【CES2013】”手が届く大画面4K”を投入する東芝。インチ単価を一気に半額に
1月7日より米ネバダ州ラスベガスで開催されるInternational Consumer Electronics Show(CES)に先立ち、東芝は日本向けに事業戦略を披露した。社会インフラ事業を本業とする東芝らしく、HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)を軸にした展示をCESでは行うというが、日本向けにはシェア好調のテレビ事業を、大型化、高画質化という面で、さらに強化していく方針を強く発信した。
新たに発表した”CINEMA 4Kシステム”の新レグザは84インチ、65インチ、58インチの3ラインナップで、4K2Kパネルを採用。その上1インチあたりの単価で1万円を切る価格を実現する(84インチモデルは除く)。
昨年の年末商戦、手の届きやすい価格に”全録”機能、関連番組検索機能などを搭載し、スマートフォン、タブレット連動を強化した東芝のレグザZ7シリーズ。今年もこうした全番組録画+番組掘り起こし機能を中心にさらなる進化をさせていくが、さらにこれらレグザの便利機能に加え、大画面・高画質を追求した”手の届く”製品に仕上げることを重視したという。
”手の届く”の真意は、100万円、200万円といった”次世代を垣間見るためのテレビ”ではなく、”現在”を楽しめるよう現実的な高画質テレビの提供という意図が込められている。そこで鍵となるのは”4K2K(フルHDの縦横2倍の解像度を持つディスプレイ技術)”の液晶パネル。しかし、その打ち出し方向は、同じく4K2K戦略に力を入れるソニーやシャープとはかなり異なる。
ソニーは4K2K撮影が可能なデジタルシネマカメラを開発し、業務用映写機などのデジタルシネマなど業務用途の製品を含めたトータルのシステム提案をしているが、テレビ放送の枠組みなどは決まっておらず、あくまでも”次世代”に向けた新たなシステム構築の意味合いが強い。
ソニーは北米向けの84インチ4K2Kテレビ「KD-84X9000」に、インターネットダウンロードで楽しめる4K2Kコンテンツ視聴用セットトップボックスを無償バンドルしている。しかし、グループ会社のソニーピクチャーエンターテインメントが提供するコンテンツしか配信されていない。システム全体の価格も高く、まだ実験的な取り組みと言えるだろう。
ソニーの詳細な4K2K戦略は、明日の記者会見で明らかになるだろうが、東芝はソニーのアプローチよりも、かなりカジュアルな方向に大幅に振っている。
大画面でより満足度、没入度の高い画質を提供するため、次世代ではなく”現世代のフルHDコンテンツを楽しむことに特化した”4K2Kテレビにフォーカスした。そのために開発しているのが、得意の半導体技術を活かした独自の高画質処理エンジン「レグザエンジンCEVO 4K」だ。
このエンジンはZ7にも搭載された全録、スマートフォン、タブレット連動もサポートしているが、フルHD映像を4K2Kにアップコンバートするための新規開発回路を搭載し、水平解像度を4K2K解像度の80%にまで引き上げる。
同社は昨年9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFAにおいて、84インチの4K2Kテレビを初公開。2013年度前半に発売することを予告していたが、映画「ダークナイト」を使ったデモンストレーションの完成度はまだ高くなかった。
しかし、今回のCESで明らかにした最新の試作機では画質を大幅に向上させるとともに、前述した84インチ、65インチ、58インチの3ラインナップを揃え、画質も大きく向上させた。まだ初期段階のサンプルながら、トータルリコールのブルーレイディスク版を流していた65インチモデルの画質は、とりわけ目を見張るものだった。
東芝の執行役専務でデジタルプロダクツ&サービス社・社長の深串方彦氏は「他社とは違い、東芝は本気で4K2Kテレビを普及させる」と話し、58インチ以上の大画面テレビにおける4K2Kモデルの構成比を2013年度40%、2014年度に70%、2015年には90%に引き上げていくとの目標を掲げる。
「画面サイズが大きくなると、高画質に対する感動の度合い、”感動指数”が低下してしまう。我々はフルHDパネルでの感動指数が下がり始める58インチ以上のモデルで、誰もが買える価格での4K2Kテレビを展開していく(深串社長)」
これらの製品は今年上半期に、日本市場でも投入される見込み。65インチ、58インチモデルが予定通りに1インチ1万円を切るようならば、4K2Kテレビはインチ単価で半額近くまで下がることになる。この価格インパクトをトリガーにして、一気に4K2Kテレビの普及を狙う。