五神学長は「東大生よ、新聞を読もう」と本当に言ったのか?
4月12日(火)に東京大学の入学式が日本武道館で行われ、五神(ごのかみ)真学長が式辞を述べられました。
そしてそのことを新聞各社がニュースとして報じているのですが、少しおかしいのです。話題となった読売新聞の記事を始め、まずは各社の記事を紹介します。
読売新聞:東大生よ、新聞を読もう…入学式で五神学長
朝日新聞:東大入学式、総長「新聞読みますか?」「習慣身につけて」
毎日新聞:「諦めない心を」梶田さんが祝辞
産経新聞:「新聞読みますか」五神真 東大学長が新入生に問いかけ
新聞各社「新聞を読みますか?」を紹介しているが……
読売、朝日、毎日、産経の4社がともに「新聞を読みますか?」と問いかけたことをテーマにしていますが(毎日のみノーベル物理学賞を受賞した梶田さんを記事タイトルに)、それは五神学長の本意ではないように見受けられます。
なぜ、そう言えるのか?
それは「平成28年度東京大学学部入学式」の総長式辞全文を読めば分かります。ここでは「新聞を読みますか?」に触れた部分だけを取り上げます。
五神学長「日本の新聞やテレビによる情報だけでは足りない」
この部分を読むだけでも、新聞各社の記事と随分違った印象を受けるのではないでしょうか?
五神学長はたしかに「新聞を読みますか?」と問いかけていますが、それは「記事の本文もきちんと読む習慣を身に着け」、「海外メディアの報道にも目を通して日本のメディアの報道との違いに注目する」ためだと言っています。
なぜなら「手近な日本の新聞やテレビによる情報だけでは足りない」からだとも。
新聞各社が報道したように「東大生よ、新聞を読もう」と新入生に伝えたかったわけではありません。「その新聞の情報では足りない」と言っており、そしてまさに新聞各社の記事がそれを表現したかたちになります。
疑問に思ったらまずは一次ソースをあたる
文字数のかぎられた新聞では、インターネットのように全文を書き下ろして伝えることはできません。「何を伝えるべきか」を取捨選択する人の手が入ります。
もちろんそういった編集がなければ読者は全ての記事を読むハメになり、それでは時間がいくらあっても足りません。だからこそ新聞社の仕事が求められているのですが、ときにはこうした誘導が行われることを我々は知っておかなければなりません。
記事を読んで「どこか変だな?」と思ったら、まずは一次ソースをあたるようにしましょう。もしも一次ソースがなければ、ほかの新聞社の記事と比較してみるとニュースの輪郭がよりハッキリします。
東大の新入生の皆さんに言うべきほどのことではありませんが、メディアの編集者として「気になることは一次ソースをあたりましょう」の言葉を送ります。ご入学、おめでとうございます。