Yahoo!ニュース

リーガルリリーというキラキラの大収穫と緑黄色社会と「APT.」に染まった11月【月刊レコード大賞】

スージー鈴木音楽評論家、ラジオDJ、小説家
リーガルリリー - 『キラキラの灰』Music Video

リーガルリリー『キラキラの灰』

 東京スポーツ紙の連載「スージー鈴木のオジサンに贈るヒット曲講座」と連動して毎月お届けする本企画。

 今月、もっとも印象に残った曲は、11月16日オンエアのNHK『Venue101』で見たリーガルリリー『キラキラの灰』。

 リリースは5月とのことなので、ちょっとタイムラグがあったのですが、お許しください。

 まずギターの音がいいのです。こういうギター、久々に聴いたような気がします。特にイントロのギター、いいなぁ。こういう時代にこういう音を聴くのはいいなぁ。

 チャットモンチー、クリープハイプ、羊文学あたりを想起しつつ、こんな不思議な組み合わせを連想させるということは、すでにオリジナルな世界が完成しているのでしょう。

 ギターによるmaj7(メジャーセブンス)の響きが美しい。そしてサビ「♪化粧のにおい」連呼のクセになる響き。

 さらにセンチメンタルなMVがよいのです。RPGのような世界。少年とおじさんの物語。おじさんのダンスが切ない。そして上動画の3分ぐらい、ギターソロが始まって、右にパンしてきていたカメラが左に戻り始める瞬間のドラマティックさたるや。泣きそうになります(泣かないけど)。

 リリースが5月だったか……この曲に気付くのが遅過ぎました。

緑黄色社会『馬鹿の一つ覚え』とロゼ&ブルーノ・マーズ『APT.』

 続いて、ギターではなくベースの音に驚いたのは、緑黄色社会の新曲、その名も『馬鹿の一つ覚え』。

 「こんなバンドだっけか」と驚きました。ガンガン迫ってくるベースに、長屋晴子の達者なボーカルがへばりつく。こちらはAdoやゲスの極み乙女。あたりを連想。でも穴見真吾という人のベースプレイから、私世代が想起したのは、サディスティック・ミカ・バンドの後藤次利。

 また後半の「♪たゆたゆしすぎるわ 貫いてよ愚の結晶」という歌詞もすごい。ベースと歌詞に二度驚きます……バンドの個性に気付くのが遅過ぎました。

 しかし、今月いちばん盛り上がったのは、邦楽以外も含めれば、何といってもロゼ&ブルーノ・マーズ『APT.』でしょう。

 「APT.」とは飲み会で楽しむゲームらしく、ルールはこちら。「令和のせんだみつおゲーム」の趣がありますね。ナハナハ。

 

 最後に。いよいよ紅白が楽しみですね。大みそかではありません。12月14日と15日の16時30分から放送される紅白です。そう「1971年紅白のリマスター版再放送」

 ある意味、本ちゃんの紅白よりも楽しみかも。私としては「4Kリマスター・南沙織」「4Kリマスター・堺正章」「4Kリマスター・はしだのりひことクライマックス」あたりに注目したいと思います。

  • 緑黄色社会『馬鹿の一つ覚え』/作詞・作曲:長屋晴子
  • リーガルリリー『キラキラの灰』/作詞・作曲:たかはしほのか
  • ロゼ&ブルーノ・マーズ『APT.』/作詞・作曲:Chae Young Park, Amy Allen, Christopher Brody Brown, Roget Chahayed, Omer Fedi, Philip Lawrence, Bruno Mars, Theron Thomas, Henry Walter, Michael Chapman, Nicholas Chinn

音楽評論家、ラジオDJ、小説家

音楽評論家。ラジオDJ、小説家。1966年大阪府東大阪市生まれ。BS12『ザ・カセットテープ・ミュージック』、bayfm『9の音粋』月曜日に出演中。主な著書に『幸福な退職』『桑田佳祐論』(新潮新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』(ともに彩流社)、『恋するラジオ』(ブックマン社)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。東洋経済オンライン、東京スポーツなどで連載中。2023年12月12日に新刊『中森明菜の音楽1982-1991』(辰巳出版)発売。

スージー鈴木の最近の記事