緊急事態宣言から1ヶ月 なかなか入院患者や重症者が減らないのはなぜ?
1月7日に緊急事態宣言が発令されちょうど1ヶ月が経ちました。
新規感染者数は大きく減っているにもかかわらず、入院患者数や重傷者数はそれほど減っていません。
これにはどのような原因があるのでしょうか。
新規感染者数は減少が続いている
都内の新規感染者数は緊急事態宣言が発令された1月7日の2447人をピークに徐々に減少傾向です。
緊急事態宣言は一人ひとりにとって痛みを伴うものですが、これだけ感染者数が減っているのは国民の皆さんの努力によるものだと思います。
一医療従事者として心より感謝申し上げます。
「本当に減ってるの?」
「検査数を減らしてるから感染者も減ってるだけでしょ」
「濃厚接触者の追跡してないからでしょ」
というような懐疑的な意見も聞こえてきていますが、これは本当に減っています。
なぜなら、検査陽性率も大きく下がってきているからです。
東京都の検査陽性率も1月7日の14.5%をピークに低下し、現在は5%台となっています。
検査陽性率が高ければ潜在的な感染者が多く検査数が足りていないことを示唆します(詳しくはこちらをご覧ください)。
検査陽性率が下がってきていますので、潜在的な感染者も減少していますし、検査数が足りていない状況ではなさそうです。
入院患者数、重症者数はあまり減っていない
一方で、入院患者数や重傷者数は「著減」とまでは言えない状況です。
新規感染者数は大きく減っているのに、なぜ入院患者数や重傷者数はそれほど減っていないのでしょうか?
これにはいくつか理由があると考えられます。
1. これまで入院できず自宅待機となっていた人も入院できるようになった
1月上旬〜中旬は、高齢者や基礎疾患のある方もすぐには入院できない状況でした。
現在は新規感染者数が減ってきたことによって、こうした重症化リスクの高い患者などが幾分入院しやすい状況に改善してきています。
つまりこれまでは、
入院が必要な患者の数 >>> 病床数
だったものが、徐々にギャップが埋まってきている状況です。
たとえば1月上旬〜中旬頃は、1日10件の入院依頼があっても病床が空いていないため5件はお断りをせざるを得ないという状況でしたが、現在はお断りする事例が少なくなってきています。
このギャップが埋まり切れば、新規感染者数の減少に合わせて入院患者数も下がってくるものと考えられます。
2. 感染者のうち高齢者の占める割合が増えている
これは第2波でも確認されていましたが、第3波も流行初期には20代〜50代の働く世代の感染者が多くを占めていましたが、現在は徐々に60代以上の高齢者の占める割合が増えてきています。
これはなぜかというと、クラスターには大きな流れがあります。
会食などで活動性の高い世代の間に発生したクラスターは、活動性が高いゆえにさらに他のクラスターへと連鎖をしていきます。
上流から下流へとクラスターが連鎖していくうちに、家庭内、高齢者施設、病院といったところでもクラスターが発生します。
クラスター連鎖の下流にある家庭内、高齢者施設、病院といったクラスターは、そこから連鎖をしていくことは少なく、終着地点となることが多いです。
現在は、この下流でクラスターが多く発生している状況であり、そのため高齢者の割合が増えているものと考えられます。
その結果、新規感染者数は大きく減っているにもかかわらず、重症化のハイリスクグループである高齢者の数はそれほど減っていない、という状況です。
3. 重症者数は発症から1週間以上経ってから増え、すぐには改善しない
新型コロナは発症してから1週間前後で重症化をしますので、重症者数は新規感染者数のピークよりも遅れます。
また、人工呼吸管理になるなど重症化した人はすぐには良くなりませんので、重症者数は積み重なっていきます。
しかし、新規に重症者として報告される患者の数は明らかに減っています。
このまま新規感染者数が減少していけば、重症者数も漸減していくものと考えられます。
それまでもう少しの間、国民の皆さまには引き続きの、
・できる限り外出を控える
・屋内ではマスクを装着する
・3密を避ける
・こまめに手洗いをする
といった感染対策を徹底していただくようお願い致します。
光明は見えていますッ!!