみろ」と言いたということですよね。

豊田:そうです、まず、やってみるということです。やるということはやらなければ何も始まらないので、でもやるのは怖いから、ではどうやったらやれるのだろうということを解きほぐした本を何冊か書いているという感じです。

倉重:すごいです。倉重:あとは、ラテンの本もありましたよね。

豊田:くよくよしちゃうのはラテンマインドが足りないからだ!なんて本なのですが、最近それこそ人事・労務関係でもメンタルは1つのキーワードではないですか、メンタルヘルスです。

 注:「毎日がつまらないのは、どうしようもないことにくよくよしないラテンマインドが足りないからだ」(日本文芸社)

倉重:メンタルやられてしまう方のご相談は良くありますね。

豊田:どうしようもないことにくよくよしないでいこうと、そのためにはラテンマインドが欲しいなーーと。日本人はいいところがたくさんあると思うのです。時間に遅れない、やると言ったことはやる、そういう要素はあるのですけれども、どうしようもないことにくよくよしないラテンマインドがそこに注入されたら世界最強です。

倉重:むしろ最強ですか!ラテンマインドは日本人に足りないものですね。

豊田:はい、それで本を出しました。

倉重:さて、そんな豊田さんに今日お伺いしたいのは、やはりどんどん経済や企業を含めてグローバル化していく中で、もはや大企業しかグローバルは関係ないという話ではないわけですよね。中小企業でも海外に出ているところはたくさんありますし、これから国内需要も縮小していく中で、グローバルビジネスはどんな企業・職種でも関わってくる中で、そういうグローバル人材にとって必要なものは何なのでしょうか。

豊田:いまや誰にとっても「海外」や「グローバル」は関係ないよねということはもはや本当になくて、例えばどこかで災害が起こったら全然違う国の工場が止まってしまうとか、そういうサプライチェーンは全世界で繋がっています。

倉重:繋がってますね。

豊田:あと、もう一つは日本だけで製品を売っていたとしても、それを外国人が日本に買いに来るだってあるわけですし。

倉重:確かにそうですね。

豊田:なので、グローバルは切って切り離せません。日本ではグローバル=海外みたいに思うところありますよね。日本は外国と陸続きで接していませんから、やはり全部がオーバーシーズです。海を越えたところにあるので外国=海外なのですけれども、何か「日本対海外」、「ドメスティック対グローバル」という対立軸になってしまっているのはすごくもったいなくて、日本も「part of globe」ですから、そのグローバル社会に生きる一個人、一企業として、日本にいたって外国人のお客さまが来ますし、マーケットがあれば世界のどこにだって売りに行きますし。ビジネスにおいては国境とか関係なし進んでいる世の中だなと思います。

グローバルビジネスを語るときに、僕がよく話しているのは人口動態です。世界の人口は今74億なのですが、1950年はたった25億で、その頃から比べると3倍になっています。日本にいると少子高齢、少子高齢と言って、人口を増やすのは難しいというイメージもあるように思いますが、世界の人口は爆発的に伸びています。人口が爆発的に伸びているということは、それはイコール労働人口、消費人口が増えているということですから、どうせビジネスをやっているのなら、そこに打って出よう!と。グローバルは出ていくのも入ってくるのも両方ありますから、地方に突然外国人が来るという、それこそニセコの例等がそうではないですか。何でこんなところにというところに人がたくさん来ます。例えばインドに行って、僕が「日本人だ」と言うと「ヒロシマ、ヒロシマ」と言うのですよ。誰もが歴史や社会の教科書で広島を知っていますから、もちろん東京は知っていますけれども、同じくらい有名な都市は広島だったりするわけです。

 あとは、突然映画のロケ地にある国の人が突然訪れるとかということもありますよね。

倉重:聖地巡礼ですね。

豊田:聖地巡礼です。ですから、東京一極集中とかではなくて、どこがグローバルになるかもう全く分からないのです。

倉重:日本にいながらグローバルということですね。

豊田:日本にいながらグローバルはたくさんあると思います。ということもあって、何かもう切っては切り離せない関係なのですけれども、でもでは僕らは今いわゆる国際都市、大都市東京に住んでいますが、日常生活の中で英語を使いますか?使いませんよね?

倉重:使わないです。

豊田:これだけ外国人が住んでいる東京にいても英語を使わないから、やはり英語ができなくても生きていける社会なのです。

倉重:日本はそういう社会ですね。

豊田:英語だけではなくて、別に中国語だって同じですけど、日本にいるとまだまだ外国人と接しなくても生きていける状況です。外国人がいても、日本が好きで日本に来ている人たちで日本語ができてしまったりすると、外国人っぽくないというか、普通に日本語で会話ができてしまいます。つまり、すごく快適な環境にいますから、会社としてはもっと海外に打って出たり、日本にいたって外国人をもっと相手に商売をしたいのですけれども、そういう人たちとビジネスができますかといったときに、やれる自信がある人があまりいないのですよ。

倉重:やはりどうしても安住したくなる気持ち、安定したくなる、今を変えたくない、こういう人は非常に多いですからね。豊田さんはそういう人に対してはどういうふうにアプローチしていくのですか。

豊田:やってみるという経験をしてもらうしかないですよね。人はやったことからしか、経験からしか自信は得られないのですよ。言ってみれば、いくら教習所で自動車の免許のテストを100点取っても、公道でうまく運転できるかどうか、経験をしていかないと身に付かないではないですか。

倉重:ペーパーと実技は全く違いますものね。

豊田:でも、君は100点ではないですかと、あるいは実技でも100点でしたよ。でも、運転できるかどうか自信がないのです、公道でやったことがないからです。

倉重:TOEIC何点とかそういうことは関係ないわけですね。

豊田:そう、英語も同じですよね。「あなた、TOEIC900点ではないですか?」と聞いても、「いや、確かにスコアは高いんですが、僕は話したことはないのです」という人はやはり手が挙がらないのです。結局そういう自信は実際にやったことからしか得られないから、先ほど話した「すぐやる」と同じなのです。

倉重:つながりましたね!まずやってみることによって、マインドセットも変えていくということですね。

豊田:実際例えばグローバルな環境で活躍している社会人の方で話をすると、「僕なんてTOEICを受けたら多分600点ぐらいしか取れませんよ。でも僕は5年間アメリカでやってきて全然普通にできるのです」と。「うちの部下で800点、900点はたくさんいるけれども、彼らよりも僕のほうができますからね」という人だっているぐらいなのです。本当に正確に訳せといわれたら、その人は訳せないかもしれません。でも、向こうの人とうまくやる、彼らを巻き込む、そして仕事として成果を出すことは彼はできるのです。

倉重:できてしまうのですね。

豊田:ですから、やはりそれはでもなぜ自信があるのと言ったら、やったという経験があるからというだけの話ですよね。

やるしかないので、ちょっと研修に結び付けていくのですけれども、僕の海外研修では、研修の中でリアルに近い課題というか、ほぼ仕事と同じような課題に取り組ませて、しかも自分が不得手としている海外で、海外といっても慣れていないようなエリアで、例えばインドでやる、例えばカンボジアでやる、そういうようなところに連れていって課題をやらせてみると、最初はそんなことができるのかな?とか、ウワーッそんなところで仕事か!となるのですが、やったら意外とできるのですよ。

倉重:例えば「カレーを売ってみなさい」とかですよね。

豊田:はい、カレー売ってみなさいというのは、学生向けにカンボジアでやっているものです。まぁ、企業向けの研修ではそれではないのですが、現地で事業をやっている人が今抱えているリアルな課題に取り組むのです。

倉重:机上の問題では無く、現地の本当にリアルな課題ですね。

豊田:そうです。例えば、この間インドでやった例としては、インドで僕の知り合いがインド人向けにサッカー教室をやっているのですよ。でも、何で日本人がサッカー教室?というのがありますから、なかなか集客には苦労しています。

そこで「どうしたらインド人にこのスクールの認知度を上げて集客につなげられるのかを、インド人の50人以上の生の声をベースに提案してください」と課題を出すわけです。

倉重:勝手に現地でリサーチしてきなさいと。

豊田:そうです。ですから、リサーチ・分析・提案、そういうものをやらせて、その社長に「その提案を採用したい」と言わせることが皆さんのゴールですよ!と。

倉重:なんと!そこまでを求めますか!

豊田:そうです。それが今日の仕事ですと言ってやらせると、どうしたらいいのでしょう?社長は何がしたいのでしょう?とゴールを考え始めます。そして、そのために自分は何ができるか?どこへ行ったら誰に何を聞けるの?と考え流のです。今の人事等でもキーワードになっているのは「主体性」と「行動力」ですよね。もちろん、今になって始まった話ではありませんが。こういう課題に取り組ませると、主体的に動かなかったら、提案の時間が刻々と迫ってくるのでやるしかありません。

倉重:もうやるしかないですよね。

豊田:受け身で待っていても誰も何も教えてくれません。ですから、主体的に行動して結果を出さないとというリアルな仕事に近い環境が、僕がやっている研修では提供できるのです。

倉重:それをやると、やはりそれが自信と経験となるということですね。

豊田:最初は嫌だったけど、やってみたら意外と僕はできるなとか、あとは、一生懸命話したらこちらの片言の英語でも通じるなとか聞いてくれるなとか、すごくリスペクトを持って一生懸命接したら、国籍とか関係なく人はみんな同じなんだなとか、でもそういうこともやってみないと気付きませんから。

倉重:そういうことをいざ自分で体験して、ハウツーさせるということですね。

豊田:人材開発、人材育成的にいうと経験学習サイクルを回すという言葉になったり、越境学習という言葉がありますけれども、僕がやっているのは、完全にそういう研修です。

倉重:実務実践編ですよね。そういうことをやるとやはり皆さん気付いて、もう自分でも行けるのではないかという自信が生まれてくるわけですか。

豊田:それと同時に自分に足りないことにも気付くので、帰ってきてからもっと仕事にまい進しようとか英語を少ししゃべれて楽しかったけどもっと話したいから勉強してみようかなという気になるという、そういう帰ってきてからのモチベーションにもつながると、これは本当にもう100点の研修なのです。

倉重:宣伝っぽくなってきました(笑)。

豊田:宣伝っぽくなりますが、本当にすごいんです(笑)。

(第2回へ続く)

【対談協力:豊田圭一】

株式会社スパイスアップ・ジャパン(代表取締役)

(経歴)

1969年埼玉県生まれ。幼少時の5年間をアルゼンチンで過ごす。

1992年、上智大学経済学部を卒業後、清水建設に入社。海外事業部での約3年間の勤務を経て、留学コンサルティング事業で起業。

約17年間、留学コンサルタントとして留学・海外インターンシップ事業に従事する他、SNS開発事業や国際通信事業でも起業。

2011年にスパイスアップ・ジャパンを立ち上げ、現在は東南アジアや南アジアなどでグローバル人材育成のための海外研修事業に従事。

その他、グループ会社を通じて、7ヶ国(インド、シンガポール、ベトナム、カンボジア、スリランカ、タイ、スペイン)でも様々な事業を運営している。

2018年、スペインの大学院 IE Universityでリーダーシップの修士号(Executive Master in Positive Leadership and Strategy)を取得。

【著書】

『とにかくすぐやる人の考え方・仕事のやり方』『引きずらない人は知っている、打たれ強くなる思考術』など全15冊

【その他】

レインボータウンFM "Go around the world"(ラジオパーソナリティ)

内閣府認証NPO留学協会(副理事長)

早稲田大学トランスナショナルHRM研究所(招聘研究員)

神田外語キャリアカレッジ(シニアアドバイザー)

Creww株式会社(顧問)

All About[留学/人材育成・社員教育](ガイド)

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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