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「”ソレ”なしの生活は絶対ムリ」調査結果1位はスマホではなく、普段はあまり意識しない意外なもの

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
(写真:イメージマート)

日々の生活で『ない』と困るものは?

 8月1日の「水の日」を前に、ミツカン水の文化センターが「水にかかわる生活意識調査」(東京圏、大阪圏、中京圏の1500人にアンケート)の結果を公表。この調査は、1995年の第1回以降、日常生活と水のかかわりや意識を明らかにすることを目的としている。

 今回新たに設けられた問いに「日々の生活で『ない』と困るものは?」がある。

 ライフライン、情報通信機器・サービス、メディア、飲食料などの選択肢をあげ、そこから3つを選ぶ形式で調査を行ったところ、以下のような結果になった。

ミツカン水の文化センター「水にかかわる生活意識調査」より筆者作成
ミツカン水の文化センター「水にかかわる生活意識調査」より筆者作成

 1位は電気(63.1%)、2位は上水道(46.8%)、3位は食料(31.7%)となった。

 さらに上記の「電気」「上水道」「食料」など7項目について、「それがない生活にどれくらい耐えられるか」を

・"それなし"での生活には耐えられない

・1日未満(なら、それなしでの生活に耐えられる)

・1日以上(それなしでの生活に耐えられる)

 でたずねた。その結果は以下のとおり。

ミツカン水の文化センター「水にかかわる生活意識調査」より筆者作成
ミツカン水の文化センター「水にかかわる生活意識調査」より筆者作成

ミツカン水の文化センター「水にかかわる生活意識調査」より筆者作成
ミツカン水の文化センター「水にかかわる生活意識調査」より筆者作成

 1位は下水道(78.7%)、2位は上水道(76.5%)、3位は飲用水(75%)、以下、ガス、スマホ、電気、食料と続いた。

いちばん困ったのはトイレが使えなくなったこと

 ふだんはあまり意識しない下水道の役割をあらためて考えてみると、生活環境の改善、雨水の排水、公共用水域の水質保全、水循環の健全化などがある。

 最近では、資源活用も加わっている。下水汚泥は、従来は廃棄物として処分されていたが、近年はバイオガス、固形燃料、リンを含む肥料として活用できる。

 また、下水中の新型コロナウイルスの量を把握することで、ウイルスの感染拡大の兆候をつかむことも可能になった。

 下水道は縁の下の力持ちとして、わたしたちの生活を支えている。

 だが、「"それなし"での生活には耐えられない」と回答した人は、下水道とトイレをセットで考えたのではないか。

 下水道が機能していないとトイレを使うことができない。

 近年、さまざまな災害が発生しているが、被災者からは「いちばん困ったのはトイレが使えなくなったこと」という声を多く聞く。普段ほとんど無意識にトイレを使っているが、ひとたび使えなくなるとさまざまな不都合が発生する。

 トイレの役割は多様で、衛生を保つ、プライバシーを保つ、尊厳を守る、安全を守るなどがある。

 今回アンケートに回答した人のうち、断水経験をもつ人が38.1%、被災して水に困った経験をもつ人が16.7%いた。こうしたことも下水道の大切さを意識することにつながったのではないか。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

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