アゼルバイジャン航空8243便「撃墜」事件、ロシア軍が対空ミサイル誤射か
2024年12月25日、アゼルバイジャンのバクーからロシアのグロズヌイに向かっていたアゼルバイジャン航空8243便(エンブラエル190型機)に緊急事態が発生し、カスピ海対岸のカザフスタン西部アクタウの空港に緊急着陸を試みましたが墜落。機体は大破炎上し後部が千切れて、乗員乗客67名(乗員5名、乗客62名)のうち38名が死亡、29名が生存という惨事となっています。パイロット2名は亡くなられています。
○対空ミサイルによる誤射を示す証拠の数々
ロシア側は当初バードストライク(鳥がぶつかった)による事故と説明していましたが、あまりにも不自然な説明です。墜落直前の機内映像、墜落中の地上映像、墜落後の残骸映像をチェックしましたが、事故機は対空ミサイルの近接爆破による調整破片の散弾を浴びていた特徴を示しています。
- 墜落前:主翼(左)のフラップ・トラック・フェアリング後部に損傷
- 墜落中:尾部点検アクセスハッチが開いていた
- 墜落後:垂直尾翼と水平尾翼(左)に無数の穴
事故機はグロズヌイに降りる直前にロシア軍によって対空ミサイルを誤射されて機体が損傷、付近の空港への緊急着陸を拒絶され止むなくカスピ海対岸のカザフスタン西部アクタウの空港に向かい(直線距離450km)、機体損傷によって操縦系統に重大な不具合がありながらも機体をなんとか空港に降ろそうとしましたが、滑走路の手前6kmの海岸に墜落。このような出来事が起きていたものと見られます。
※対航空機用の対空ミサイルは直撃ではなく近接爆破によって数多くの破片で目標を穴だらけにして撃墜する方式がほとんど。直撃式よりも近接爆破式の方が当たりやすい。ただし起爆タイミングによっては目標へのダメージが少なく飛び続けることが可能な場合も有り得る。
1. 墜落前:フラップ・トラック・フェアリング後部に損傷
墜落前の機内映像からは左側主翼のフラップ・トラック・フェアリングの後部上側に大穴が開いているのが見えます。損傷が機体後ろ側の面にあり、機体前側の面を損傷する筈のバードストライク説は絶対に有り得ない状況です。ジェット旅客機より高速で飛ぶ鳥が後ろから追突するような事態は全く考えられません。またエンジン故障爆発部品飛散説でも、この箇所がこのように穴が開くことは位置的に有り得ないことです。
※フラップ・トラック・フェアリング(Flap Track Fairing):主翼の後縁にある離着陸用のフラップ(高揚力装置)を出し入れする機構を収納している部品。主翼の後半から後方に突出している。
2. 墜落中:尾部点検アクセスハッチが開いていた
空中にある時点で既に尾部点検アクセスハッチが開いています。バードストライク説やエンジン故障爆発部品飛散説ではこの位置のハッチが開いている説明が付きません。この位置のハッチを破壊できるとしたら外部の側面から破片が飛んで来たか、内部の爆発かのどちらかです。そして内部で爆発が起きた兆候を示すものはありません。
※尾部点検アクセスハッチは尾翼の油圧操縦系統に関係するものと見られる。
3. 墜落後:垂直尾翼と水平尾翼に無数の穴
墜落した事故機の残骸には無数の穴が開いていました。炎上を免れた機体後半部分の垂直尾翼と左側の水平尾翼は穴だらけとなっているのが確認できます。これは機体の外部で爆発があり機体左側の側面方向から破片を大量に被弾したことを示しています。対空ミサイルの近接爆破による調整破片の散弾を浴びたとしか考えられません。決定的な証拠です。
バードストライク説やエンジン故障爆発部品飛散説や内部爆発説では、尾翼に無数に穴が開く現象を説明できません。垂直尾翼に側面から多数の穴を穿つような鳥が居るわけがありません。エンジン故障爆発で部品が飛散したとしてもこんな箇所にこんな角度で穴は開きません、破片の侵入方向から有り得ません。また内部爆発など論外です、この穴を穿った破片は明らかに外部から飛来しています。
※機体は逆さまとなっており、数種類の青色で塗装された面が垂直尾翼。灰色の面は水平尾翼(左側)。穴の開き方から無数の破片は機体の左側から侵入して右側に突き抜けている。
○ドローン迎撃戦闘とGPS妨害
8243便に何らかの緊急事態が起きた時間帯はロシア-ウクライナ戦争中のウクライナ軍がロシアのグロズヌイに長距離自爆ドローン攻撃を仕掛けており、ロシア軍の防空部隊による迎撃戦闘が発生していました。またロシア軍は防空活動だけでなくドローンの飛行を妨害しようと強力なGPS妨害を掛けており、8243便はグロズヌイ周辺とカスピ海上空の大部分でADS-B位置データが記録されていませんでした。
なお生還した乗客の証言によると「爆発後1時間飛行」とあります。もしグロズヌイ周辺でロシア軍から地対空ミサイルの誤射を受け損傷、迎撃戦闘中だったので周辺の空港への緊急着陸を拒否され止むなくカスピ海対岸のアクタウに向かったとすれば、被弾により操縦系統の損傷で迷走しながらやや遅めの巡航速度で飛行していたとすれば、「爆発後1時間飛行」という数字は辻褄が合います。(グロズヌイからアクタウまで直線距離450km)
※図にはアゼルバイジャン航空の事故機がJ28244とあるが実際にはIATAフライト番号はJ28243が正しい。ICAOフライト番号はAHY8243。コールサインはAZAL8243。
○アクタウ空港へのアプローチ、6km手前の海岸に墜落
対空ミサイル被弾により8243便は明らかに操縦系統に重大な不具合が生じており、おそらく油圧を失う異常が起きて動翼の操作が満足に行えない非常に困難な状態になっています。アクタウ空港へのアプローチでは通常状態では考えられない上下の動き(フゴイド運動)を繰り返しており、残された僅かな手段(左右のエンジン出力制御)でどうにかして着陸しようと試みましたが、遂には力尽きて、滑走路の手前6kmの海岸にハードランディングとなって墜落しました。(墜落地点:43.883539, 51.006068)
乗員乗客67名(乗員5名、乗客62名)のうち38名が死亡、29名が生存。油圧喪失して操舵不能という絶望的な状況から29名を生還させたことは奇跡的で、亡くなられたパイロット2名の尽力によるものでした。
※フゴイド運動[phugoid motion]:参考:メーデー語録一覧/50音順
最近10年での民間旅客機誤射撃墜事件 ※犯行者
- 2014年07月17日:マレーシア航空17便撃墜事件 ※ロシア
- 2020年01月08月:ウクライナ国際航空752便撃墜事件 ※イラン
- 2024年12月25日:アゼルバイジャン航空8243便撃墜事件 ※ロシア?
※マレーシア航空17便撃墜事件についてロシアは関与を認めていないが、各種調査から誤射を行った犯人はロシアであるとほぼ確定している。