SLBM潜水艦は大きな発射筒に注水したまま浮上できる
10月19日に北朝鮮が新型SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射し、翌日に新型SLBMと共に発射した試験潜水艦「8.24英雄艦」の映像を公表しました。
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試験潜水艦「8.24英雄艦」はセイル(潜水艦の艦橋)から船体までの長さを持つ大きなSLBM発射筒1本を垂直に収納する構造で、発射筒の蓋を半開きにしたまま浮上しています。つまり発射筒にはSLBMを発射した後に入り込んだ海水が張ったままですが、これは通常の状態です。
Flooded missile tube of Project 667/Delta class SSBN after SLBM launch - Reddit
たとえば上記リンク先はロシア海軍の戦略原潜デルタ級(667計画艦)が浮上してSLBM発射筒の蓋を開けた写真ですが、SLBM発射後の発射筒に海水がなみなみと張っている様子が分かります。海水が張った状態でも問題なく浮上できます。
こちらのリンク先はアメリカ海軍のSLBMであるトライデントD5(トライデントⅡ)と戦略原潜オハイオ級のSLBM発射筒の詳細図面です。
オハイオ級のSLBM発射筒の内部直径は約88インチ(約2.2m)で、図面から読み取れる長さは約540~560インチ(約13.7m~14.2m)で、丸い船体断面に合わせて底部は少し斜めになっています。海水比重1.023で計算すると注水した場合の海水の重量は54トン前後です。
トライデントD5は全長13.4m、直径2.1m、重量58.5トン。海水の重量と大差がありません。発射前後で浮力バランスを大きく変動させない為に発射筒には海水を入れたままで、そのまま浮上も可能です。発射筒の蓋は開いていても浮上時の勢いに耐えられるなら別に問題ありません。
なお「8.24英雄艦」は名称不明のころにゴレ級(シンポ級)と呼ばれていた2016年8月24日に「北極星1」SLBMを試射し、翌日に映像が公開されましたが、この時の集合写真でもセイル上部のSLBM発射筒の蓋が半開きになっていることがわかります。
わざと蓋の存在を見せつけて発射後であることをアピールするために半開きにしたままの可能性があります。